第4章 第1話: 「美少女が恋した瞬間」
市場に到着すると、周囲の喧騒が一層大きくなり、私たちはすぐに異常事態に気づいた。人々が騒ぎ、道を開けるように逃げ惑っている。何かが追われている――その時、私の目に飛び込んできたのは、金髪が風に舞う姿だった。
「何か……追われているわ!」
私は驚き、鎮光(しげみつ)とお怜(おりょう)に声をかけた。
黒装束の男たちに追われるその姿は、何と驚くほど美しい金髪碧眼の美少女だった。彼女の髪は太陽に輝く黄金色で、澄んだ碧眼が際立つ異国風の顔立ち。華やかな装飾が施された白いドレスを身にまとい、必死に馬を駆けている。市場の喧騒の中でも、その美貌はひと際目立っていた。
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「鎮光、早く助けなさい!」
私は焦りながら、鎮光に指示を出す。鎮光は冷静なまま、周囲の状況を確認しつつ、ゆっくりと剣に手をかけた。
「姫様、この無礼者ども、跳ねときますか?」
物騒な言葉がいつも通り鎮光の口から出る。私はいつものように慌ててそれを止める。
「跳ねなくていいわ!追い払うだけで十分よ!」
鎮光は淡々とした表情で頷くと、一瞬で黒装束の男たちに向かって突進。まるで風のような動きで彼らを圧倒し、見事な剣さばきで追い詰めていく。男たちは鎮光の圧倒的な力に恐れをなして、慌てて市場の端へ逃げ去っていった。
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その瞬間、市場の騒ぎは一時的に収まり、静寂が訪れる。馬を止めた美少女がゆっくりと馬から降りて、私たちの方へ歩み寄ってくる。その目は鎮光に釘付けだ。
「アナタ……ホントニ、スゴイ……」
彼女は感謝と憧れが入り混じった表情で、鎮光を見上げている。その碧眼は輝き、頬はうっすらと紅潮している。
「ア、アリガトウ……私ノ命ヲ救ッテクレテ……」
美少女は彼に近づくと、そのまま躊躇することなく、鎮光のほっぺたに軽くキスをした。
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「え……!」
私は目を見開き、思わず立ちすくんだ。お怜も驚いた様子で私を見ている。鎮光はというと、無表情のまま、ほっぺたに手を当てている。キスされたことに対して、何も反応を見せず、ただいつも通り冷静だ。
しかし、私は心の中が嵐のようにかき乱されていた。何この展開!?鎮光に……私の鎮光に、こんな美少女が大胆にキスを!?私は胸の中に嫉妬と動揺が渦巻くのを感じた。
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「ちょっと……何するのよ!?」
私は思わず声を上げてしまった。自分でも驚くほど感情的な声が出てしまい、周りの人々が振り返るほどだった。
「オ姫様……アナタノ侍、トテモツヨイデスネ……ワタシ、感謝シマス……」
美少女は私の言葉には気づかないかのように、にっこりと笑顔を浮かべて再び鎮光を見つめている。その甘い視線に私はさらにイライラを募らせた。
「……ふんっ!なんで私がこんな気持ちに……!」
私は内心で叫び、思わず足を踏み鳴らす。なんだか自分でもよく分からないけど、鎮光が誰かにこんなに感謝される姿を見るのがどうにも悔しい気がする。だって、彼は私の護衛なんだから!
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鎮光は相変わらず無表情で、美少女の行動に全く反応を示さない。それがまた私をイライラさせる。私がこんなにも動揺しているのに、鎮光は全く意に介さないのだ。
「これから……大変なことになりそうね……」
私は小さくつぶやきながら、美少女と鎮光の間に流れる妙な空気を感じ取っていた。
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