第3章 第3話: 「鎮光の静かな忠告と再びの出会い」

市場を訪れる度に奇妙な商品を売る甚兵衛(じんべえ)に惹かれ、私はお怜(おりょう)と再び市場に足を運んでいた。鎮光(しげみつ)はいつものように、何も言わず私たちの護衛をしてくれている。


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「お姫ちん、今日も甚兵衛のところに行くの?」

お怜が興味深そうに聞いてくる。


「そうね、あの商人がどんな商品を売っているのか気になるわ。」

私は微笑みながら答え、彼の露店を探す。少し歩くと、あの賑やかな声が聞こえてきた。


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「さあ、見ていってくれ!奇跡の商品が揃ってるぞ!今日はとっておきの秘宝だ!」

甚兵衛は元気いっぱいに商品を売り込んでいた。


「また始まったわね……。」

私はお怜と顔を見合わせ、彼の露店へと近づいていった。鎮光は、私たちのすぐ後ろに控えている。


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「お嬢さんたち、今日もいいものがあるぞ!」

甚兵衛が声をかけ、豪華な装飾が施された壺を誇らしげに見せてきた。


「その壺、何かすごいものが入っているの?」

私は壺を指差しながら尋ねた。


「そうだ!この壺には霊薬が入っていて、飲めば健康が約束され、さらに家に飾れば幸運が舞い込んでくると言われている!」

甚兵衛は自信満々で壺を掲げ、説明を続けた。


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「またそんな話……。」

お怜が笑いをこらえながら呟く。私も半信半疑で壺を見つめた。


その時、鎮光が静かに一歩前に出て、壺にじっと目を向けた。彼はいつもながら冷静で、何かを感じ取るかのように見つめている。


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「中身を確認すべきでしょう。」

鎮光は静かに言った。


「そうね、今回は慎重にいきましょう。」

私は鎮光の冷静な提案に従い、壺のふたを開けることにした。お怜も興味津々で見守っている。


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ゆっくりと壺のふたを開けると、中には透明な液体が入った瓶がひとつ見えた。


「これが霊薬なのね……。」

私はその瓶を取り出し、光にかざして中身を確かめた。見た目はただの水のようにしか見えない。


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「試してみる?」

お怜がからかうように笑いながら言う。


「鎮光、どう思う?試してみるべきかしら?」

私は鎮光に意見を求めた。


「危険な可能性もあるので、少量だけ試すのが賢明でしょう。」

鎮光は変わらず冷静に答える。その言葉に従い、私は瓶をそっと傾け、一滴だけ手に垂らしてみた。


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液体はさらさらと流れ、何も変わった反応はない。ただの水のようにしか感じられない。


「何も起こらないわね……。」

私は手を見つめながら、少しがっかりした。


「ただの水なんじゃない?」

お怜が笑いながら言うと、私も思わず苦笑いを浮かべた。


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「鎮光、どう思う?本当に霊薬なのかしら?」

私は再び鎮光に目を向けた。


「その可能性は低いですが、しばらく様子を見た方が良いでしょう。」

鎮光はいつも通り冷静に答える。彼の慎重な姿勢に、私は少し安心した。


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「まぁ、どうなるかは後でわかるわね。」

私は瓶を壺の中に戻し、ふたを閉めた。


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「さあ、次は本当に幸運が訪れるはずだ!」

甚兵衛はなおも自信満々で送り出してくれたが、私たちはもう何も期待していなかった。


「今回は面白かったからいいけど、次はもっと気をつけないとね。」

お怜が笑いながら言い、私も頷いた。


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「鎮光、ありがとう。やっぱりあなたが一緒だと安心するわ。」

私は微笑んで彼に言うと、鎮光は無表情のまま軽く頷いた。


「それが私の役目です。」

鎮光は静かに答え、再び私たちの後ろを守るように歩き出した。

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