6章 ルクシテーゼ
第6話
やぁ!こんにちは!里中咲良ことチェリー・ベネテーゼです!いや〜2回も自己紹介をするとは思わなかったなぁ〜。
えっ?何で生きてるかって?そりゃ〜お気づきの方もいると思うけど、…転生してました!
私もびっくり!目が覚めたら違う世界にいるんだもん。でも最初から記憶があったわけじゃなくて、6歳くらいに頭を強く打った衝撃で咲良の頃のことを思い出したんだ。だから目が覚めたらというか、気がついたらかな。
…あの時は、しおが横断歩道を渡っていた時に赤い光が見えたんだ。でもトラックは止まる気配がなくて、それでしおを追いかけたんだ。しおが助かって良かったけど、…もう香にもしおにも会えない。…ふふ。置いて行かれる方が辛いって言うけど、記憶を持ってちゃこっちの方が辛いね…っ。この世界には「私」のことを知っている人も、香やしお、クラスのみんな、日本の文化さえも知っている人がいないんだもん。…っこんなことなら記憶なんか思い出したく無かった。でも、忘れられない…!みんなと過ごした日々。私をいつも支えてくれたしおのことも、大好きな香のことも。だから、忘れないように元気に笑ってこの世界で生きていこうと思ったんだ。
でもさすがに思い出した時は、一週間ほど自分の部屋に閉じこもっちゃったんだ。この世界のお父さんとお母さんにすごく心配かけちゃったけど…。
『ふふっ。さすが咲ね。切り替えが早いわ。』
『はぁ…元気だな。』
『ずっと好きだったんだ。』
だけどその時に、私は元気と運動だけが取り柄なんだから。私は私らしく生きていく!って決めたんだ。だからもうくよくよしない!…悲しみはするかもしれないけどもう、泣かない。立ち止まらない!
香、しお、みんな。ありがとう。お礼、言えなかったな。
お父さん、お母さん。ありがとう。ごめんね親孝行も何もできなくて…。
私はこの世界で「チェリー・ベネテーゼ」として生きてくから。
「おーい!チェル!何やってんだ?もう開店時間だろ。」
「あっそうだった!すぐ行く!」
では、改めて。
私はチェリー・ベネテーゼ。みんなからは「チェル」って呼ばれてる。今は16歳。そしてさっき声をかけてくれたのが、ライラック・ボルガリス。私は「ライ」って呼んでる。ライは私の幼なじみで同じ16歳。ライもイケメンなんだ!ライはこの国の騎士団に所属していて、頭が良くて運動神経抜群だから騎士としてすごく活躍してるみたい。ファンも多いみたいだよ!優しくてカッコいい自慢の幼なじみ!
「お兄ちゃん!ちょっと手伝って!パンが今焼き上がったの!…あっチェル姉ちゃんおはよう!これ。いつものパン出来たから持っていって!」
「はいはい。今行くから。」
「リア!おはよう!朝からえらいね。パン、いつもありがとね!」
この子はアルメリア・ボルガリス。「リア」って呼んでて、ライの妹なんだ。リアは14歳で幼なじみなんだけど、本当の妹みたいに思ってるんだ!リアもお兄ちゃんに似て、とっても美人なの!ここの町に住んでる人たちには美男美女兄妹で知られてるんだ!優しくてとっても良い子なの!
あっそうだ!忘れてた。私が転生した世界は、中世ヨーロッパのような洋風の世界。小説や漫画とかでよく見る世界観かな。それで私が暮らしているのが、大国「ルクシテーゼ」。海に面してるから海の幸とか他の国からの輸出輸入が盛んなんだ。それに鉱山もあって宝石や真珠とかを使った加工品が有名だし、他にも色々この国にしかない有名なものもあるからすごく繁栄したんだって!隣国のモーナント国やセルミンス国とも友好だから平和で移民してくる人も多いみたい。そんなルクシテーゼの王都「ルクシア」の貴族…じゃなくて、花屋を経営してる町娘。ほんと何でこんないかにも転生系のヒロインって感じなのに貴族じゃなくて町娘なのよ!もっと王女まではいかなくても伯爵とか!あっ…でも社交とかマナーとか覚えなきゃならないのか…。じゃあやっぱり町娘で良かった!そんな複雑なの覚えられないしね!
