11章 武闘祭

第11話

「ライ頑張ってね〜!あとで見に行くから!」

「お兄ちゃん!勝って来てね!」

「ああ。…簡単に言うなリア。」

「でも誕生日にいい剣とかいろいろもらったんだから上位に行かないとね?」

「頑張ってくるんだよ。」

「ああ。頑張るよ。」

「ロッカ、ロッサも頑張ってね!」

「お兄ちゃんたちも応援してるからね!」

「「おう!頑張ってくる!」」

「「「行って来ま〜す。」」」

「「「「行ってらっしゃ〜い!!」」」」


今日は騎士団で武闘祭が行われる。武闘祭は騎士団に所属している騎士による力試し!優勝者には賞金とトロフィーが送られる。ちなみに去年の優勝者はルドベキア団長だ。…まぁ団長が騎士団長の座についてからずっと優勝してるんだけどね…。いつもアンスリウム副団長といい勝負をしてるけど結局最後には勝っている。負け知らずなんだよね〜。


「ただいま〜!ライたち行ったよ!」

「そう!お見送りに行けなかったのが残念だわ〜!」

「チェル!帰って来て早々悪いんだが、手伝ってくれ!」

「うん!ごめんね大変なのに。お見送り行かせてくれてありがとう!」

今日の花屋は開店前から大忙なんだ!昨日まで受けた予約の花束を作っているんだけど、結構多いんだよね〜!騎士たちにおめでとうの意味にもお疲れ様の意味にもなるからみんな買ってくれるんだけど…。

「騎士団に所属している人は多いんだよね〜!作っても作っても終わらない!」

花束を作っていると普通のお客さんは接客出来ないから、今日は予約をした人だけなんだ!

