14章 セントワール祭

第14話

セントワール祭。この日は一年の終わりを祝う日。この年に収穫出来たものを使って盛大にお祝いする。また豊作で、収穫出来たことに感謝し、次の年もまた豊作であるように願う。この日の目玉は今年取れたものをふんだんに使った大鍋。それをみんなに配って食べるのがこの日の風習なんだ!

「はぁ〜…。寒〜い!セントワール祭で大鍋食べるのいつも楽しみだけど、冬は苦手なんだよね〜…。」

ルクシテーゼは、日本よりも寒くてまだ慣れてないんだよね。

「チェル〜!縮こまってないで手伝って!」

「うぅ〜手が動かない。」

「もう!まったく、ほんと寒がりね。まぁ冬はあまりお客さんも来ないし、花もそんなに置いてないからね。しょうがない。ベリーのところ手伝ってきなさい。」

「うん!ありがとうお母さん!行ってきます!」

「行ってらっしゃい!ベリーによろしくね!」

「はーい!」

わたしはいつも冬はライの家のパン屋で手伝ってるんだ!冬場は寒くて使い物にならないから暖かいパン屋で働くことにしてるんだ!お客さんもあったかいパンを買いに人が多くなるからちょうどいいんだよね〜!

「おばさんおじさんおはよ〜!手伝いに来たよ!」

「いらっしゃいチェルちゃん!いつもありがとね。」

「ううん。こっちのセリフだよ!冬場は使えない私を手伝わせてくれてありがとう!」

「ははは。チェルちゃんは冬場はロボットみたいだもんな。」

「ほんと!チェル姉ちゃんストーブの前から離れないもん。」

「えへへ。」

「褒めてないぞ。じゃあ行ってきます。」

「分かってるよ!」

「「「「行ってらっしゃ〜い!」」」」

「じゃあチェルちゃんこのパンオーブンに入れて。」

「はーい!今年の大鍋どんなのになるかな〜?去年は大根が多かったよね!」

「チェル姉ちゃんはセントワール祭の日はいつもそればっかりだよね〜!はい。生地できたよ!」

「ありがとう。今年はさつまいもがよく出来たみたいだから、さつまいもが多いかも知れないわね〜?チェルちゃん袋詰めお願い。」

「うん!さつまいもか〜!甘くて美味しいよね!確かにおじいちゃんの畑でよく採れたかも!…は〜楽しみ!早く夕方にならないかな〜!」

「チェル姉ちゃんの食欲に勝てる人いないと思うよ。」

「え〜?そんなことないよ!」

「ふふふ、そうね!」

「えっ!おばさんまで!?」

「いっぱい食べることはいいことじゃないか。」

「そうだよね!おじさん!」

「でも、食べ過ぎはダメだぞ。」

「えぇ〜おじさんも〜?」

「「「あははは!」」」

それから話しながら、パンを作って接客していたらあっという間に夕方になった。


「うぅ。夕方だぁ…。大鍋、うぅ。食べるぞぉ〜!おじいちゃんの、農園で採れた、収穫物も入ってる、しね!」

「動けないくらい寒いくせに食欲だけは減らないんだな。チェルは。」

「うぅ。だってこんな、美味しいものが、食べられるんだよ?食べない、訳には、いかないでしょ!」

「はいはい。そうだな。」

「おお。今年も丸まってるのか?チェル!」

「動いた方があったまると思うけどなぁ。まぁ動けたら動いてるか。」

「ロッカ、ロッサ。そりゃ、動けたら、動いてるよ〜!でも体が、固まりすぎて、動けない!」

私は動こうとしたけど、体が固まってうまく動けなくてどうしてもロボットみたいな動きになってしまう。

「「はははは!毎年面白いな!その動き!」」

「こっちは、笑い事、じゃないの!…うぅ寒い!」

「ほらチェル。大鍋のやつ分けてもらってきたぞ。」

「あぁ。ありがとう、ライ!ほんと、神様だよ!救世主だよ!恩人だよ!」

