第9話

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真理さんをこっちに寄せて泣き止むのを待っていると見知らぬ女性が扉を開けてそんなことを言ってきた。


 俺は誰なのかと思いつつも、


「大丈夫ですから!……それよりもここに来たってことは何かしら用があるんですよね。用件をどうぞ!」


 と答えた。


「用って言うほどでは無いがワタシは君たちを見に来たんだ。君たち2人をワタシが助けたんだからその後を見に来るのはいいだろ?」


 と言ってきた。


 そうか。俺たち2人を助けに来てくれたのか。てっきり救助隊がたまたま来たのかと思ったけどそういうことなのか。

 でもいくら初心者用ダンジョンとはいえ意識のない俺達2人を運びながら抜けるってできるのか?


「そうだったんですか。ありがとうございます。」


 そう会話をしているともう泣き終わったのか真理さんも


「ありがとうございました。」


 とお礼を言った。


「ワタシはたまたま通り掛かったから助けただけだよ。お礼なら後でここのギルドの人達にしてあげな。」


「それにしても俺たちとおなじ新米なのによく俺たち2人を運びながらあそこを抜けられましたね。」


 そう聞くと、


「ん?あぁ、君たち何か勘違いしてるよ。ワタシは別に初心者じゃないよ。知ってる?『平等』って呼ばれてる中平朱里だよ。」


 それを聞いた瞬間俺と真理は互いに驚いた顔をしながら見合った。


「「えぇ!」」


 と驚いてる俺たちを見て


「良かった。知られてて。ワタシはあまり表には顔を出さないからね。そういうのは舞踏姫の独壇場だからね。」


 と言ってきた。が、俺はそれよりも気になっていることを聞いた。


「なんで…10位の方があんな初心者ダンジョンに?」


 そう。そこなのだ。普通は誰かの引率目的でない限り自身のレベルにあったダンジョンに行くはずなのだ。なぜなら自分よりも低いレベルのダンジョンに行っても旨みは何もないからたま。報酬もしょぼいしレベルも上がらない。つまりメリットが何も無いのだ。


「そう疑問に思うよなぁ。まぁ君たちも被害にあったし事情を説明するってことにすれば大丈夫か。

 実はワタシはとあるクランにあそこのダンジョンを調査するように頼まれていたんだよ。」


「調査?」


「そうだ。クランからはあのダンジョンのボスが最近になって少しづつ強くなっているということでそれの調査を頼まれていたんだよ。ワタシのスキル的に相性がいいからね。」


「それでその調査をしようとダンジョンに入ったはいいんだけどね。ワタシって方向音痴だからさ、ボス部屋にたどり着くのに時間がかかったんだ。そして着いた時には2人とも倒れてボスはいなくなっていたんだよ。」


「そうなんですか。…あれ?ボスはいなかったんですか?俺も真理さんもあのことがあったあとは攻撃してないですよ?」


「うん。私も忠時くんを治そうとしてたから…。でも確かに攻撃されなかったな。」


「そう。そこが今回の調査?で得られた1番のことなんだ。おそらくそのボスは最後の一撃を使ってきたんだと思う。最後の一撃は分かる?」


「はい。一応ならいました。」


「私も。」


 「なら話は早いね。普通は初心者用ダンジョンと呼ばれているところのボスは最後の一撃は使ってこないはずなんだよ。それを使ってくるのはある一定以上の難易度のダンジョンや名有の魔物くらいだからね。」


「だから今回のそれは明確にあそこのダンジョンが強くなったことの表れでもあるんだよ。」


「なるほど。」


「よし。ワタシがダンジョンにいた理由はこれでおしまい。次はワタシの提案なんだけど君たちワタシに師事する気はある?」


 そんな唐突に言われても…


「え?どういうことですか?」


「さっき言ったように初心者用ダンジョンが強くなっているということはそれがほかのダンジョンにも繋がっていくかもしれない。だからこれも何かの縁だと思うからワタシが君たちが強くなれるように鍛えようと思ってね。」


 それが本当ならすごいことだ。十帝程の人達から教えを受けられるなんてことはほとんどない。

 俺としては是非受けたいところだ。


「俺はお願いしたいですけど…真理さんは?」


「私も受けたい…です。今度こそ忠時くんを守れるようになりたいから。」


「良かった。2人とも私の教えを受けるということでいいんだね?」


「「はい。」」


「よし。ならまずはその他人行儀な呼び方をやめよう。名前で呼び捨て!」


「わかりました。……真理。」


「うん。……た、忠時。」


「まだ照れがあるけど…まぁいいか。なら本格的に教えるのは2人の体調が万全になってからだからまずは体を休めるように。それとこれ。」


 そう言って朱里さんが携帯を見せてきた。


「これ、ワタシの連絡先ね。」


 まじか。まさか十帝の連絡先を知れることになるとは…


 そう思いながらも俺たち2人は朱里さんの連絡先を登録した。


「なら今日はワタシは帰るから良くなったら鍛え始めるからね。」


 そう言って朱里さんは帰って行った。


 こうして俺たち2人はまさかまさかの十帝に鍛えてもらうことになったのだった。


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