9章 アステル祭

第9話

アステル祭はルクシテーゼ国の伝統行事。年に一度星が綺麗に見える日がある。その日は空気がとても澄んでいて、星の光が届きやすくなっているから。だからその日だけ見られる星もある。流れ星も多く多発し、流星群も見られる。そんな日に国民は星に祈りを捧げ、世界の平和を祈る。また、ランタンに願いを込めて空に飛ばすと叶うと言われているため毎年多くのランタンが空を飛ぶ。

近々アステル祭が開かれる。前にまずは、

「ライの誕生日があるのよ!」

チェルは急に声を上げた。

「びっくりするじゃない!…ライくんの誕生日?そうね、後3日後ね。腕によりをかけて美味しい料理作らなきゃ!」

「それがどうかしたのか?チェル。」

「それが、プレゼントが決まらなくて。」

「そんな難しく考えなくてもいいんじゃないか?」

「それが思いつかないの。」

「じゃあリアちゃんとか、ロッカくん達に聞いてみたら?」

「それだ!…ちょっと騎士団に行ってくるね!」

「「行ってらっしゃい!」」


「今はお昼前だからまだみんないるはずだよね。」

「おぉ!チェルどうした?」

「あっ団長!ちょっと聞きたいことが!」

「なんだ?なんでも言ってみろ!」

この人はルドベキア・ランセンス。騎士団の団長さんなんだ!熱い人だけど公平に物事を見て、必ず勝利をおさめるすごい人なんだ。だから騎士団の人はもちろん国民にも信頼されてるんだ!

「ライの誕生日が近々あるんですけど、ライのプレゼントが決まらなくて。」

「あぁ!そうだな。ライのプレゼントか、お前があげればなんでも喜ぶと思うぞ?」

「そりゃライは優しいからなんでも喜んでくれると思うけど…。心から喜んでくれるプレゼントがいいなって。」

「いやチェル以外の奴が変なものでも送ったらそうはいかないと思うがな。…まぁそれはさておき、チェルが心から悩んで決めたプレゼントならライは喜ぶと思うぞ?そうだなお前の得意な花束を作ってやったらどうだ?」

「それは小さい頃よくあげたし…。」

「花束は回数なんて関係ないぞ?何回もらっても嬉しいものだ。」

「そっか。ありがとう団長!他の人にも聞いてみるね!」

「あぁ。またな!…ライの誕生日か、俺は新しい武器でもやるかな。」

私は団長と別れてロッカたちを探していると、

「ん?チェルさんどうしたんですか?」

「副団長!聞きたいことがあるんですがいいですか?」

「ええ。どうぞ?」

この人はアンスリウム・ロナード。騎士団の副団長さん!普段はおっとりしてるんだけど、

「あぁ〜しんどい…。」

「ちょっと休憩するか…。」

「…なんだと?」

「「え?…ふ、副団長!!」」

「そんな腑抜けた態度でどうする!いいか?戦いはな、そんな気の抜けた気持ちでやるものじゃないんだ!もっと…うんたらかんたら!」

(((あぁ…。始まった。)))

戦いのことになると別人になる。団長よりも熱い人になるんだ…。でも副団長も頭脳明晰で武術も優秀だからみんなから尊敬されてる。団長との息もぴったりなんだ!

「副団長、副団長。それで話なんですけど。」

「だから…えっ?あぁ、そうでした。すみません。」

((チェル!ありがとう!助かった!))

騎士の二人を見ると、目をキラキラさせていた。

(何故だろう。心の声が聞こえる…。)

