8章 カトレアとアマリリスの別荘

第8話

カトレアのお茶会から数日後。

「うわぁ〜!セレニテ湖だ〜!」

「これがルクシテーゼの人気スポットの湖なのね!」

カリンが湖の近くまで行って眺めている。

「綺麗だわ。癒される。」

「そうねミモザ。カトレアこっちに魚いるわよ!」

「あっほんとねマリー!可愛い!」

「お嬢様方あまりバラバラにならないで下さい。」

私たちはさっそくカトレアの別荘に遊びに来ているんだ!

カトレアの別荘はキノコや山菜が豊富な西の森やルクシテーゼの人気スポットのセレニテ湖の近くにあるから今はセレニテ湖にピクニックに来たんだ!セレニテ湖はとても綺麗で周りが木々で囲われていて、透き通った水に空が写った景色が絶景なんだ!それに木々が太陽を遮ってくれるから涼しくて夏にぴったりの場所なんだ!来た人に癒しを与えてくれるからセレニテ湖は別名癒しの湖って呼ばれてる。護衛としてライとロッカとロッサも来てるんだ!

「ねぇもうちょっと奥まで行こうよ!」

「いいわね!行きましょう!」

「カリン!先に行き過ぎたらダメよ?」

「分かってるわ!カトレア!」

「マリー私たちはゆっくり行きましょ?」

「そうね。ミモザ。」

「いいよね?ライ!」

「はぁ…危険は少ないですが、万が一のこともあるのであまり私どもから離れないでくださいね。」

「「「「は〜い!」」」」

「あっ見てみて!カトレア!カリン!花がいっぱい咲いてる!」

「わぁ!綺麗!」

「まぁ!ほんとだわ!…マリー!ミモザ!すごいわよ!」

「ええ!すぐ行くわ!」

「先に行ってて!…ふふ、元気ね。」

「わぁ!カンパニュラだ!キキョウにあっマリーと同じ名前のアマリリスも咲いてるよ!」

「まぁ…!これがアマリリスなのね。とても綺麗だわ!」

「ほんと綺麗!カンパニュラも素敵ね!」

「いろんな花が咲いてるのね!いろんな色の花が咲いてるから色彩も綺麗だわ!」

マリーとカトレアはアマリリスをミモザは花畑を見回して言った。

「チェル!この花は?とても綺麗だわ!」

「あっそれは…カスミソウだよ。花言葉は永遠の愛。」

「まぁ!素敵ね!」

「うんそうなの。」

(どうしたのかしら?ちょっと元気がなくなったわね。…チェル、その花に思い入れがあるのかしら?花の向こうに誰かを見ているような…。)

「カリンは永遠の愛を捧げる人はいるの?」

「えっ?…ああ。…まぁその…いるわ。」

「ええ!?いるの!?誰、誰?」

「まぁ!カリン!思い人がいるの?」

「ええ!?聞かせて頂戴!」

「私も気になるわ!」

チェルの言葉にみんな食い気味に聞いた。

(さっきのは気のせいだったのかしら…?)

「…ええ?…幼なじみなの。」

「…!」

「まぁ!いいわね!小説みたいだわ!」

「もしかしてあの方のことかしら?」

「えっ!マリー知ってるの?」

カトレアたちはカリンの恋愛トークに盛り上がっている。

(そっか…。幼なじみ。)

「カリン、頑張って!応援してるから!後悔しないように気持ち、伝えてね?」

「…ええ。頑張るわ!」

チェルはカリンをみて微笑んだ。


「お嬢様たち盛り上がってるな〜?」

「そうだね兄さん。楽しそうだね。ねぇライ。…ライ?」

「…!あ、あぁそうだな…。」

「どうしたの?」

「なんでもない。」

(チェル。元気ないな。小さい頃から幼なじみとか恋の花言葉を持つ花やそれを求めてきた人を見るといつもの元気がなくなる。…まるで何かを思い出しているような…。)