「分かったから早く食べろ。」

「…〜っ!美味し〜…!染み渡る〜…!」

「「はははは!すごい噛み締めてる!」」

「こら!そこの双子!いつまで笑ってるの!」

「ははは!ちょっと回復してる!」

「ははは!ごめんごめん!」

「まったくもう!あ〜…。真冬に食べる鍋ってどうしてこんなに美味しいんだろう…。」

「冷えきってるからじゃないか?」

「まぁそれもある。」

私は噛み締めながら完食した。もちろんおかわりもして。

「は〜!美味しかった!これで心置きなく年越せるね!」

「あぁ。そうだな。」

「では、今年もありがとうございました!来年もよろしくお願いします!」

「こちらこそ。来年もよろしく。」

「近所の人にも挨拶してこなきゃ!じゃあねライ!」

「あぁ。またな。」

(今年も進展なしだな。)

ライは今もなお降り続ける雪を見ながらそう思った。


「「「「新年明けましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします!」」」」

セントワール祭から一夜あけ、新年の挨拶をライたちにしに行ったんだ!

「今年もいい年になるといいわね。」

「そうね!いい年にしましょ!」

「今年もよろしく頼むよ!」

「ええ。こちらこそ。」

「チェル姉ちゃんこの後予定あるの?」

「カトレアとマリーに会いに行こうかと思ったけど、忙しそうだったからやめたんだ。どうして?」

カトレアとマリーは親戚の挨拶まわりとかがあるらしくて会えなさそうだったんだ。でも手紙を送っておいたから読んでくれてると思う。もちろんカリンとミモザにもね!

「久しぶりに出かけよう!小さい頃に行ってた公園とか町とか!」

「いいね!懐かしい!ライも行こ!」

「あぁいいぞ。本当に久しぶりだな。」

「ちょっと待ってて!」

(懐かしいなぁ。お店を手伝う前はよく遊びに行ってたなぁ。)

しばらくするとリアが戻って来た。

「お待たせ!…じゃーん!」

リアが来ていたのは、この前のプレゼントでもらったコーデだった。

「うわぁ!可愛い!似合ってるよ〜!」

「ほんと!これにして良かったわね!」

「ええ!ぴったりだわ!」

「ありがとう〜!じゃあ行こ!」

「うん!ちょっと行ってくるね!」

「「「「行ってらっしゃい!」」」」

私たちはまず最初よく遊んでいた公園に向かった。公園は学校に行く途中にあって、帰りよく遊んで帰っていた。

「この道を通るのも久しぶり!」

「学校を卒業してからこっちの道は使わなかったからな。」

「でも変わってないね!あの頃に戻ったみたい!」

「…あっ着いた!…懐かしいなぁ。全然変わってないよ。」

「あぁ。あの頃のままだ。」

「よく鬼ごっことかしてたよね!それで昔走ってたら石につまづいちゃって顔から転けそうになったんだよね。チェル姉ちゃんが助けてくれたんだけど、チェル姉ちゃんも一緒に倒れちゃって!」

「あぁ!あったねそんな事も!」

「倒れた先が運悪く石があって思い切り頭ぶつけてたよな。」

「うん。あれは痛かった。」

「そうそう!それで目を覚さなくて、慌てたんだよね。あれ、怖かったもん。覚ましたと思ったら一週間出てこないから本当にびっくりしたし、心配だったんだから!」

「ごめんね〜!ちょっといろいろあったもんだから…。」

「そうだったな。かと言って出て来たら出て来たで、『あれ?そういえば私これ転生したんじゃない?ねぇねぇ私どこの子?貴族?』とか意味のわからないこといい出すし、お前が花屋の子だって知った時は『…花屋?えっ貴族じゃないの?…えっ!?どうして!?』とか言って暴れ回るし。」

