第3章 第4話: 「綺麗になれる薬、その真実は?」

市場を歩いていた私とお怜(おりょう)は、いつものように甚兵衛(じんべえ)の露店の前で足を止めた。後ろには、いつも護衛として私たちを守る鎮光(しげみつ)が無言で控えている。今日も甚兵衛の大げさな宣伝が市場中に響き渡っていた。


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「今日はこれだ!これを飲めば、誰もが美しくなる!肌は輝き、髪はつややかになり、まるで別人のような美しさを手に入れることができる!」

甚兵衛が手にしていたのは、小さな瓶だった。


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「また怪しい薬を売っているわね……でも、綺麗になれるって聞いたら少し興味があるわ。」

私はお怜に笑いかけながら、甚兵衛の言葉に耳を傾けた。


「お姫ちん、ちょっと試してみてもいいんじゃない?もし本当に綺麗になれるなら、お得だし!」

お怜がからかうように言い、私も少し興味が湧いてきた。


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「本当に効果があるの?」

私は甚兵衛に尋ねた。


「もちろんさ!この薬を飲めば、すぐに肌はつややかになり、誰もが羨む美しさを手に入れることができるんだ!」

甚兵衛は自信満々で瓶を差し出してきた。


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「鎮光、どう思う?」

私は冷静な鎮光に目を向けて聞いた。


「効果があるなら、それなりのリスクも考えられます。慎重に試すべきです。」

鎮光は淡々とした声で私に助言したが、私は興味に負けて、瓶を受け取ることにした。


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「少しだけ飲んでみるわ。」

私は瓶のふたを開けて、一滴だけ口に含んだ。


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最初は何も感じなかったが、しばらくすると、急に顔が熱くなり、ふらふらと立っているのが難しくなった。


「な、なんだか……体が……おかしい……。」

私は驚きながら、ろれつが回らなくなっていくのを感じた。


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「お姫ちん、大丈夫!?顔がすごく赤くなってるよ!」

お怜が心配そうに駆け寄ってきた。


私は立っていられなくなり、千鳥足でふらつきながら「ま、まずい……毒かもしれない……!」と叫んだ。


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「これ、やばいんじゃない?顔も真っ赤だし、千鳥足だよ!」

お怜も大慌てで、私を支えようとする。私は目がかすみ、頭がぼーっとしてきた。


「こ、これは……どうしよう……本当に毒……?」

私はますます不安になり、大声で叫んでしまった。


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鎮光が一歩前に出て、私から瓶を受け取ると、慎重に中身を確認した。彼は瓶の中を嗅ぎ、少し液体を手に垂らし、慎重に舐めてみた。


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「これは……ただの強い酒ですね。」

鎮光は冷静に言い放った。


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「えっ!?酒……?」

私は驚きながら彼を見つめた。


「どうやら、この薬はただの酒のようです。強い酒のせいで体が反応しているだけです。」

鎮光は淡々と説明し、私はそれを聞いて顔が真っ赤になったまま、ますます混乱してしまった。


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「な、なにこれ!ただの酒だったの!?綺麗になる薬じゃなくて!」

お怜が大笑いし始め、私もようやく事態を理解して笑いが込み上げてきた。


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「綺麗になれるって、ただ酔っぱらって赤くなってただけじゃない!」

私は笑いながら、千鳥足の自分を支えようと必死になった。


「まさか、こんなことになるなんて……。」

私は自分でも呆れながら、鎮光の冷静な表情を見てさらに笑ってしまった。


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「やはり、確認して正解でしたね。」

鎮光は冷静に言い放ち、私たちはさらに大笑いした。


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「もう……甚兵衛、またやられたわね。でも、面白かったからいいわ。」

私はふらふらしながらも笑い、鎮光に支えられてその場を後にした。

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