3章 波乱の学園祭

第3話

「は〜い!みんな注目!この前の体育祭は無事勝って1位をとることができました!」

「イェーイ!」 「やったね〜!」

「で!次にとるのは、学園祭の最も良かったと思われた出し物に送られるベスト・オブ・フルール賞!そこで!なんの出し物にするかみんな案を出して〜!」

「やっぱり喫茶店とかじゃない?」

「お化け屋敷とかにしようぜ!」

「え〜!怖いのやだ!」


「学園祭だって!何にしようか?」

私は、香としおに聞いた。

「どうでもいい。」

「う〜ん。そうね。去年はみんなが作ったり、使わなくなったものを持ち寄ってバザーみたいにしたのよね〜。今年は調理器具が使えるし、何か作って売るのもいいかも知れないわ。」

「香は興味なさすぎ!…いいねそれ!楽しそう!じゃあどんなのがいいかな〜?コスプレカフェとか?」

「「「「それだ!!!」」」」

「!?えっ?何っ?」

私が何気なく口にすると、みんなが名案だとでも言うように口を揃えて言った。

「それだよ!咲!コスプレカフェ!」

「いい!楽しそう!」

「じゃあコスプレカフェで決定でいい?」

「「「「異議な〜し!!!」」」」

「じゃあ早速準備始めるよ!」

「「「「お〜!!!」」」」

「えっ?えっ?みんなそれでいいの?」

「いいも何も名案だよ!コスプレカフェって事は香花くんの…」

「あぁ、詩音ちゃんの…」

「「「「コスプレ姿が見れるんだよ(ぞ)!!!」」」」

「えっ…?…うん。」

「やっぱり香花様の衣装は執事かな!?」

「いややっぱり王子だよ!」

「詩音様は姫か?」

「いや猫とかもいいんじゃないか!?」

「…。ごめん。香、しお。」

「…はぁ。別に咲のせいじゃないだろ。」

「そうよ。…ただ、もう少し小声だったら嬉しかったんだけどね…。」

「ごめんね…。」

私は、いまだ止まらないクラスメイトの熱に申し訳なさでいっぱいになった。



「そっちの飾りこっちに飾って〜!そのテーブルクロスは一番奥のテーブルね!」

「お〜い!これはどうする?」

「それは看板に使うから、デザイン係の子に持って行って!」

「了解〜!」


「着々と進んでるね〜!」

「咲!衣装出来たよ。まだ仮だから合わせて見てくれる?」

「うわぁ〜!可愛い!しおすごいね!ちょっと着替えてくる!」

私のコスプレは「猫メイド」になった。

「じゃあ〜ん!ご主人様!かまってにゃん!…なんちゃって〜!見てみて〜みんな!しおに髪とかも整えてもらって可愛くしてもらったの!どう?…?どうしたのみんな?」

私は着替えて教室に入るとみんなはビックリしたように固まってしまった。

「…?お〜い?みんな〜?」

「…可愛い。」「咲、なの?」

「…?何言ってるの?どう見ても咲だよ!里中咲良!みんなしっかりして〜!」

(ふふっ。みんなビックリしてるわね。咲は普段あまり身だしなみを気にしないし、元気が取り柄の少しおバカな子で親しみやすいって事で通ってるけど。ほんとは誰もが振り返る美少女なのよね〜。これも少し整えただけなんだけどね。)

「咲。こっち向いて。ちょっと大きかったかな?少し小さくすれば大丈夫そうね。」

「ねぇしお〜!みんながおかしいよ!?どうしたの?」

「大丈夫よ。咲に見惚れてるだけだから。」

「…?それはしおでしょ?」

(でも自分では無自覚なのよね〜。)

「あっ!ねぇねぇペンキ付いてるよ!」

「…ハッ!えっ?」

「ここ!…はい取れた。」

「…〜ッ。」

私がほっぺに付いたペンキを拭き取ると顔を真っ赤にしていた。

「…?熱でもあるの!?保健室行かなきゃ!」

「…大丈夫。熱じゃないから。」

「ほんと?無理しちゃだめだよ?」

(ほんと罪な子ね。)


少し離れたところで香は大きなため息をついた。

(はぁ〜…。だから嫌だったんだ。咲がほんとは可愛いってことが知られちまった。まぁだからと言って譲らねぇけどな。)

内心イライラしつつ、作業をしていると

「香〜!見てみて!衣装可愛いでしょ?しおは器用だよね〜!」

「…あぁ。可愛いな。」

「でしょ〜!しお!香も可愛いって!やったね!」

(…お前がな。っくそ反則だろその格好は!)