「ただいま〜!パンもらってきたよ!」
「おかえり。チェル。」
「おかえり!あぁ、ありがとう!そこ置いといて!」
「は〜い!」
この国は洋食だから主食はパンなんだ!だからいつもパン屋を経営しているライとリアの店から毎朝焼きたてを買っている。たまにお米が恋しくなるけどね。
お母さんはカルミア・ベネテーゼ。とても明るくて、フレンドリーな性格だからみんなから人気なんだ!料理が得意で、とっても美味しいの!
お父さんはゲウム・ベネテーゼ。運動神経が良くて、武道が得意なカッコいいお父さんなんだ!よくお父さんに武術を教わってるの!
「ミア〜。お店に飾る花を作ってくれないかしら?」
「ベリー!わざわざ来なくても持ってくのに!」
「悪いからいいわよ〜。時間があいたから来たの!手が離せなかったらライかリアに行かせるもの。…チェルちゃんもいつもうちまで来てくれてありがとうね!」
「ううん!散歩がてら行ってるから大丈夫だよ!今日はアセビおじさんも一緒なんだね!」
「あぁ。僕も動かないとね。」
お母さんの親友、ベリーおばさんことジューンベリー・ボルガリス。ライとリアのお母さん。優しくて裁縫や刺繍が得意なんだ!ハンカチにライラックとかシオンの花を刺繍してもらった時はとっても綺麗に刺繍してくれたんだ!
そしてベリーおばさんの旦那さん、アセビおじさんことアセビ・ボルガリス。真面目で頭がいいんだ!さすがライとリアの両親だよね!実はお母さんもベリーおばさんも美人でお父さんとアセビおじさんもイケメンなんだ!だからうちとボルガリス家は美男美女一家って呼ばれてる。何でここに生まれたかな〜…。私は顔は咲のままなんだよ〜!せっかくなら美人に生まれたかった…。まぁそれは置いといて。私たちは家族ぐるみで仲がいいからよく一緒に過ごしたり、出かけたりするんだけど…。歩いていると周りの人達の視線がすごいんだよね。人気のアイドルや俳優さんが町を歩いた時みたいな…。あっ香としおみたいな感じ。絶対私浮いてるんだよね〜…。っと、まぁこんな感じかな?他にもまだいるんだけど、その時に紹介するね!
それと、疑問に思った人もいるかな?私が朝に散歩してるってこと。あんなに寝坊助だったのに!って。実はこの世界は必要最低限の知識を学んだら学業は終わりなんだ。大体6年くらい国の歴史や計算、文字とかを学んで卒業するの。小学校みたいな感じ!もっと学びたいって子や貴族の子はまだ学ばないといけないけど。(主に社交マナーとか隣国とかについてだね。)それ以外の国民は学んだあと実家を継いだり、働きに行くんだ!だから朝は開店時間まで余裕が出来たから散歩に行くようにしたの。で、帰りにパンをもらって帰ってくるの!
「はい!お待たせ!今日はオレンジをメインにした柔らかい雰囲気の花束よ!」
「うわぁ〜綺麗だわ!さすがミアね!じゃあさっそく飾ってくるわ!また後でね!」
「うん!また後で!…さ、チェルご飯食べたら今日も開店よ!」
「は〜い!まっかせといて!」
今日も元気にご飯を食べて開店準備を始めた。
「いらっしゃいませ!はい!お家に飾るようですね!どの花が好きですか?チューリップですね!少々お待ちください。はい、どうぞ!ありがとうございました!」
「いらっしゃいませ!花束のご注文ですか?どういったものにしますか?…告白ですか!?うわぁ〜頑張って下さい!ではバラとコチョウランをメインにお作りしますね!どちらもあなたを愛していますって花言葉なんですよ!…はい!出来ました!…頑張って下さいね。応援してますから。後悔しないようにして下さいね。ありがとうございました!」
(告白か…。うまくいくといいな…。)
「なにボーッとしてるんだ?チェル。」
「わっ!…なんだライか。」
「なんだとはなんだ。」
私がさっきの人を見送っていると後ろからライに驚かされた。その後ろに、
「「こんにちは〜!」」
「おっチェルじゃん!」
「やっほ!頑張ってる?」
「あっ!ロッカとロッサも一緒に来たんだ!頑張ってるよ、もちろん!」
この二人はクロッカス・レオルーフとクロッサンドラ・レオルーフ。私たちの同じ歳の双子なんだ!ロッカとロッサって呼んでる。ロッカがお兄ちゃんでロッサが弟。一卵性だからそっくりなんだ!ロッカが元気で明るいって感じで、ロッサも元気なんだけど大人しめなんだ。あとほくろかな!ロッサの口元にあるんだ!そっくりだからひと目では見分けられないけどね。それと二人ともライと同じ騎士だよ!