「あ〜…。あははは…。」

「お兄ちゃんが『知らない。』って言うと『あ〜…!私ヒロインじゃないの!?モブだとしても貴族じゃなくて町娘だなんて…!』って面白いこと言ってたよね!」

「その時も面白い動きしてたな。」

「なんでそんなに覚えてるの…。」

「「だってあんな衝撃的で面白いこと忘れられる訳ないだろ(でしょ!)。」」

「う〜!忘れて〜!」

「「やだね!」」

「あっ!待て!逃げるな〜!」

「あはは!」

「お前遅いな。」

「何おう!これでも私は速いんだぞ!まだ本気出してないし!おりゃ〜!」

「「ははは!」」

私たちは幼い頃のように、走り回った。

「はぁ〜…はぁ〜…。やっぱり昔とは違うわ…。」

「お前老人みたいになってるぞ。」

「楽しかったね〜!」

「なんでそんなピンピンしてるの…。ライはともかくリアとは2つしか変わらないのに…。若いっていいな〜。」

「お前が遅いだけだろ。」

「前までは私は速かったの!みんなよりもタイム速かったんだから。」

「いつの話をしてるんだよ。それにタイムなんて測ってないだろ。」

「あっ…。何でもない!でも速かったでしょ?」

「今より多少な。」

「チェル姉ちゃんもまだ若いじゃない。」

「体力は衰えたわ…。」

「そうだね。」

「うっ。そこは否定してくれないのね…。」

「ふふ、冗談だって!次どこに行く?」

「このまま学校の方行くか?」

「そうだね!お菓子の店まだあるかなぁ…?よく帰りに食べて帰ってたよね!」

「懐かしいね!あのチョコ菓子が好きだったなぁ。」

「あぁ。おばちゃんにはお世話になった。」

「あっ…!あれそうじゃない?…まだあった!」

「ほんとだ!あいてるかな?」

「今はどこも閉まってるから、あいてないだろ。」

「そうだよね…。…あっ!おばちゃんいた!おばちゃ〜ん!」

「えっ?あっおばちゃん!」

「ほんとにいた。」

私たちはおばちゃんの元に走って行った。

「おや?あんた達は?」

「おばちゃん!チェルだよ!」

「おばちゃん久しぶり!リアだよ!覚えてる?」

「急にごめんおばちゃん。ライだ。」

「ああ!お前たちか!大きくなったね〜!誰だか分からなかったよ!」

「えへへ!おばちゃんも元気そうでよかった!」

「ああ。元気だよチェルちゃん。チェルちゃんもリアちゃんもべっぴんさんになって〜!ライくんは男前になったね〜!」

「そう?ありがとうおばちゃん!」

「ありがとうおばちゃん。」

「おばちゃんも可愛くなったね!」

「あら。そうかい?嬉しいね〜!…そうだ!チョコ菓子食べるかい?お前たち好きだっただろ?」

「えっ!いいの?」

「あぁ!ちょっと待ってなさい。」

「「「ありがとうおばちゃん!」」」

「ほら!お食べ!」

「これいくらだっけ?」

「いいんだよ。私からのプレゼントだ。好きなだけお食べ!」

「ありがとう〜おばちゃん!大好き!」

「美味しい!懐かしいな…。」

「ありがとうおばちゃん。嬉しいよ。」

「そうだねぇ〜。私からすれば昨日のことのようだよ。」

私たちは幼い頃大好きだったチョコ菓子を食べながら、昔のことを思い出していた。

「じゃあもう行くね!おばちゃんありがとう!また来るね!」

「じゃあね!おばちゃん!また食べに来るね!」

「ありがとう。おばちゃん。」

「ああ。顔見せてくれてありがとうね。」

私たちはおばちゃんに手を振って別れた。

「おばちゃんに会えてよかったね!」

「うん!あの頃はほんとお世話になったな〜!」

「ああ。良くしてもらった。」

「…もう夕方だね。あの頃に戻ったみたいな日だったな。」

「そうだな。懐かしかった。」

「また来ようね!」

「うん!誘ってくれてありがとうリア。」

私たちはあの頃のように並んで帰った。



少し暖かくなって来た春上旬。

「チェル!今日はちょっとお願いがあるのよ!」

「ん?なに?お母さん。」

今日もいつも通り営業してると、お母さんから頼まれた。

「出張して欲しいのよ!住所の地図はここに書いてるから!」

「出張?珍しいね?分かった行ってくるね!」

「ありがとう!行ってらっしゃい!」

「え〜と。地図は…あれ?ここって。」

「いらっしゃい!チェル!」

「久しぶりね。チェル。」

「やっぱりカトレアの家だ!…マリーも来てるんだね!」

「ええ。今日は美味しいケーキが届いたって聞いたから。」

「チェルも一緒に食べましょ?」

「私は仕事があるからまた今度にするよ!」

「大丈夫!私が依頼者だから!4時まで依頼してるから食べて行って!