香は、右耳をかきながら自分の顔が赤くなってるのを周りに気づかれないようにするのに必死だった。

(あらあら。やっぱりこれは香でも無理ね。ふふふっ。)

でもしおにはあっさり見破られていた。


「さて、お次は〜!このカフェの看板!花宮高校の王子様とお姫様!」

私は衣装を脱いで教室に戻るとちょうど香としおが着替え終わって教室に入ろうとしていたところだった。

ガララッ

「…!!」

「ぎゃあ〜!!!カッコいい〜!!やばい!どうしよう!無理!」

「うお〜!!!美しい!!結婚してくれ〜!!」

「…わぉ。」

香としおが教室に入ると、みんな普段の歓声以上の黄色い歓声が飛び交っていた。

私はその光景に若干引き気味になりながら、香としおの方に向かった。

「うわぁ〜。綺麗!二人とも!なんか新鮮だね!香はいつもよりずっとカッコ良くなってるし!しおはいつもよりずっと綺麗だよ!」

「ありがとう。咲。」

「あぁ。ありがとう。」


「これは話題になること間違いなしだよ!」

「今回は最優秀賞取れるぞ!」

「咲もとんでもない美少女だったし、これはもっと咲も可愛くして全面的に宣伝すれば…!」

「「「「フフフフフ…。」」」」

私たちは後ろでみんなが悪い笑みを浮かべているのに気づかなかった。



「よし!衣装は全部完成したよ!」

「わぁ〜!」 「すご〜い!」

学園祭まであと2日のところで衣装が完成したよ!

教室もオシャレなカフェに仕上がってい来てるんだ!

カフェの名前は「カフェLupinus《ルピナス》」オシャレでしょ?この案を出した子が、

「ルピナスは花なんだけど、その花言葉が『いつも幸せ』って意味を持つ花なんだ!ここに来てくれた人が幸せを感じてくれたらいいなっていう意味を込めてつけたんだけど、どうかな?」

「いい!それいいよ天才だよ!みんなでそういうカフェにしよう!」

「うん!賛成!…みんなもそれでいいって!」

「ありがとう!私もこのクラスで、みんな優しくて、賑やかでいつも幸せを感じてるんだ。このクラスで良かったなって。だからこの花言葉が似合うなって…うわぁ!」

「「「「…!!」」」」

「私たちもだよ〜!」 「なんだよ!泣けるじゃねぇか!」 「私もこのクラスで良かった〜!」 「俺も!こんなにいい奴らと一緒のクラスで良かった!」

みんな感極まってその子にみんな抱きついて、みんな口々にみんなと一緒で良かったって言い合ってた。私もこのクラスで、あったかいクラスで良かったって心の底から思ったな〜。私もみんなのために頑張るよ!

「…で!衣装が完成したところで…。」

ニヤリ

「「「…?」」」

私は、より一層頑張ろうと心に決めた時クラスメイトが怪しげな笑みを浮かべて私たちを見た。

「咲!香花くん!詩音ちゃん!早速着替えて!」

「えっ?なんで?前合わせたでしょ?」

「いいから着替えて!」

私たちはみんなに押されて、しぶしぶ着替えた。

「どうしたの?着替えさせて…カメラ?」

私たちが着替えて戻ると、カメラを持って待っていた。

「…!!!ゔっ!3人揃うと破壊力が!!」

(…?何にやられてるの?)

待っていたクラスメイトが私たちをみて崩れ落ちた。

「…はぁ。…はぁ。…まぁそれは置いといて…。」

「えっ!?そこまでみんな倒れてるのに置いとくの!?」

「あぁ。大丈夫!病気とか体調が悪いわけじゃないから!」

「そう、なの…?」

「うん!むしろ良くなった!…とりあえず咲!こっち向いて!…パシャ!」

「えっ?」

「次は香花くん!」パシャ!

「なっ!」

「次詩音ちゃん!」パシャ!

「ん?」

「最後はみんな並んで〜!…パシャ!」

「なっ何?急に。」

「説明してくれ。」

「急に始まったわね〜。」

「ごめんごめん!宣伝のチラシに写真を載せたいんだ!それで3人の写真を使わせて貰っていいかな?」

「それならいいよ!」

「先に説明してくれ。ビックリするから。」

「私もいいわよ。」

「ありがとう!…ごめん早く撮りたくてつい。」

「じゃあ、もうちょっと撮ってくね!」

…パシャ! …パシャ! …パシャ!