「それで話はなんですか?」

「あっはい!近々ライの誕生日じゃないですか?プレゼントが決まらなくて。」

「あぁ。ライの誕生日プレゼントですか。あなたが選んだ誕生日プレゼントなら、ライは喜ぶと思いますよ?」

「それは団長にも言われました。」

「そうですか。まぁライのことをよく知っている一部の人はみんなそういうでしょうね。」

「なんでですか?」

「いえ。ただの勘です。そうですねえ…。ブローチやネックレス、ブレスレットなら騎士服を着ていても身に付けられますよ?」

「別にいつも身に付けられるものじゃなくてもいいんですけど…。それに邪魔じゃないですか?」

「いや。ライは喜ぶと思いますよ。逆にやる気になるでしょうね。」

「そうですか?…検討します。ありがとうございました!あっロッカとロッサってどこにいます?」

「ええ。ロッカとロッサならこの先の訓練場にいるはずですよ。今はちょうど休憩中ですから今行くといいでしょう。ライとも今は別行動してますしね。」

「分かりました!ありがとうございます!ではまた!」

「はい。また。…ライの誕生日ですか。戦術の本でもあげましょうか。」


「は〜…。しんどい。つっかれた〜…。」

「そうだね兄さん。でもそれを副団長の前で言うとまずいよ〜?」

「ははは!今いないから大丈夫だ!」

「あっいた!ロッカ、ロッサ〜!」

ビクッ!

「「なんだチェルか〜。」」

「えっ?何?」

「「いや何でもない。」」

「ん?まぁいいやライの誕生日プレゼントが決まらなくて。何がいいと思う?」

「「チェルがあげたものならライは喜ぶだろ。」」

「本当に言った。」

「「何が?」」

「ううん。こっちの話。…で何がいいと思う?」

「「そうだなぁ〜…。」」

「形に残るものが良いんじゃないか?」

「うん。長く使えるものがいいと思うよ。」

「そっか。形に残って長く使えるもの…。ありがとう!」

「「おう!じゃあね〜!」」

「…ライは多分チェルよりも好きになる人はいないから。」

「うん。だからチェルが他の人の元に行ってもチェルを思えるように形に残したものを。」

二人は暖かい笑顔でチェルを見送った。


「花束、身に付けられるもの、長く使えて形に残るもの…。」

私はプレゼントを決めて用意するために動き出した。


「「「「ライ!誕生日おめでとう!」」」」

「…うわっ!…なんだお前らか。ありがとう。」

ライの誕生日の当日私たちは、ライの家に集まってライが出かけたのを確認してからパーティーの準備を始めた。

「この飾りつけそっちお願い!」

「これは〜?」

「それはテーブルの後ろ!早くしないとライが帰ってくるわ!」

「…うん、そうだね。」

「どうした?チェル。」

「ううん。何でもないよお父さん。」

(懐かしいなぁ…。あの時もみんなで準備したなぁ。)

「チェル!ボーッとしてないで手伝って!」

「うん!まかせて!」

全部が準備万端に設置できたら、部屋の電気を消してライを待っていた。

サプライズは成功してライも喜んでくれた。

「ほれ。新しい剣だ!いい品質のやつだからな。使い勝手がいいと思うぞ?訓練しっかり励めよ!」

「私からはこれを。武術について詳しく載っている本だ。武術の知識を増やすと柔軟に動くことができるようになるからね。」

「団長も副団長も来てくださったんですね。ありがとうございます。くださった剣と知識を使ってしっかり訓練に励みます。ありがとうございました。」

「「ライ!俺たちからはこれを!」」

「これは、防具か。ありがとう。」

「もう古くなってたでしょ?」

「それにボロボロだったしな!」

「あぁ。ありがとうロッサ、ロッカ。」

「お兄ちゃん!私からはハンカチ!お母さんに簡単な刺繍を教えてもらって作ったの!」

「すごいな。…上手に出来てる。ありがとうリア。」

「うわぁ!すごい綺麗に出来てる!すごいよリア!」

「えへへ!ありがとうお兄ちゃん!チェル姉ちゃん!」

(すごいなぁ…。リアも出来ることが増えて。…なんか私お母さんみたいだな。…しおも刺繍上手だったなぁ…。リアももっと上手くなっていくのかな?)

「私たちからはカバンよ。今使っているカバン少し小さいでしょ?だから大きいカバンを用意したの!」

「また出かけることもあるだろうからその時に使いなさい。」

「ありがとう。父さん、母さん。」

「私たちからは花束と財布よ!何がいいのか分からなかったから普段使い出来るものにしたの!」

「ミアの料理もあるぞ!ライくんの好きなものばかりだからたくさん食べなさい!」

「ありがとうございます。おじさん、おばさん。」

「じゃあ最後は私だね。まずはいつもの花束!それと…これ。」

「ありがとう。…これは?ブローチ?」

「うん。みんなから聞いて、身に付けられて形に残るものを考えたの。…前にマリーの別荘に行った時に私、ブローチ作ったでしょ?マリーにお願いしてもう一度連れて行ってもらったの。そこでライラックがモチーフのブローチを作ったの。」

