第2話 エロコンパ島へ到着
お泊りコンパ当日の朝――――。
俺とクルスは、漁船でエロコンパ島へと向かっていた。
気持ちの良い晴天の朝だ。海面が太陽の光を反射して、スゴく眩しい。そんな海上を水しぶきを上げながら、漁船は島の方へとドンドン突き進んで行く。
「船頭さん、この船はどうやって動いているんですか? 手で漕いでいる訳でも、帆が風を受けて動いている訳でもないみたいなんですけど……」
クルスが興味深そうに、この船の持ち主っぽいおっさんに話し掛けている。おっさんは、筋肉盛り盛りでタンクトップを着ている。いかにも海の男だというような無精ひげの中年親父だ。
「若造、エンジンっていう機械を知らんのか? この船はそれを積んでいて、それで動いておる」
漁師のおっさんは船を操作しながら、鼻高々な感じで応える。
「この船はエンジンなる物で、動いているんですね、なるほど。魔法以外の力、いわゆる科学と言う力なんですね」
クルスはフムフムと頷きながら、メモを取っている。感激したのか、スゴく嬉しそうな顔をしている。
科学だろうと魔法だろうと、船が何で動こうが、俺にとってはどうでもいい話だ。今日の合コンのメンバー、つまり女性陣達はどこにいて、どんな顔をしているのか? それが重要なんだ。
俺は船内をウロウロと見渡し始める。
「おい、そこの兄ちゃん。他の乗客を探しているのか? 他の乗客なら、船の中にいるぞ」
漁師のおっさんは、俺の行動に気付き、指を指す。俺はその言葉に反応し、船の中をワクワクしながら覗き込む。すると、中のソファに二人の男が坐っている。
何だ、男かよ。女性達は? 美女達はどこだ?
俺は辺りをもう一度探し始める。しかし、この狭い船内のどこにも女性達は居ない。話では四人の女性が来るはずだぞ。騙されたのか?
俺はイライラして、船を運転しているおっさんに食って掛かる。
「なぁ、漁師のおっさん。合コンって聞いて、俺達島に向かってんだけど、女の子がどこにも居ねぇんだよ。どうなってんだよ? 女の子が居ねぇなら、俺達帰るぞ」
「あぁ、女の子達か? それなら、先の便で俺が送って行ったぞ。だから、もう島に四人とも居るぞ」
「な、何だって? おっさん、女の子達の顔は見たのか? 四人とも美女だったのか?」
「おぉ、全員なかなかイイ女だったぜ。羨ましいな、お前ら。俺も、もう少し若けりゃ参加したかったぜ」
漁師のおっさんが笑顔で応える。その言葉で俺は前方を見据える。そして、大声で吠える。
「うおおおおお、待ってろ、美女達。今から、俺が行くから、楽しみにしていてね」
「止めてくださいよ、サークさん。恥ずかしいですよ。他のお客さんに迷惑ですよ」
クルスが後ろから俺を抑え込もうとする。すると、今の大声で、船の中に居た二人の乗客が出て来る。
「うるせぇな。誰だよ、デカい声でアホな事を言ってる奴は?」
剣を背負っている金髪サラサラ男が言葉を漏らす。俺はカチンと来て、その男を睨み付ける。
ちっ、この男、イケメンだ。合コンのライバルとなるニオイがする。
俺は警戒して、このイケメン勇者風の男をじっと観察する。イケメンは俺の視線に気付き、俺に近付いて来る。
「何だ、お前? 俺に喧嘩売って来てるのか?」
イケメン勇者も俺を睨み付けて来る。俺はスッと視線を逸らし、敵意がない事を行動で示す。
ギルド主催の合コンにおいて、暴力行為は規約違反だ。つまり、暴力行為を行えば、合コンが永久に出来なくなる。だから、俺は安い喧嘩は買わない。
「止めておけ、ベルン。揉め事を起こすと、ギルドから除名されるぞ」
もう一人の全身真っ黒な服の男が、勇者の男を止めに入る。その男は不気味な事に、顔の全てを覆う鉄仮面を被っている。
何だ、この二人は? 怪しい二人組だな。合コンに鉄仮面ってどうなんだよ?
俺は用心深く二人を観察する。
「ちっ、仕方ねぇな。 まぁ、いいか。島に行ったら、美女達は全員俺達の物だ。今から、楽しみだぜ」
そう言うと、イケメン勇者と鉄仮面の男は船内へと入って行く。
「サークさん、よく堪えましたね。喧嘩になるかと思いましたよ」
クルスが俺の元へ近付き、耳打ちするように話し掛けて来る。
「フッ、俺はあんな奴等相手になどしない。だって、俺は強いからな」
「確か、人類を滅ぼす大魔王を倒して、世界を救ったんですよね。しかも、たった一人で。めちゃくちゃ強い人なんですよね。とても信じられないですけど……」
「でも、この事は他の人に言うなよ。みんな信じてくれないし、自慢する男は女の子に嫌われるからな」
そうなのだ。
世界最悪最強と呼ばれた大魔王を俺は倒した。文字通り世界最強の男なのだ。戦闘では誰にも負けない。
しかし、合コンでは未だに誰にも勝てていない。勝った事がない。戦闘に関しては最強だが、モテない愛に飢えた剣士。そう、非常にかわいそうな男なのだ。
そんなやり取りをしている内に、船は無人島エロコンパ島に辿り着く。
これから、美女達と二泊三日のお泊りコンパが始まる。美女達と熱い夜が始まるのだ。
そう思うと俺は興奮し、笑いが止まらなくなっていた。
しかし、この島で俺を待ち受けていたのは、美女たちとの熱い夜ではなく、凄惨なる殺人事件であった……。
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