第9話 メンバー募集 契約金前払い

 リゼッタが連れてきたメンバー、魔術師と剣士だけ。少なすぎるだろう、と思いながらも尋ねてみた。


「他にメンバーは集まらなかったのか?」


 リゼッタは申し訳なさそうに答えた。


「報酬金が少なすぎるって言われたのよ。」


「これで少ないのか。相場がわからん…」


 魔術師が1人いれば何とかなるだろうと思っていたが、その魔術師、マリア・カーネストアレンは見た目が奇抜だった。高い帽子をかぶり、白と黒の長袖のローブ、そして短いスカートに白いブーツ、さらに白い魔法の杖を持っている。見た目は完全に白魔導士だが、本当に魔法を使えるのかどうか疑わしい。


 とりあえず、一人ひとり自己紹介をさせることにした。


「魔術師、マリア・カーネストアレン。職業は、魔道士。以上」


 …簡潔すぎる。次に剣士が口を開く。


「剣士、アレイスターマスカレン。よろしく頼む」


 リゼッタにひそひそと耳打ちする。


「おい、本当にこれで大丈夫なのか? 俺は魔道士を集めろって言ったのになんで剣士がいるんだ?」


 リゼッタは少し困った顔で答える。


「どうしてもついてきたのよ。報酬いらないって言うし、ちょうどいいかなって。けど、魔術師の方は報酬が高額じゃないとダメだって言うから」


「なんてこった…これじゃ破産する。会社が潰れてしまう」


 俺はマリアに少しでも報酬を下げてもらえないか頼んだ。


「魔術師の方、もう少し報酬のランクを下げていただけるとありがたいんですけども」


「いやよ。これ以上は下げられない。契約金も少ないし、もう出て行こうかしら」


 マリアはそう言い残して、一人でさっさと去っていった。


「私も…」と言って剣士のアレイスターマスカレンも去っていく。


「なんてこった。もう一度やり直しだな。今度はちゃんとしたやつを集めてきてくれ」


 リゼッタは苦笑しながら、再びメンバー探しの旅に出た。


 ―やばいぞっ、破産する!!助けてくれ兵士たち!



 このままでは、まずい契約金を支払ってしまった。金がなくなりそうだ。あいつらは計画金&手数料として、それを持っていってしまった。あの2人は、もう契約を切ろう、それがいい。


 リゼッタが次に連れてきたのは、1人の魔術師だった。彼女は白い髪で、少しおどおどした様子。しかし、その服装から魔法使いであることは一目でわかる。茶色のコートに白いシャツ、青いストールを巻き、チェックのスカートに黒いブーツを履いている。


「アリーシャ・イブ・ノーマスといいます。よろしくお願いします。職業は魔道士です」


 彼女は丁寧にペコリとお辞儀をした。聞けば、契約金はこれで問題ないと言う。さらには住む場所と食事さえ与えてくれれば、それで十分だとのこと。


「住める場所は…最下層ならあるが…」俺は少し考えた。食事は勝手に取ってもらいたいが、さすがにそれでは厳しいかもしれない。


「食事は手配することにしよう。住む場所は最下層だが、問題ないか?」


「えっ?」という2人の声が重なった。


 ―しまった! ど、どうする、兵士たち?


「最下層、行きたいなーなんて?」


「ですよねー」


「うんうん」

 ―俺のダンジョンビジネスが本格的に動き出す時が来た。リゼッタとアリーシャが加わり、俺たちは即席ダンジョンマップを作ることになった。だが、俺には一つ大きな秘密がある。それは俺がこのダンジョンの主であり、特別なスキル「ダンジョンマップ」を使って、安全な道を知っているということだ。これがバレてしまうと、俺がダンジョンの主であることが露見してしまう。それは避けたい。


「…あんた、何か隠してるでしょ?名前も言わないし。」


 リゼッタがじっと俺を見つめる。アリーシャも同じく不審そうな顔だ。


「仕方ない、自己紹介をしようか。名前は刈谷雅人かりやまさと、35歳。独身。好きなものは枝豆とビール、それに…女だ。元会社員で、今はこのダンジョンの主だ。そうだ、俺はここから出られないんだ。この指輪のせいでな」


「35歳!?それにしては若く見えるわよ…」


「おっさんのくせに怪しいです。何かおかしい。」


 そうだろうな。俺がダンジョンの主であることを打ち明けたのは、少し早かったかもしれない。だが、今はもう隠しても無駄だ。彼女たちを最下層に案内し、全てを明かすことにした。


「では、最下層に案内する。ついてこい。だが、この道は俺のスキル『ダンジョンマップ』でしかわからない。安全なルートを進むから、安心しろ」


 俺はダンジョンの壁を軽く叩き、凹んでいる場所を押し込む。そこには隠し通路が現れた。

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