「…何を抱え込んでるんだ?」

ライはチェルを見つめながら、呟いた。

「な〜にチェル見つめてんだよ!」

「ふふ。ライはチェルのこと好きだもんね。」

ロッカとロッサはニヤニヤしながらライを見た。

「うるさい!…ていうかなんで知ってるんだよ!」

「「だって俺たち小さい頃からライのこと知ってるし?」」

「…俺のことが分かるくらい知ってるなら、チェルのことも分かるだろ。」

「ライよりかは分からないけど大体は。」

「俺も。」

「なら大体分かるだろ。…チェルにこの気持ちは伝わらない。あいつは違う人を見ている。その人が誰かは分からない。今まで見てきてそんな人はいなかったからな。」

「…そうだね。チェルは僕たちが知らない人を見てる。」

「あぁ。それに何かを思い出して少し悲しそうにする。」

「もしもチェルが俺のことを好きになってくれたとしても…首を縦に振らない。そんな気がするんだ。」

ライはカトレアたちとはしゃぐチェルを見て笑った。

「「ライ…。」」

「だから伝えない。もうこの話は終わりだ。…この先も。」

「…分かった。気になる子が現れたら言えよ!応援してやるから!」

「あっなんなら紹介する?」

「ふっありがとな。ロッカ、ロッサ。今はいい、当分気になる子は現れそうにないからな。」

「「…そっか。」」

そしてライたちはまた、チェルたちを見守った。


「じゃん!花冠!はいカトレア。」

「わぁ!綺麗…可愛いわ!」

「はい!マリーとカリンとミモザの分もあるよ!」

「「「うわぁ〜ありがとう!」」」

「私のも!ふふ、お揃いだね!」

「「「「…!お揃い…!」」」」

「ん?どうしたの?」

「「「「ありがとう!チェル〜!」」」」

カトレアたちは私に抱きついてきた。

「えっ?うん!…そんなに喜んでもらえて嬉しいよ!」

「私たちお揃いのものなんて持ったことなかったから!」

「そうなんだ!じゃあこれから増やしていこ!」

「「「「チェル大好き!!」」」」

「わわっ!ちょっと待って、倒れる!」

倒れそうになって目を瞑ると、

(あれ?…衝撃がこない。)

「お嬢様方、あまりはしゃがれますと怪我されますよ。」

「…ライ!?」

「あっごめんなさい!チェル!嬉しくなっちゃって…。」

カトレアはそう言って謝ったあと、マリーたちも続いて謝った。

「大丈夫か?チェル。」

「…ありがとう、ライ。大丈夫だよ。みんなも大丈夫だから心配しないで!」

それを少し離れたところで見ていたロッカとロッサは悔しそうにしていた。

((チェルのことも分かるから、分かるんだ。チェルも、ライのことが好きなんだ。ライは気づいていないけど。…でもその思いをなぜか押し込めようとしてる。まるでその思いを無かったことにしようとしてるみたいに。))