「…!これ、真ん中に入ってるのはルビー?」

「…うん。私のとお揃いにしたの。」

「…!そうか。ありがとう。」

(良かった。ライすごく喜んでくれてる。…これぐらいいいよね?友達とお揃いなんて普通だもんね。)

「じゃあ、プレゼントを渡し終えたところで!料理食べよう!腕によりをかけて作ったからね!たくさん食べて!」

「「「「いただきま〜す!」」」」

私たちはお母さんが作った美味しい料理をお腹いっぱい食べて、誕生日会はお開きになった。

「じゃあな!いい年にしろよ!」

「ではまた明日。」

「ありがとうございました。団長、副団長。」

「俺らも帰るわ!」

「また明日ね、ライ!チェルとリアも。」

「あぁありがとう。また明日。」

「じゃあね。ロッカ、ロッサ!」

「バイバイ!お兄ちゃんたち!」

「じゃあ私も帰るね!良い一年を!」

「バイバイチェル姉ちゃん!また明日ね!」

「バイバイリア!また明日!」

「あぁありがとうチェル。…プレゼントのブローチ大切にする。ありがとうな。」

そう言ってライは微笑んだ。

「…!うん。じゃあね。」

(ずるいよ!それは…!)

私は顔を真っ赤にして家に帰った。


数日後。

「ん〜!やっぱりアステル祭の日の朝は気持ちがいいな〜!」

私はいつもの散歩に出かけていた。

「あれ?…見ない子だな。親戚の人のところに遊びに来たのかな?」

いつものコースを歩いていると、ここら辺では見かけない女の子がいた。

「ねぇ!君はどこから来たの?何してるの?」

「…。私は港の近くに住んでるの。今は親戚のお姉様と一緒に歩いてたんだけど、はぐれてしまったの。」

女の子は最初は警戒してたけど、私が優しく笑うと教えてくれた。

「そっか〜!港か〜遠いところから来たんだね!…じゃあお姉ちゃんと一緒に探そうか!」

「いいの?」

「うん!私はチェリー。チェルって呼んで!君は?」

「私は、アスター。」

「アスターか!いい名前だね!でも偉いねアスター。迷子になっても泣かないのは!」

「私はそんなことじゃ泣かないわ。」

「そっか!強いねアスター!そういえばお姉ちゃんの名前は?」

「お姉様は、アマリリ…。」

「見つけたわ!アスター!」

「あれ?マリー!」

「えっ!?チェル?なんでここにいるの?」

「アマリリスお姉様。はぐれてしまってごめんなさい。」

「あっアスター!良かったわ!私こそごめんなさいね、目を離してしまって!」

「マリーがアスターの親戚だったの?」

「ええ。ありがとうチェル!アスターと一緒にいてくれて!」

「ううん。とってもいい子だったよ!…そういえば、マリーの親戚ってことはアスターも?」

「ええ。貴族よ?辺境伯のロドリシア家の子よ。アスターきちんとご挨拶しなさい?」

「はいお姉様。私はアスター・ロドリシアと申します。先程は助けていただきありがとうございました。」

「やっぱり…。しかもまた高位貴族…。アスターは何歳なの?」

「6歳です。」

「6歳!?すごいしっかりしてるね…。」

「アスター偉いわね!じゃあ私たちはもう行くわね。ありがとうチェル!またね。」

「うん!またね〜!」

アスターもまたねと言って手を振ってくれた。

(アスター手にあざがあるんだ。ふふ香としおと一緒だなぁ。)