「もうお昼だからな。昼飯を食べに帰ってきたんだ。」
「あっそっか。もうお昼だ!どうりでお腹がすくと思った。」
「お前は一日中すいてるだろ。」
「なに〜!」
「ははは!お前らはほんと仲良いな〜!」
「ははは!そうだね兄さん。僕たちもお邪魔していいかな?」
「もちろんだよ!先に入ってて!リアとおばさん達呼んでくるから!」
「「了解〜!」」
お昼ご飯は、ベネテーゼ家とボルガリス家みんなで一緒に私の家でお母さんの料理を食べるんだ!
「リア!お昼だよ!ライももう来てるから行こ!おばさん達は?」
「チェル姉ちゃん?…あっもうお昼か!待ってて、お母さん達呼んでくる!」
「あらあらもうそんな時間なのね。」
「チェルちゃん。お昼ご飯は何って言ってた?」
「…ん〜と。アヒージョって言ってたかな?」
「ありがとう。…じゃあこのフランスパン持って行こうか?ベリー。」
「そうね。アヒージョにも合うし!持っていきましょう!」
「やった!お母さんのアヒージョにアセビおじさんたちのフランスパン!楽しみだ〜!」
「うん!私もお腹すいちゃった!早く行こ!」
「ふふ。そうね。行きましょうか!」
「ただいま〜!」
「お邪魔するわねミア。」
「おかえりチェル!いらっしゃいベリー!ちょうど出来たとこよ!」
「アヒージョのお供にフランスパン持ってきたよ。」
「あぁ、ありがとうアセビ!さっ座ってくれ!」
「「おばさん!これここでいいの?」」
「ええ!そこに並べて!」
「おばさんこれ入れて完成でいいのか?」
「うん!入れたらもうちょっと煮込んでね!」
「分かった。」
「ライ君たちが手伝ってくれて助かったわ!」
「「いいえ〜これくらいやりますよ!」」
「食べさせてもらうんだし!」
「そうそう。いつもありがとうございます。」
「いいのよ〜!いっぱい食べてね!」
「「はい!いただきます!」」
「ほれ。出来たぞ。」
「じゃあ食べよう!」
ライが持ってきたのを見て私は言った。そしてみんな手を合わせて、
「「「「いただきます!」」」」
「ん〜!美味しい!最高!」
「ほんとミアの料理は美味しいわ!」
「ふふ!ありがとうチェル、ベリー!」
「「パンも最高!すごく合う!」」
「あら!ありがとう!」
「持ってきた甲斐があるな。」
「そりゃお母さんとお父さんのパンは最高よ!」
「リアも一緒にこだわって作ってるからな。」
賑やかないつも通りのお昼を過ごした。
「まだ食べよっと!」
「…まだ食べるのか?」
「…。うん!だって美味しいんだもん!」
「なんだよ。今の変な間。」
「ん?別に何も?」
「たまに変な間があるよなチェル。」
「そんなことないよ〜!いつもこんなでしょ!…うん!美味しい〜!」
「はぁ…。よく食べるな。」
「さて、時間だよ。ライ、兄さん。」
「おっ?もうそんな時間か?」
「あぁ…。そうだな、行くか。じゃあご馳走様。行ってくる。」
「「ご馳走様でした!お邪魔しました〜!」」
「行ってらっしゃい!三人とも!」
「ロッカ君、ロッサ君また食べにきてね!」
「「は〜い!ありがとうございます!」」
「…さて、片付けたあとお店再開しようか!チェル!」
「は〜い!了解!」
みんなで片付けたあと
「…じゃあ私たちも戻るわ。今日も美味しかったわミア!」
「うん!じゃあねベリー!」
リアたちはお店に戻り、私たちは営業を開始した。
