第1章 第9話: 「不穏な動き」

盗賊たちが再び町に現れたという知らせが届いた時、私はやはり彼らがただ引き下がったわけではないことを確信した。あの日、あっさりと退いたのは彼らの計画の一部だったのだ。


「お姫ちん、あいつら本当に戻ってきたよ!」

お怜が私の元に駆け込んできた。彼女の顔にはいつもの明るさが少しだけ消え、不安が漂っている。


「やっぱり……でも今回は前とは違うはず。彼らの狙いを掴んで、私たちが先手を打つわ。」

私は気を引き締め、これまでに集めた情報を思い出した。彼らは何かを探している──そして、その鍵を握るのは、あの「目立たない男」だった。


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鎮光が調べたところ、あの目立たない男は盗賊団のリーダーではなかったが、背後で大きな役割を担っていたことがわかった。彼は常に盗賊団の中で動きを指示し、町を探るような行動をしていた。


「姫様、あの者はただの盗賊ではありません。彼は何かを探していました。そして、その目的がまだ判明していません。」

鎮光は冷静に報告してくれたが、その目は普段以上に警戒していた。


「じゃあ、その男を追えば何かわかるかもしれないわね。」

私はその人物に狙いを定め、何とかその動きを見つける方法を考え始めた。


「お姫ちん、あたし、ひとつ気づいたことがあるよ。」

お怜が急に真剣な顔をして口を開いた。


「何かしら?」

彼女の言葉に耳を傾けると、彼女は少し戸惑ったように口を開く。


「なんか、あいつらの動きがさ、妙に同じところを回ってるような気がするんだよね。まるで、何かを探してるんじゃなくて、誰かに何かを見せてるみたいな……」

お怜の言葉に私はハッとした。確かに、彼らの行動は何かを探しているというより、何かを確認するような動きに見えた。


「誰かに見せてる……?まさか、彼らの背後にもっと大きな存在が?」

私はその可能性を思い描いた。盗賊たちの動きが単なる略奪ではなく、何か計画されたものだとすれば、それを指示している者がいるのかもしれない。


「姫様、私もそのように感じます。あの目立たない男はただの手駒に過ぎない。もっと大きな力が彼らを操っているのでしょう。」

鎮光もまた同じ考えに至ったようで、彼の無表情の奥にはいつも以上の緊張感が見えた。


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その時、再び町に盗賊たちの姿が現れた。彼らはまるで以前の行動を繰り返すかのように、同じ場所をうろついている。お怜の言った通り、何かを探しているようには見えない。


「何かを確認している……」

私は静かにそう呟きながら、あの目立たない男を目で追った。彼の行動を注視していると、突然、彼が一人の町人に接触しているのが見えた。町人は怯えた様子で何かを手渡している。


「鎮光、あの男を追って!」

私はすぐに指示を出し、鎮光が素早くその男を追いかけた。


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鎮光が男に追いつき、彼を問い詰めると、驚くべきことが判明した。彼らは、この町に隠された古い財宝を探していたのだ。しかし、それを指示していたのは盗賊団ではなく、町の有力者の一人だった。彼らは財宝の存在を知り、それを手に入れるために盗賊たちを利用していたのだ。


「つまり、盗賊たちはただの駒に過ぎなかったのね……!」

私は事の真相を聞き、すべてのピースがはまった瞬間を感じた。これで、彼らが何を狙っていたのかが明らかになった。そして、その財宝を見つけることができれば、町を守ることができるはずだ。


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「お姫ちん、すごいじゃん!これであたしたち、完全勝利だね!」

お怜が笑顔で私に話しかける。私は頷きながらも、最後の詰めがまだ残っていることを感じていた。


「そうね、でもまだ気を抜いちゃだめよ。もう一度、あの目立たない男を確認しなきゃ。」

私は静かにそう言い、次なる行動に備えた。

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