私はそんなことを思いながら家に帰った。


「あっチェルおかえり!ご飯出来てるわよ!」

「はーい!…お父さんは?」

「アステル祭のランタン準備してるんじゃないかしら。ご飯食べ終わったらランタン作るからね!」

「分かった!綺麗に作る!」

お父さんも戻ってきていつものようにご飯を食べ終わったあと、

「よしチェル!ランタンに模様つけるぞ!」

「はーい!何にしようかな!」

「私はやっぱりお花ね!」

「俺もだな!願いも忘れず書けよ?」

「私もお花にしよ!…分かってるよ!私の今年の願いは…これでよし!これで夜まで待機だね。」

「高く飛ぶといいわね!」

「あぁ。高く飛ぶほど願いが叶うと言われてるからな!」

「そうだね。…高く飛ぶといいな。」


「お母さん!リボンが無くなりそうだから買いに行ってくるね?」

「ありがとうチェル!お願い!ついでに包装紙も切れそうだから買ってきてくれる?」

「はーい!行ってきます!」

私は手早く荷物をまとめると家を出た。

「えーと。…うん、全部揃ってる!さて帰ろ!」

「あっチェル!」

「ん?あっアスターどうしたの?」

帰ろうと歩き出そうとすると、アスターに呼び止められた。

「買い物に来てて、またアマリリスお姉様とはぐれちゃったの。」

「あらら。またはぐれちゃったのか〜。」

「うん。アマリリスお姉様はあっちに行ったの。」

アスターは道の先を指差して言った。

「あれ?分かってるの?じゃあ行こうか!」

と、手を引いて連れて行こうとすると道を渡る直前で立ち止まってしまった。

「…?どうしたの?行かないの?」

「…怖いの、渡るの。」

「どうして?」

「馬車に轢かれそうで…。」

(朝もそれではぐれたのかな?)

「大丈夫、まかせて!お姉ちゃんと一緒なら怖くないよ!ほら、手も繋いでるから!」

「…うん。」

私はアスターの手を引いて連れて行った。

「ね?大丈夫だったでしょ?」

「お姉ちゃんは大丈夫!?怪我してない?」

「え?大丈夫だよ?渡っただけだもん。あっほらマリーだよ!」

「二度もごめんなさい!チェル!」

「ううん。アスターは道を渡るのが怖いみたい。だからはぐれちゃったんじゃないかな?」

「あっ!そういえば昔からそうだったわ。まだ怖いのね。ごめんなさいね分かってなくて。小さい頃に何かトラウマになるようなことがあったのね。」

「うんそうかも。すごく怯えてたから。」

「ありがとうチェル。チェルも予定があったでしょ?」

「ううん。終わったから大丈夫だよ!じゃあ私帰るね?」

「ええ。ありがとう!」

「ありがとう!チェル!」

「うん!バイバイアスター!」

そして家に戻って、営業を再開した。


「よし!終わり〜!今日もよく働いた〜!」

「お疲れ様、チェル!裏庭行こうか!」

「うん!楽しみだなぁ!」

家は毎年裏庭で星を眺める。この裏庭ではお店に並べる花たちを育ててるんだ!

「すごい…!やっぱりアステル祭は星の数がすごいね!綺麗。」

「そうね。毎年見ても感動するわ…。」

「さあ、祈ろうか。この国の平和と世界の平和を。」

「「「この世界が平和で幸せでありますように。」」」

「よし!ランタン飛ばすぞ!せーの!」

「「「願いよ届け!」」」

私たちの作ったランタンは淡い光を放って飛んでいった。

「あっ流れ星だ!…違う、流星群…!」

「見てみろ。プレアも綺麗に見えるぞ。」

プレアはアステル祭でしか見れない星。プレアは祈りと言う意味で、プレアが神様に祈りと願いを届けてくれると言われている。

「今年は、流星群とプレアを見ることが出来るなんて!今年の願いは叶うんじゃないかしら?」

「そうだなぁ!流星群は滅多に見れないしな!これは叶うぞ!」

「うん!叶ったらいいな!」

「ミア〜!一緒に見ましょう?」

「あらベリー!ええ。今年はすごいわね!」

「お邪魔するよゲウム。」

「ああ!いつでも来てくれ!」

「チェル姉ちゃん!願い事は何にしたの?」

「ふふ!内緒〜!」

「ええ〜!教えてよ〜!」

「リア。願い事をバラすと叶わなくなるぞ。」

「えっ!じゃあ黙っとく!」

「あはは!リア素直〜!」

「えっ?嘘なの!?」

「ははは!ああ嘘だ。」

「お兄ちゃんの意地悪!…知らない!」

「あはは!…ありがとうライ。リアの気をそらしてくれたんでしょ?」

「…まぁな。聞かれたくなさそうだったからな。」

「ふふ、ありがとう。優しいねライは。」

「なんだよ。急に。」

「ううん。何もないよ!ライの願い叶うといいね!…リア〜!ごめ〜ん機嫌直して?」

「ああ。ありがとう。」

(俺の願いは、チェルが頷いてくれるだけで叶うんだけどな。)