「いいの!ありがとう!…ところで依頼内容は?」

「家の庭にある花で屋敷を飾る花束をお願いするわ!」

「分かった!まかせて!」

私はカトレアの庭に出て花を選んだ。

「うわぁ〜綺麗!ヒヤシンスにフリージア!う〜んどの子を花束にしよう?…あっこのフリージアをメインに作ろう!」

私はいろいろな種類や色を組み合わせて作っていった。

「よし!…カトレア出来たよ!」

「綺麗ね!じゃあさっそくこの花瓶に飾って!」

「うん!いい感じ!」

「やっぱりチェルはすごいわね。」

「そうよねマリー!…チェル!もう用意してあるから食べましょ?」

「やった〜!…わぁイチゴタルトだ〜!いただきま〜す!…美味しい、幸せ〜!」

「喜んでくれて良かったわ!」

「チェル。この紅茶はイチゴタルトに良く合うの。飲んでみて?私のお気に入りでもあるの。」

「マリーの?…美味しい!イチゴタルトとよく合う!」

私はイチゴタルトとマリーオススメの紅茶を飲んで、優雅なおやつタイムを過ごした。

「じゃあ帰るね!ありがとう!」

「待って、チェル!これお母さんに持っていって!それとこの手紙はチェルに。帰るまで絶対読んじゃダメよ!」

「私からも。お願いね?」

「お母さんに?分かった!じゃあまたね〜!」


「喜んでくれるかしらね?マリー。」

「喜んでくれたら嬉しいわね。」

と二人は微笑んだ。


「ただいま〜!…うわぁ!!何!?」

「「「「誕生日おめでとう!!チェル!」」」」

「えっ?誕生日?…あっ!今日誕生日だ私!」

「おい。気づいてなかったのか?」

ライが呆れて聞いた。

「だ、だって気にしてなかったから…。ありがとう、みんな!嬉しい!…あっそうだ。お母さんこれカトレアとマリーから!」

「ああ!それはチェルへのプレゼントよ!手紙読んでみなさい?」

「えっ?私のプレゼント!?

「親愛なるチェルへ

誕生日おめでとう!帰りに渡したのは私とマリーからあなたへのプレゼントよ!喜んでくれるといいけど。これからも仲良くして頂戴ね!

         カトレア&マリーより。」

ほんとだ!あとでお礼の手紙書かなきゃ!」

「それと、カリンちゃんとミモザちゃんとアスターちゃんから来てるわよ?」

「えぇ〜!?みんなからも来てるの!?すごい、嬉しい!ありがとうみんな〜あとで手紙書くね!」

「「すごいね!たくさんのプレゼントだ!団長と副団長からも来てたよ?モテモテだね〜!」」

「えっ!?二人からも!?」

「「それとこれ俺らからね!」」

「ありがとう!今中身見れないけど、大切にするね!」

「これは私からね!」

「ありがとうリア!」

「「私たちからはこれ!」」

「ありがとう!お父さんお母さん!おじさんおばさんも!」

「じゃあ最後は俺だな。誕生日おめでとうチェル。」

「ありがとうライ!…こんなにたくさんのプレゼントとお祝いありがとう!」

「じゃあいつものように!今回はチェルの大好きなものばかりだからね!」

「うん!ありがとうお母さん!」

そして前と同じようにみんなでご飯を食べて私の誕生日は終わった。

「今日はみんな本当にありがとう!それに私の誕生日が来たってことはもうすぐフィオーレ祭でしょ!今年もお花売りまくるわ!」

「…頼もしいな。」

「期待してるわ!チェル!」

「まかせて!お母さん!」

「「じゃあ帰るな!いい一年にしろよ!」」

「…!うん…。また明日ね!」



「みんな私の好きなものばっかりだ…。嬉しいな…。これはライからか。…!桜のネックレス…!」

私は試しに付けてみた。

「可愛い…。大切にしよう。今度は無くさないように。」

私は窓を開けて空を見た。

「もう…17歳か。「私」が死んだ歳になったんだな…。今回は何も起こりませんように。」

私はそう星に願った。

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