ガタガタ…。
「ん?馬車?」
豪華な馬車が店の前に止まったと思ったら、中から出てきたのは、
ガタン!…ガチャ
「チェル!久しぶり!」
「…!カトレア!?どうしたの!?」
ルクシテーゼで指折りの中に入るほどの伯爵名家の令嬢カトレア・レーシェントだった。
何故こんな私とは程遠い身分の人と親しいのかというと、小さい頃カトレアが迷子になっていて一人で泣いているところを私が助けたからなんだ!助けた時はそんな身分が高い人だとは思わなくて、一緒に歩いていたら騎士団の人がいっぱい走ってきて私たちを囲んだ時はびっくりしたなぁ。それからは町ですれ違うくらいしか会えなくて全然話せて無かったんだ。ちなみにカトレアは私より2歳上だよ!
「あ〜!やっとちゃんと会えたし話せたわ!元気だった?クッキー持ってきたんだけどチェル好き?ケーキとかの方がやっぱり良かったかな?でも日持ちする方がいいかなって思って!」
「う、うん。そうだね!ちょっと落ち着こう!私は元気だよ!ありがとう!クッキーで十分だよ!持ってこなくても良かったのに。」
「あっ。ごめんね!久しぶりで嬉しくて…!良かった!じゃあはいこれ。家族で食べてね!」
「ありがとう!私も嬉しいよ!カトレアと会えて!今まであんまり会えなかったから。…それでどうしたの?」
「そうだった!今度家で大きなお茶会を開くことになったのよ!隣国からも来るらしいからお屋敷をお花で飾りたいの!あとはお茶会のテーブルに飾る花とかも用意しないといけないんだけどそれをチェルに任せたいの!」
「へぇ〜!そうなんだ!すごい大きなお茶会だね!ってえぇ〜!!?私が!?もっと腕のいい職人さんいるよ!?」
「チェルがいいの!それとチェルもお茶会においで!ドレスとかヘアセットとかも家でやるから!もちろんお父様からは許可得てるわよ。」
「えぇ〜!!?ますます無理だよ!そんな身分が高い人ばかりの大きなお茶会に行くなんて!」
「大丈夫!お願い!チェルしか頼めないの!」
「…!!カトレア!頭あげて!分かったから!貴族が国民に簡単に頭下げちゃダメ!」
「…本当!ありがとうチェル!チェルならそう言ってくれると思ったわ!」
「ずるいよ、カトレア。」
「ん?なんのことかしら?」
カトレアは今すごいいい笑顔で笑っている。
「…はぁ。もう、強引なんだから。で?いつなの?そのお茶会は。」
「一ヶ月後よ!それまでに用意出来るかしら?」
「分かった。一ヶ月後ね!どう言った色彩がいいとか込めたい言葉とかはある?」
「…そうね。基本的にチェルにお任せするわ。でもオレンジとかなら白い壁にも映えるしいいかもしれないわ。」
「なるほどね。了解!準備しとくよ!」
「ありがとう!こっちも準備しておくから楽しみにしてて!」
「そっちは準備しなくていい!」
「ふふふ。じゃあね!」
カトレアは上機嫌に馬車に乗って帰って行った。
「ふ〜!大きな仕事が入ったな!頑張らないと!…念のためマナー学んどいた方がいいかなぁ。いやっでも出席しないし!…でもカトレア強引なんだよね〜。無理矢理出席させられる気がする…。一応、恥かかない程度に学んどこ。」
私はカトレアを見送りながら、頑張ろう!と意気込んだ。…いろんな意味で。
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