ライがランタンに書いた願いは、

『チェルが俺を見てくれますように。』

(でも今は叶わなくていい。チェルに悲しい思いはさせたくない。)

ライはリアの元に行ったチェルを見つめた。

(いつか今思っている人を思い出に出来たら…。その時は俺から伝える。だから…)

ライはチェルを見て、微笑んだ。


リアの元に行った私はリアの機嫌を直したあと、ベンチに座って星を眺めていた。

(ここの星空はほんと綺麗だなぁ。本当に星が願いを届けてくれそう。…でも、これは願いという名の私の決意だ。自分で叶えなきゃいけない。)

チェルがランタンに書いた願いは

『香やしお、みんなのことを楽しい思い出に出来ますように。そして…香のことを思い出に出来たら、いつかライに思いを伝えられますように。』

(今は叶わなくてもいつか叶えるから。「私」は香が好き。でも、私はライが好きなんだ。)

私はリアに怒られてるライを見つめた。

(ふふ。怒られてる。…その時までにライは誰か見つけちゃうかな…。でも、「私」が香を思い出に出来たらチェルとしてライに伝えるから。だから…)

チェルはライを見て、微笑んだ。

((今はまだ、このままで。))

願いを乗せたランタンは今もまだ飛んでいる。

それぞれの思いと願いを、…二人の決意を込めて。空に上っていく。プレアが神様に願いを届けてくれるようにと。



「すみません。友達の誕生日に花を送りたいので可愛い感じの花束お願いします。」

「ありがとうございます!少々お待ちください!」

「明日の花火楽しみだね!」

「そうだね!屋台もいっぱい出るみたいだしね!」

「…ねぇねぇ他の人も呼んでいい?」

「うん。いいけど誰?」

「…私の好きな人。」

「えぇ!何それ詳しく!」

(恋してるなぁ…。)

アステル祭から何日か経った後の営業中。女の子達の会話を聞いて微笑ましく思った。

「お待たせしました〜!明日の花火大会頑張ってね?」

「ありがとうございます。…!はい。頑張ります!」

「ありがとうございました〜!」

私は二人を手を振って見送った。

(私もライたち誘って行こうかな?花火。ちょっと聞いてみよう。)


「あっライ!ロッカ、ロッサ!ちょうど良かった!」

店を閉めようと外に出るとばったり、三人に会った。

「どうした?」

「「何か用?」」

「明日花火が上がるでしょ?一緒に見に行かない?」

「「おお!行く!花火は綺麗だし屋台の料理は美味しいからな!」」

「俺も空いてるからいいぞ。」

「良かった!じゃああとリア誘おう!」

「じゃあ明日。6時頃くらいにチェルの家に来るから。リアには俺から言っとく。」

「分かった!ありがとうライ!よろしくね!」

「「6時頃ね!オッケー!」」

「じゃあ引き止めてごめんね!また明日!」

「ああ。じゃあな。」

「「バイバ〜イ!」」

(明日楽しみだなぁ!)


次の日の夕刻。

(あっ!もうそろそろ6時だ!みんなもう来てるかな?)

私が外に出ると、ちょうど来たところだった。

「あっ!おーいみんな!」

「「おっ!チェルナイスタイミング!」」

「ぴったりだったね!どうする?もうこのまま行く?」

「行こうよ!私もうお腹空いちゃった!」

「チェルはいつでも空いてるだろ。」

「そんなことはないよ〜!…でも美味しいものがあると食べちゃう。」

「食べるんじゃないか…。」

「だって美味しいんだもん。」

喋っていると、会場に着いた。

「「おっ!フランクフルトがある!俺たちこれ食べるな!」」

「私はフライドポテト食べたいから買ってくるね!」

「じゃあ私わたあめとクレープ買ってくる!あとでまたここで集合しよう!…ライはどうする?」

「じゃあ俺もチェルと一緒に行くよ。」

「あれ?ライ甘いもの好きだっけ?」

「クレープなら甘いもの以外もあるだろ。」

「…無理しなくてもいいよ?あっじゃあラクル食べる?私も食べたいし!」

ラクルはルクシテーゼのおやつみたいなもので、クレープみたいにバナナやチョコなどを入れてデザートに出来たり、チーズとか鶏肉とかを入れて惣菜みたいにもできるんだ!日本で言うたこ焼きに近いかな!