「何がそこまで二人を邪魔するんだろうね…兄さん。」

「ああ。素直になれば幸せになれるのに…。チェルはライを見て何故か苦しそうにするしな。」

「「はぁ〜…。」」

二人はどうしたもんかとため息をついた。


「ロッカ、ロッサ〜!お昼食べよ〜!」

「「分かった!今行く!」」

「はぁ〜お腹すいた!」

「いっぱい作ってもらったから、たくさん食べて!」

「う、わぁ〜!美味しそう!カトレアの家の職人さんすごいね!」

「ふふ。ありがとう!…じゃあ食べましょう!」

「「「「いただきまーす!!」」」」

「…!ん〜!美味しい!」

「ほんと!美味しいわカトレア!」

「ありがとう!チェル、カリン。シェフも喜ぶわ!」

「この紅茶も美味しいわ!」

「ええ。香もいいわね!」

「ありがとう!マリー、ミモザ!その紅茶私のお気に入りなの!」

談笑しながらご飯を食べていてふと思ったことを聞いた。

「この後どうしようか?」

「セレニテ湖でお茶会でもどう?美味しいお菓子持ってきたから。」

「お菓子!?食べる!これミモザの国のお菓子?美味しいそ〜!」

「チェル後でね。今ご飯食べてるのにもうお菓子食べたいの?」

「えへへ。美味しそうだったんだもん。」

「さすがチェルね。食い意地が張ってるわ!」

そのあとも談笑しながらご飯を食べ終えた。


「やっぱり綺麗ね。カトレア。」

「そうねマリー。セレニテ湖を見ながらお茶ができるって贅沢ね。」

「うん!美味しい!」

「とても心地がいいわ。これで良かったわねカリン。」

「ええ。一人全く関係ない感想言ってるけどね。」

チェル以外の四人は苦笑しながらチェルを見た。

「ん?何、みんな?」

「お前はほんと相変わらずだな。」

「ライ!…何?私何かした?」

「はぁ〜…。いいや、してはいない。」

「そう?なら良かった!…美味し〜!」

「ふふ。チェルらしいわ。」

カトレアはチェルを見て微笑んだ。


「ん〜!私ちょっと近く散歩してくるね!」

お茶会も終盤にかかる頃私は伸びをして、みんなに言った。

「なら俺もついていく。」

「大丈夫だよ!すぐそこだし!危険だったら迎え撃たないですぐにライたち呼ぶから。」

「…約束だぞ。それともうそろそろ帰るから早めに帰って来いよ?」

「うん!分かってる!…じゃあ行ってくるね!」

「行ってらっしゃい!チェル!」

私は手を振って散歩に出た。


「ほんとに落ち着くところだな〜。」

私は少し離れたところにあった木陰に入って木の幹にもたれた。

「…ライ。」

ここから少しライたちが見える。ライはロッカとロッサと楽しそうに話している。

(どうしてまた好きになっちゃったんだろう…。香じゃないのに。もしライが好きって言ってくれても、それを受ければ香のことも香のことが好きだった「咲良」も薄れて消えちゃう。…それだけはダメだ。約束を果たせなかったから。せめて覚えていたい。)

「…ライ。好きだよ。でも、ごめんね。「私」は香が好きなんだ。まだ、覚えていたいから。チェリー・ベネテーゼとして生きて行くって決めたのにね。まだ「私」に囚われて、る…。」

私は、眠気に負けて眠ってしまった。


「そろそろ帰りましょうか?」

「そうね。あれ?チェルは?」

「まだ帰ってきてないわ。」

「何かあったのかしら!」

「あのバカ!…早く帰ってこいって言ったのに…!悪い。ロッカ、ロッサお嬢様方頼む!」

「「はーい、俺たちにお任せ!行ってらっしゃい!」」


「いた!…おい。寝てるのか?はぁ。人騒がせなやつだな。」

チェルはそんなに離れたところにはいなかった。

「…よく寝てる。…チェル、お前は誰を思ってるんだ?俺を見てくれることは、ないのか?この気持ちを伝えたら…いや、困らせるだけだな。…なぁチェル。俺はまだお前を好きでいていいだろうか。」

「う、ん…香。」

「…!…コウ?」

ライがチェルに手を伸ばそうとした時、チェルが身動いて寝言を溢した。

(…そうか。コウって言うやつなんだな。)

ライは伸ばしかけた手を握りしめて下ろした。

「おいチェル!起きろ。帰るぞ。」

俺はチェルを起こそうと呼びかけると、

「…ん?香?」

「…残念だが、コウじゃない。」

「…。…はっ!ライ!?えっ?どうして!?」

「帰る時間になっても戻ってこないからな。呼びにきたんだ。」

「あっ!ごめん、寝てた…。呼びに来てくれてありがとう。…みんな待ってるよね?行こ!ライ。」

「…あぁ。早く戻ろう。」

私たちは、香のことに触れないままみんなの元に戻った。

「チェル!どこ行ってたの!?」

「心配したのよ!?」

「ごめんね。カトレア、マリー。寝ちゃってて。」

「ええ!?寝てたの?」

「でも無事で良かったですわ!」

「心配かけてごめんね。カリン、ミモザ。」

「ほんとよ!もう!…さて、チェルも揃ったし帰りましょうか?」

「うん!ごめんね待たせて、じゃあ帰ろう!」

こうしてセレニテ湖のピクニックは終わった。



「ここがネオラル鉱山…!おっきい!」

カトレアの別荘旅行から一週間後、私たちは、今後はマリーの別荘に来ているんだ!マリーの別荘は、ネオラル鉱山の近くあるから今日はネオラル鉱山に来てるんだ!ネオラル鉱山は、宝石や金、銀が出てくるとても大きい鉱山でルクシテーゼの加工品に使われている宝石や金はほとんどここから出てるんだ!普通は入れないんだけどマリーの知り合いが所有者で特別に入れてもらえることになったの!もちろんライたちも一緒だよ!

