第1章 第4話: 「無礼討ちの鎮光」

私は盗賊たちの前に立ち、内心でどうすればこの状況を解決できるかを考えていた。目の前には、町の人々を困らせる盗賊たちが笑いながらこちらを見ている。今ここで逃げ出すわけにはいかない。私が出てきたのは、町民たちを守るためなのだ。だが、鎮光は相変わらず「無礼者どもの首を跳ねる」と言い続け、剣に手をかけている。


「姫様、もうこれ以上無礼を許すことはできません。この無礼者どもの首を跳ねさせていただきます。」


またその台詞。私は焦りながらも彼を止めることにした。今、鎮光が動けば、確かに盗賊たちをすぐに倒せるかもしれない。でも、ここは暴力で解決する場ではない。私は彼に冷静になるように伝えるべきだった。


「鎮光、待って。首を跳ねる必要はないわ。落ち着いて、私に任せて。」

私は彼の腕をしっかりと握り、剣を抜かないように制止した。鎮光は少しだけ戸惑った表情を見せたが、すぐに無表情に戻り、私を見つめた。


「姫様……わかりました。ですが、何かあればすぐに対処いたします。」

彼の言葉に私は頷き、次の行動を考えた。暴力以外の解決策……どうすれば、この盗賊たちを止められるのか。


その時、ふと思い出したのは、お怜が常日頃から話していた「人の油断を突く」こと。お怜は町のことをよく知っているし、こういったトラブルには慣れているはずだ。私は彼女に助けを求めることにした。


「お怜、何か良い策はないかしら?」

私は盗賊たちに見られないように小声で尋ねた。お怜は私の隣でにやりと笑い、軽い調子で答えた。


「お姫ちん、マジで考えてんの?じゃあさ、あいつらをちょっと騙して、逆に使っちゃおうよ。」

「どういうこと?」

「いい?あいつら、バカだから、ちょっとおだてれば調子に乗るよ。その隙に、町の人たちを助ける手を打てばいいのさ。」

お怜の言葉に私は少しだけ考えたが、彼女の言うことに一理ある。盗賊たちを正面から倒す必要はない。むしろ、彼らを利用して、町の人々を守ることができるかもしれない。


「わかった。試してみるわ。」

私は覚悟を決め、盗賊たちに向き直った。彼らはまだこちらを笑いながら見ているが、私の顔つきが変わったことに気づいていないようだ。


「ねえ、あなたたち。」

私は柔らかい声で呼びかけた。盗賊たちは一瞬戸惑ったようだが、すぐに嘲笑しながら応えた。


「なんだ、お嬢様?まだ俺たちに逆らうつもりか?」


「いいえ。逆らうなんてしないわ。むしろ、あなたたちの力を借りたいの。」

私は彼らの興味を引くために、少し微笑んでみせた。


「力を借りるだって?お嬢様、冗談は顔だけにしとけよ!」

リーダー格の男が再び嘲笑を浮かべる。けれど、私はさらに話を続けた。


「ええ、私の身の安全のためにも、あなたたちが必要だわ。だから、ここで騒ぎを起こさず、私の指示に従ってくれないかしら?」

私はわざと穏やかな調子で話し、彼らを油断させる。そして、その間にお怜が町の人々に声をかけ、逃げる準備を整えてくれていた。


盗賊たちは一瞬、私の言葉に戸惑いを見せたが、私の優しい声色に調子に乗り始めたようだった。


「ふん、まあお嬢様がそこまで言うなら、少しは協力してやってもいいぜ。」

リーダーはそう言いながら、しばらくの間、攻撃を控える様子を見せた。その瞬間、私は内心でガッツポーズをした。


これで時間が稼げる。この間に町民たちを安全な場所へ避難させれば、私たちの役目は果たせるはずだ。


「ありがとう、あなたたちがいてくれると助かるわ。」

私はそう言いながら、視線をお怜に送った。彼女は軽く頷き、すでに町民たちがこっそり避難を始めていることを知らせてくれた。


「姫様、今です。」

鎮光も小声で私に合図を送る。今こそ、彼の剣の出番かもしれない。しかし、その前にもう少しだけ時間を稼ぎ、町民たちが無事に逃げられることを確認したい。


私はさらに盗賊たちと話を続け、時間を引き延ばした。これで、彼らを完全に油断させることができれば、無事に解決できるかもしれない。

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