「まだ、食べるのか?まぁいいか。とりあえず買いに行こう。」

「うん!…あっあったクレープ!えーとイチゴバナナチョコ一つ下さい!ライはどうする?」

「…俺はチーズチリソースフランク一つ。」

「そんな辛いの食べるの?…あっありがとうございます!はい。」

「ありがとう。ああ。生地が甘いからな。」

「まぁそうだね。でも辛さの方が勝ちそうな気がする…。あっ!ラクルの店見っけ!チーズ餅とマシュマロチョコ下さい!ライは?」

「じゃがチーズ下さい。…そんなに食べられるのか?6つも入ってるのに。」

「食べられるよ!…あっありがとうございます!ライどっかで座って食べよう!」

「あそこ空いてるぞ?」

「あっちょうど良かったね!まずはチーズ餅食べよう!ん〜!チーズと餅がトロトロだ〜!マシュマロチョコもマシュマロがちょっと溶けてて美味しい!」

「良かったな。」

「ライも美味しい?」

「美味しいぞ?食べるか?」

「いいの?じゃあ私も餅チーズあげる!口開けて。」

「なっ…それはいい。自分で食べる。」

「だってライ両手塞がってるから。」

ライは片手にクレープ、もう片方にはじゃがチーズを刺した串を持ってる。

「串を外せば食べられる。」

「私が食べさせた方が早いと思うけど?はい!」

「〜っ!…美味しい。」

ライは意を決して、顔を赤くしながら食べた。

「でしょ!…なんで顔赤いの?」

「別に何でもない!…ん。ほらチェル、口開けろ。」

「え?どうして?私別に両手塞がってないから自分で食べれるよ?」

「チェル。マシュマロチョコ刺して。」

「ん?うん。…はい刺したよ?」

「両手塞がったな。」

「…?…ハッ!ほんとだ!」

「ほら、口開けろ。」

いざ自分が食べるとなると、なんか恥ずかしくなった。

「えっやっぱいいかな。」

「食べたがってたじゃないか。」

「いや、もうお腹いっぱいだから…!」

「まだラクルもクレープも残ってるだろ。ほら観念しろ。」

(うぅ。逃げられない。)

「〜っ!…恥ずかしい。けど美味しい。」

「そりゃ良かったな。」

ライはニヤニヤ笑いながら言った。

「うぅ。ごめんねライ。こんな恥ずかしいとは思わなかった…。」

「分かったならそれでいい。…別に嫌じゃなかったし。」

「ん?何か言った?」

「いや。何でもない。それよりクレープ食べないともうそろそろ花火始まるぞ。」

「あっそうだった。」

私たちは話しながら、ラクルとクレープを食べ終えた。

「みんなもう集まってるかな?」

「もうそろそろ時間だしいるんじゃないか?」

「「あっライとチェル来た!遅いぞ〜!」」

「何してたの?」

「チェルがいっぱい頼んだからな。食べるのに時間かかったんだ。」

「え〜私のせい?ライも頼んでたでしょ?」

「チェルよりは頼んでない。」

「まぁまぁ。時間に間に合ったんだからいいじゃない!花火見に行こう!」

「「そうそう!責めてたわけじゃ無いしね!」」

「そうだね!行こ!」

「ああ。そうだな。」


「ここら辺かな?」

私がそう言った時、

ヒュー…。パン!

「あっ!花火!」

「ほんとだ!綺麗だね!」

「「た〜まや〜!」」

「久しぶりに見たな。」

その後も、色とりどりの様々な花火が打ち上がった。

「これぞ夏って感じだよね!」

「そうだね!でも夏が終わるって感じがする。」

「確かにな〜!花火って夏の終わりのイメージだわ。」

「まぁでも、またこの季節が来るってことでもあるだろ。」

「あはは!いいこと言うねライ。」

「あっ…。終わっちゃった。綺麗だったね!また来年も見にこよう!」

「うんまた誘ってね!チェル姉ちゃん!」

「「俺たちも!」」

「俺もまた誘ってくれ。」

「もちろん!…あ!わたあめ食べるの忘れた〜!」

「あれだけ食べたのにか?」

「来年は絶対食べる!」

こうして私たちの夏は終わった。

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