「…うん!OK!いい感じだよ!」

「「「・・・。やっと終わった…。」」」

それから何十枚も撮られて、終わった頃には私たちはヘトヘトだった。

「…これは売れるんじゃないか?」

写真を見ていたクラスメイトがポツリと言った。

「うん!どれもいい写真だし、ボツにするのはもったいない!」

「…って事で、いいかな!?」

みんなの目がものすごくキラキラしていた。

「別にいいけど、香やしおは売れても私のは売れないよ?」

「大丈夫!絶対売れる!」

「…はぁ。学校内のやつだけにしろよ。」

「もちろん!校外にも出さないようにするよ!」

「校外に出さないようにって?」

「買う時に誓約書を書いて貰って、破ったら先生から処罰してもらえるようにするよ。」

「なるほどね。ならいいわ。」

「ありがとう!!」

(((みんなの熱量が怖い…。)))

みんなの勢いにため息が出る3人だった。



学園祭当日。

2日間開催される学園祭で、私たちのクラスは初日から大盛況だった。

「お待たせしました。ご主人様。サンドイッチセットでございますにゃ。ゆっくりお過ごし下さいにゃん!」

「…か、可愛い!あれが咲だなんて!」

「あんなに可愛かったのか!?あの二人にも劣らない可愛さだぞ!くそっ!もっと早く気づいていれば…!」


「コーヒーセットでございます。熱いのでお気をつけてお飲みください。姫。」

「…ぎゃあ〜!!やばい!!えっどうしよう明日死ぬのかな!?」

「…あんなイケメンに姫扱い。…最高!!」


「ホットドックセットでございます。殿下。ごゆるりとお過ごし下さい。」

「…おい。殿下呼びだぞ。詩音ちゃんが姫で、俺が王子なら婚約者じゃねぇか!」

「何言ってんだよ!お前なんか選ばれねぇよ!…ていうかマジで詩音様だ。」


「やっぱり盛況ね!」

「そりゃそうだろ。なんてったってあの三人のコスプレだぞ?見たいに決まってるだろ!」

「それにしっかり宣伝したからね!先輩後輩関わらずみんな来るはずだもん!もっと忙しくなるよ!」

「えぇ!今でもこんなに忙しいのに〜。」

「次の交代まで頑張って!…これ4番テーブルね〜。」

「それにあのとっておきがあるしね…。」

ニヤリ。

咲達が接客している裏でクラスメイト達が忙しなく動いていた。そして入り口からの声を聞きながら不敵な笑みを浮かべていた。


「はーい!みなさん注目!これを聞き逃したら絶対後悔するからよ〜く聞いてね?なんと2年2組のコスプレ写真を販売してるぞ!密かに気になってるあの子のコスプレ写真が欲しいならここでしか手に入らないよ〜?…も、ち、ろ、ん。あの三人の写真もね?」

「「「「…なんだって〜!!!???」」」」

「詩音ちゃんのコスプレ写真くれ!」

「私は香花先輩の!」

「俺は咲の!」

「三人ともの写真を!」

「はーい!押さないで押さないで!購入する前にサインしてね〜?学校外の生徒に渡したりしないように!」


「なんか凄い賑わってるね?中もだけど特に入り口が。」

「…あぁ。そうだろうな。」

「咲が可愛い猫メイドをやってるんだもの。誰だって欲しいわ。」

「えっ?それで賑わってるの?私じゃないと思うよ?…ほら!香としおの写真だって!やっぱり二人の人気は凄いね!」

(…はぁ。確かに目立って聞こえるのは私たちだけど、みんな咲の写真買ってるのよ?私は男子生徒に多いし、香は女子生徒に多いけど、咲は両方だしね。…ほら、みんな私か香と一緒に咲の写真を買ってる。一番人気なのは咲なのに。)

自分の魅力に全く気づいてないとため息を吐くしおの一方で、

(…ちっ。みんな咲のことジロジロ見過ぎだろ。咲は全然好意の視線に気づかないわ、自分が可愛いってことに自覚がないわ。もうちょっと気にしろよ!)