「中に入ってみましょ?」

「うん!マリーありがとう!…う、わぁ!すごい!キラキラしてる!」

「ほんとだわ!光を当てるとより光るわね!」

「セレニテ湖とはまた違った綺麗さだわ!ね?ミモザ!」

「そうねカリン!綺麗だわ。」

「今日は採掘の見学もできるわよ!良かったらどうかって言ってくれたの!」

「ええ〜すごい!見たい!」

「こっち来て!」

マリーは私たちを連れて奥に進むと、

「あぁ!アマリリス様!お待ちしておりました。こちらへどうぞ!」

「ありがとう。」

男の人が待っていて、採石場が見回せるところに連れて行ってくれた。

「うわぁ〜こうやって掘ってるんだ!」

「すごいわ!なかなか見れないもの!」

「こちらが今掘った。ルビーの原石です。」

「これが原石!ここから加工されていくのね!」

「何になるのかしら!」

「喜んでくれて良かった!…この後、今日掘った宝石を加工してアクセサリーにする体験があるんだけどどう?」

「「「「やってみたい!!」」」」

そうして、私たちは工房に行くことになった。


「いらっしゃいませ。アマリリス様。お話は伺っております。こちらへお座り下さい。」

「ありがとう。…ねぇカトレア何にするの?ネックレスとかかしら?」

「そうね。髪飾りもいいわね!カリンは?」

「私もいいと思うわ!」

「そうだわ!せっかくだからお揃いにしましょう!」

「「「いいわね!」」」

「ごめん。私は作りたいのが決まってるの。」

「そうなの。じゃあ自分が好きなものにしましょうか!」

「ええ!その方が自分好みにアレンジできるものね!」

「お揃いのものは違うものにしましょう!」

「ええ!だから気にしないでね?」

「ごめんね。マリー、みんな。ありがとう。」

「いいのよ!…ところで何を作るの?」

「桜のブローチ。桜の花の中心に出来れば、ルビーが入ってればいいな。」

「具体的ね?…何か元になるものでもあるの?」

「…うんちょっとね。そういうのが欲しくて。」

「そうなの。素敵だと思うわ!私は何にしようかしら?」

そうして始まったアクセサリー作りは難しかった。

「あっ間違えちゃった。」

「ん〜!これが入らないわ。」

「バランスがおかしいわね。」

「上手くいかないわ。」

「…。」

みんなは悪戦苦闘しながら進めていっていた。私は無言で黙々と進めていた。


「お嬢様たち今度はアクセサリー作りだな。」

「先週は花冠だったね〜。」

「…そうだな。」

(一言も言葉を発さずに集中している。…そんなにコウが、大事、なんだな。)

「「…。」」

ロッカとロッサはライの様子を見て、なんとも言えない表情をした。

「…苦戦してるみたいだけど、完成どうなるのかな?」

「でも案外上手く出来るんじゃないか?なぁライ。」

「…あぁ。そうだな。」

((…ライ。))

ロッカとロッサはもどかしい思いに駆られながらアクセサリー作りを見守った。


「…出来た。」

数十分後、チェルはブローチを作り終わった。

「まぁ!綺麗ね!」

「ほんとねカトレア!ルビーがいいアクセントになってるわ!」

「私も頑張って仕上げるわ。」

「私もマリーと一緒に頑張るわ!」

「ありがとう。みんな。」

出来上がったブローチは、かつて香に貰った桜のブローチにそっくりだった。

(…うん。香のブローチだ。ふふ、あのブローチよりは高額だと思うけど。…あのブローチどうなったかな。香との、思い出。バックに入れてたから…バラバラに、なっちゃったかな。…ごめんね香。大事にするって言ったのに、こんな約束も、守れなくて。)

私は出来上がったブローチを抱きしめた。

(今度は大事にするから。…香に貰ったものじゃないけど。このブローチは香との思い出が詰まったものだから。)

「…よし!みんな出来た?見せて〜!」

私は気持ちを切り替えて、みんなの元に行った。


「なかなか難しかったわね〜。でも上出来だわ!」

「そうね!苦戦したけど結果的に成功したわ!」

宝石の加工体験を終えて、カトレアの本家に戻ってきた。

「とても楽しかったわ!ルクシテーゼに来て最高の時間だったわ!…私はもう国に帰らないと行けないから。」

「私もカリンと一緒。もう帰らないと行けないの。チェルたちと会えて本当に良かったわ!ありがとう!」

「そっか、もう帰っちゃうんだ。…私もすっごく楽しかった!またルクシテーゼに来た時は遊びに来てね!」

「私もいつでも歓迎よ!」

「私もカトレアと一緒に待ってるわ。」

「「もちろん!ぜひ遊びに行くわ!」」

私とカトレアとマリーは、帰っていくカリンとミモザを見送った。

「私たちも帰りましょうか、チェル。」

「そうだね。カトレアほんとにありがとう!おかげでマリーたちと出会えたよ!」

「ふふ!でしょ?…また、なかなか会えなくなるかも知れないけどまた遊びましょう!」

「うん!絶対!…約束ね。」

「「ええ!約束。」」

そうして私たちは別れた。


「あ〜やっと帰れる。」

「僕たちは休暇じゃなくて、仕事だったもんね。」

「ロッカ、ロッサありがとう!お疲れ様!ライもありがとうね。」

「あぁ。大したことじゃないから大丈夫だ。」

(約束…。この約束は守る。…今度こそ。)

私は胸に決めて、ライたちと家までの道を歩いた。

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