「すいませ〜ん。予約してた花を取りにきました。」

「あっはーい。ちょっとお待ち下さい!」

「ゲウムそのリボンとって!」

「おう!ほら。それと追加の花持って来たぞ!」

「ありがとう!…あっまた来た!チェルお願い!」

「うん!今行く!」

と、予約する人は次々くるから接客と花束作りを交互にやるのはさすがに疲れて、

「うあ〜!!終わった〜!!もう疲れた…。」

「そうね…。疲れたわ…。」

「ああ…。気力使い切った…。」

閉店した花屋の中は、死屍累々となっていた。

「ライとロッカとロッサの応援行きたいけど今は疲れすぎて行けない〜!」

「そうね…。私も今動けないわ。」

「あとでゆっくり行こうか。」

「「「はぁ〜…疲れた。」」」


少し回復した私たちは、騎士団に向かっていた。

「うわぁ〜すごい人だなぁ。…流されそう。」

「「あはは…。」」

溢れんばかりの人に苦笑していると、

「あっ!チェル姉ちゃん!ちょうどいい時に来たね!今からロッカお兄ちゃんが試合するところだよ!」

「そうなの?ちょうど良かった!…リア、ちょっと手貸して。」

「手?分かった。」

私はリアの手を握ると、お母さんとお父さんの手も握った。

「ごめん、リア。私たちを連れて行って!今の状態じゃ人混みに流されるから…!」

「…ああ。そうだね…。お疲れ様!じゃあ捕まっててね!」

「ありがとうリア!助かるよ!」

私はリアについて行きながら、はぐれそうにもなったけど何とか会場に着いた。

「着いたよ!…大丈夫?」

「…うん。何とか…。」

「ありがとうリアちゃん。」

「助かったよ。」

「どういたしまして!…あっ!ロッカお兄ちゃんの試合始まってるよ!」

試合は木刀を使って行われるんだ。ロッカは片手剣を扱うことが多いから、木刀は一本だけ使用している。

「おっ!ロッカが押してる!…頑張れ〜!ロッカ!」

ロッカは開始早々相手に突っ込んで次々に木刀を振り回して攻撃をさせていない。ほんとにロッカの戦法は、攻撃は最大の防御だなぁ。

『勝者、クロッカス!』

「おぉ〜!勝った!すごいロッカ!」

「お兄ちゃんすごい!勝っちゃった!」

ロッカはこっちに気づいたのか笑顔で手を振っていた。

私も手を振り返していると、

『続いて、クロッサンドラ!』

「お?ロッサ?続いてだね。」

ロッサは両手剣を使うことが多いから、木刀を二本使用している。

「あっ始まった!…あれ?ロッサ押されてる?頑張れ〜!ロッサ!」

ロッサは打ち込んできた相手に攻撃せず、ずっと防御の姿勢に入っている。相手が行けると大きく振りかぶった隙をついてロッサは攻撃した。

『勝者、クロッサンドラ!』

「うわぁ〜…。一撃で仕留めたよ。…ロッサ〜!おめでとう!」

「お兄ちゃんカッコ良かったよ!」

ロッサも手を振って戻って行った。

『続いて、ライラック!』

「「「きゃ〜!!ライラック様〜!」」」

「…!?何事!?」

ライが入って来た瞬間すごい歓声だった。ロッカとロッサもこういう声はあったけど、これは比じゃないほどの歓声だった。

「お兄ちゃんカッコいいから人気なんだよ?」

「えっ?そうなの?」

「気づいてなかったの?街を歩くと視線はお兄ちゃんに集まってるもん。」

「それは知ってるけど。ライだけじゃないからこんなに人気だと思わなかった。」

ライは片手剣を使っている。だから木刀一本だけ使っているんだ。

「ライは、突っ込みもするけど引きもするんだね。」

ライは攻撃を防ぐばかりかと思ったけど、一度大きく振り払った瞬間、相手の懐に飛び込んだ。

「…危ない!」

飛び込んだライに剣を振りかざしていたけど、それをギリギリで避けてライは攻撃した。

『勝者、ライラック!』

「「「きゃ〜!!ライラック様〜!!カッコいい〜!!」」」

(…カッコいい。)

「カッコ良かったね!チェル姉ちゃん!…チェル姉ちゃん?」

「…あっ!うんカッコ良かったね!ライも一撃で仕留めたね!…ライ〜!おめでとう!」

ライはこちらを見るとニヤッと笑った。

「…!」(…それは反則だよ!)

私は顔を真っ赤にして俯いた。

その後、団長と副団長も出てきたんだけど。…一瞬だった。団長に関しては一歩も動いてなかったのに勝っちゃったんだよね。会場もびっくりしてシーンとしてたもん…。それから、ライもロッカもロッサたちも順調に勝ち進んで上位10名の内に残った。すごいよね!知りあいが十人中五人で全員入ってるんだもん!まぁ二人は規格外だけど…。

『これより、最終トーナメントを行います。』

「頑張れ〜!ライ、ロッカ、ロッサ〜!ついでに団長と副団長も〜!」

「ついでって、チェル姉ちゃん…。」

「だって応援しなくても最終決勝には残るでしょ?」

「あっそっか。そうだね。」

会場中も、あの二人は勝つと分かっているため団長と副団長の声援の声はなかった。


その頃団長たちは、

「おいおい。声援が全然ないじゃないか。」

「そりゃ一歩も動かないで瞬殺すればなくなるでしょう。」

「お前だって開始早々瞬殺だったじゃねぇか。お前だってないだろ。」

声援が聞こえなくなってやりすぎたなと反省していた。


「行け〜!ロッカそこだ!頑張れ!」

今はロッカの試合中。時々押しきれなくて危ないところもあったけど何とか勝った。

「やった〜!すごいロッカ!おめでとう〜!」

「みんなすごいね!前より全然強くなってる!」

「うん!前なんか十人にも残らなかったもんね!ここ数年で着実に力をつけて来たんだね!」

(みんなほんとにすごいなぁ。私も頑張らないと!疲れてる場合じゃないね!)


「ロッサ〜!頑張れ!行け〜!」

ロッサもずっと防御の体勢のまま隙を狙ってたけど、ペースを乱されて危ない状態に入っていたけど何とか勝てていた。

「おぉ〜!すごい!あの状態から巻き返したよ!すごいよロッサおめでとう〜!」

「すごいすごい!ロッサお兄ちゃん!」

(次はライだ…。頑張れ!)

試合が始まると、相手はすぐには踏み込んでこず少しの間、静止状態だった。かと思えば同時に踏み出して激しい攻防をし始めた。

(…早い!しかも一撃一撃が重い!)