香は内心イライラしていた。特に咲の自覚のなさに。


「お疲れ様〜!三人とも!交代だよ〜!」

「えっもうそんな時間?あっという間だね!」

「忙しかったからね。時間が過ぎるのが早く感じたんじゃない?」

しおがテーブルを片付けながら言った。

「そっか!確かに忙しかったもんね〜!…じゃぁさっそく他のクラス回ろ〜!」

「…ちょっと待て!その格好でいっ「きゃ〜!可愛い〜!」たら…。」

「遅かったわね。香。」

「…。はぁ…。」

香は、咲が着替えずに飛び出して行こうとしたのを止めようとしたが間に合わずみんなに囲まれてしまった。

「えっ!?何?急に人が!す、進めない!」

「こっちこい。」

「…えっ?誰?」

私は引っ張られて人気のないところまで連れて行かれた。

「はぁ。全くもう。その格好は目立つからこれ着ろ。」

「香!しお!」

その人はフード付きのマントを羽織った香としおだった。

「俺らってことが分からなかったのか?…お前な。誰かわからない人にのこのこついていってどうする!小学生でも分かるぞ!」

「えへ!フードで見えなくて。大丈夫だよ。ついて行かないし、いざとなったら倒せるし!」

「男と女じゃ体格も力も全然違うんだぞ!とにかく気をつけろ!」

「そうよ咲!危ないことはしちゃダメ!もし怪我したらどうするの!」

「…ごめんなさい。気をつける。」

「分かればいいの。咲に何かあったら心配だからつい叱っちゃったけど、そんな落ち込まないで。…ほらこのマント着て衣装隠しなさい。」

「うん。ありがとうしお。心配してくれてありがとう。香も。」

「あぁ。俺もつい強く言っちゃって悪かったな。…じゃあ行くぞ。どこに行くんだ?」

「うん!…え〜っとね、たこ焼き!」

私は二人の優しさが嬉しくて、二人に抱きついて目的地に向かった。


「ん〜!美味しい!たこ焼きにクレープに綿菓子!最高!!」

「ご機嫌だな。…まだ食べるのか?」

「だって楽しいんだもん!まだいけるよ!次はアイス〜♪」

私はルンルンとスキップしながら言った。

「元気ね〜。私はバニラアイスにしようかしら。香はどうする?」

「そうだな。抹茶にする。」

「香もしおも食べるの?了解!私はイチゴ〜♪」

「昔から変わらないな。」

「だって美味しいだもん。香もでしょ?」

「まぁそうだな。」

「でしょ〜!…あっすいませ〜ん!バニラアイスと抹茶アイスとイチゴアイスお願いしま〜す。」

私たちがアイスを食べ終わると、

「あっいた!三人ともちょっとお願いが…!」

生徒会の人が私たちに話しかけてきた。

「何?どうしたの?」

「コンテストに出て欲しいの!」

「コンテスト?」

花咲高校では、学園祭で美男美女を決めるコンテスト「ジャスミンショー」やファッションコンテスト「ラナンキュラスショー」がある。「ジャスミンショー」はジャスミンの「愛らしさ」と「優美」という花言葉から、この二つに当てはまる美男美女を決めるということでジャスミンがコンテストの名前になっており、「ラナンキュラスショー」は、ラナンキュラスの「とても魅力的」と「晴れやかな魅力」という花言葉から作られた魅力あふれる服とそれを着こなす晴れやかな魅力を持った生徒を決めることからラナンキュラスがファッションショーの名前になっている。それぞれの優勝者にはその花のモチーフがデザインされたアクセサリーが贈られ、その年ジャスミンとラナンキュラスと呼ばれる。

「どうして私たちが?」

「一度断ったはずだが?」

香としおは、コンテストに出場して欲しいという依頼を一度断っていた。

「それが…出るはずだった子が出られなくなっちゃって、人数が足りないの!だから本当に悪いんだけど両方のコンテストに出てくれない!?」

「悪いけど、断わ「分かった!いいよ!」るっておい!」

私は香の言葉を遮って言った。

「だって困ってるのに助けてあげなきゃ!それに二人のファッションショーみたい!」

「…!ありがとう!本当に助かる!」

「仕方ないわね。…でも分かってる?咲も出るのよ?」

しおが仕方ないとため息をついていった。

「…えっ?香としおだけじゃないの?」

「私たち三人、、に頼んできたのよ?ねえ?」

「そうだよ?咲もお願いね!」

「えっ?私美女じゃないから無理だよ!コンテストに出る資格ないよ?」

「十分あるわ。咲が言ったんだから一緒に出るわよ。香も来なさいよ?」

しおは、有無を言わさず会場に咲を連れて行った。

「はぁ…。まためんどくさいこと引き受けて…。それに全校生徒に咲が見られるじゃないか。」

これから起こる嫌なことにため息をはく香だった。

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