第1章 第6話: 「盗賊の正体?」
盗賊たちがあっさりと引き下がった瞬間、私は少し安堵したものの、同時に強い違和感を感じていた。交渉がうまくいったとは思えないのに、あまりにも簡単に退いてしまった。そのことが頭から離れない。
「お姫ちん、あいつら本当に引き下がったね。マジでお姫ちんの説得が効いたのかもよ?」
お怜はいつものように楽観的に話しかけてきた。けれど、私はそう思えなかった。
「でも、何かがおかしいわ。あんなに簡単に引き下がるなんて、何か別の理由がある気がするの。」
お怜の明るい声が逆に不安を強める。盗賊たちがどこかで新しい計画を練っているような、そんな感覚が消えないのだ。
鎮光も鋭い目つきでその場を見回している。彼の目には警戒の色が浮かんでいた。
「姫様、あの者たちがそう簡単に引き下がるとは思えません。何か別の目的があったのかもしれません。」
鎮光の言葉に、私も頷いた。彼が言う通り、ただの撤退ではないような気がする。私の交渉が決定打になったわけではなく、彼らには他の意図があったのではないかと。
「確かに……彼らは私たちが想像している以上に、何か大きなものを狙っているのかもしれないわ。」
私はそう言いながら、頭の中で次の行動を考えていた。このまま静観しているわけにはいかない。彼らが戻ってくる前に、その理由を突き止める必要がある。
「お姫ちん、考えすぎじゃない?まぁ、あたしも変だなとは思ったけど、あんなやつら怖がることないって!」
お怜はいつも通り、明るく私を励ましてくれる。彼女の言葉に少し救われた気持ちになりながらも、私は慎重でいなければならないという思いを強くしていた。
「鎮光、彼らの動向を探ってくれる?」
私はすぐに鎮光に頼んだ。彼ならきっと、盗賊たちの次の動きを見つけ出してくれるはずだ。
「承知いたしました、姫様。すぐに調査を開始いたします。」
鎮光は一礼し、すぐに動き出そうとしたが、何かに気づいたかのように立ち止まった。
「鎮光、どうしたの?」
私は彼に尋ねた。彼は無表情を保ちながらも、どこか鋭い視線を向けていた。
「姫様、あの者たちの中に一人、他の盗賊たちとは違う動きをしていた者がいました。おそらく、彼が何かを握っているかと。」
鎮光の言葉に私は驚いた。確かに、盗賊の中には目立たない動きをしている者がいたように思える。彼が何か重要な役割を担っていた可能性がある。
「その者が何かを知っているのね……鎮光、その人物の動向を重点的に調べてちょうだい。」
私の指示に、鎮光は再び深々と頷き、行動を開始した。
「お姫ちん、マジで気合入ってるね。でもさ、鎮光に任せておけば大丈夫っしょ?」
お怜はいつもの調子で軽く言ったが、その言葉に少し救われた。彼女の楽観的な態度は、時々私の不安を和らげてくれる。
「そうね、鎮光がいれば何とかなるわ。でも、私たちも情報を集めに行かないといけない。次に何が起こるかわからないもの。」
私は気を引き締め、盗賊たちが再び現れる前に、彼らの目的を突き止めることを決意した。
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