しばらく対等に続いていたが、ライが押され気味になって来ていた。

(ライ…。厳しそう。)

「ライ!!頑張って!!」

私が大声で叫ぶと、ライは思いっきり木刀を弾いて相手が怯んだ隙に攻撃を決めた。

「「「「…おぉ〜!!すげ〜!!」」」」

誰もがライはもうダメだと思い込んでいたから、ライの巻き返しの勝利に会場は大歓声だった。

「すごい…。すごいよライ!!おめでとう〜!」

「お兄ちゃんすごい!勝っちゃった!」


(ふっ…。勝ったのは自分じゃないのに自分のことのように喜んでる…。)

ライは、チェルが喜んでいるのを会場から見て嬉しそうに微笑んでいた。


団長と副団長は言うまでもなく勝利した。

会場中もやっぱりなと言う雰囲気で盛り上がってなかった。

(あっ。団長悲しそうにしてる。)

「団長〜!カッコ良かったですよ〜!おめでとうございま〜す!」

というと、とても嬉しそうに手を振って喜んでくれた。

(団長は楽しいことが好きだからなぁ。)

と思いながら苦笑して手を振り返した。

副団長にも言ってあげると、嬉しそうに一礼して戻っていった。

(結局残った人みんな知り合いだ!いやすごいな。周りがすごすぎて余計私浮いちゃうよ…。)

対戦相手はロッカとライ。ロッサと副団長。になっている。

まずはロッサと副団長。

(どっちを応援したらいいんだ!)

「ど、どっちも頑張れ〜!」

試合が始まって最初は防御で防げていたロッサだったけど副団長の攻撃が当たってしまって、ロッサは負けてしまった。

「あ〜!ロッサ負けちゃった〜…。でも副団長の攻撃をあんなに防げてすごい!」

「ロッサお兄ちゃん負けちゃったけどすごいね!」

「うん!ロッサすごい頑張ってたもん!」

(次はロッカとライか…。ロッカごめんね!ライ頑張って!)

「頑張れ〜!」

試合が始まってすぐロッカはライに突っ込んだそれを防いだライはロッカに押されながらも木刀を流して避けるとロッカを後ろを取って攻撃した。

「おめでとうライ〜!ロッカも凄かったよ!」

(すごいライ!次は準決勝だ!)

副団長との試合はライが開始そうそう突っ込んで攻撃を当てに行っていた。多分戦術を考えるより攻撃を当てることを選んだんだと思うでも、あと少しのところで副団長に攻撃を当てられてしまった。

「あっ…ライ負けちゃった。でも副団長にあと少しで攻撃が当たりそうになってたのはすごい!」

「うん!負けちゃったのは残念だけど、お兄ちゃんもロッカ、ロッサお兄ちゃんたちも凄かったね!」

その後の最終決勝戦の団長と副団長はすごい活き活きしていて攻防も激しかった。目で追えないほど早い攻防だった。

(うわぁ…すごい。いつもの武闘祭でもここまで激しくないのに…。声援が無かったのすごい気にしてたんだな…。)

すごい戦いに会場はものすごい盛り上がってる。

結果団長が勝利し、武闘祭は幕を閉じた。


「ライ、ロッカ、ロッサおめでとう!そしてお疲れ様!」

「お兄ちゃんたちお疲れ様!凄かったね!」

「みんな上位に入ってすごいわ!」

「ライおめでとう!ロッカくんとロッサくんもお疲れ様!」

「いや〜いいもの見せてもらったよ!なぁ、アセビ!」

「うん。みんな頑張ったね。」

「「「ありがとう!」」」

私はみんなに花束を渡した。

「いや〜ライに負けちゃったよ!あと少しだったのにな〜!」

「僕は副団長に当たったのが運の尽きだったよ…。」

「俺もあと少しで当てられたのにな。やっぱりまだまだ上手だ。」

「みんなカッコ良かったよ!私も頑張ろうと思った!」

「「まぁ、そう思ってくれたならいいか!」」

「ありがとうチェル。」

私はみんなの頑張りを見て明日からもますます頑張ろうと思った。

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