第8話 ビジネス始動。即席ダンジョンマップ

 次の取引は、安全なダンジョンの通路マップを売ることに決めた。俺が作成したこのマップを使えば、冒険者たちはモンスターに襲われることなく進み、トラップも回避できる。これこそまさにWin-Winの関係だ。ただし、ダンジョンは時折変化するため、このマップは一度きりの使用となる。


 リゼッタにはこの限定の特別価格で売り込んで、彼女との信頼関係も強化していく。このマップを売ることで俺は金を得て、彼女との絆も深めていける。良い考えだ。そして次に何を売るべきかを考え始める。


 冒険者が求めるのはお宝や大金、一攫千金を狙う夢だ。功績を売るという手もあるが、もっと魅力的なものを提供できればさらに良い。例えば、宝物部屋への案内なんてのも考えたが、ダンジョンが入れ替わることを考えると、実現は難しい。


 そこで、薬草売買や鉱石売買が手っ取り早いかもしれない。だが、俺にはその価値がわからないので、交渉はリゼッタに任せるのが賢明だ。彼女はかなり腕が立つ。将来的にハーレムの一員としてもふさわしいかもしれないが、それは別の話だ。


「ビジネスの始まりだ。これで俺は富を手にすることができる。つまり、地上最強だ」と、自分に言い聞かせる。


 リゼッタが戻ってきた。「今の相場では、薬草が少ないわね」


 そうか、薬草を大量に仕入れて売りさばくのが賢明だろう。安く手に入れて高く売る。それがビジネスの基本だ。冒険者にとって薬草は命綱のようなものだから、需要は尽きないだろう。


「即席のダンジョンマップもかなり売れた」とリゼッタ。


 予想通りだ。ダンジョンを攻略したい冒険者たちにとって、マップは命を救う宝だ。即席のものだが、俺の指示で作ったマップは完璧だった。リゼッタもやはり有能だな。


 俺たちは薬草を採取するために出かけた。ダンジョンマップがあれば、迷うこともない。どんなに入り組んだ迷宮でも、俺がいれば簡単に攻略できる。手に入れた薬草をリゼッタに預け、彼女がそれを売る。取引が順調に進むにつれて、リゼッタとの信頼もますます強固なものになっていく。


 次の取引も間近だ。冒険者にとって回復薬は常に必要だし、もし蘇生薬があればさらに利益を見込める。しかし、蘇生薬を作るには魔術の知識が必要だ。俺にはその知識がないし、文字も読めない。リゼッタに頼んで魔術の本を買ってきてもらうか…。


「リゼッタ、文字が読めるのか?」


「読めるわよ」とリゼッタ。


「じゃあ、教えてくれないか?報酬は出す」


「いいけど、あんた本当に読めないの?」


「まぁ、な」


 こうして、リゼッタに文字を教わることになった。彼女は有能で、さっそく魔術に関する本を手配してくれた。とはいえ、リゼッタ一人に負担をかけるわけにはいかない。ビジネスを本格化させるには、他の仲間も必要だ。増員が必要なのは間違いない。


 金が溜まってきた。これをどう使うかが問題だが、ただ溜め込んで守っているだけでは進展がない。増員するために投資するか、それとも別のビジネスを始めるか。考えるべきことは山積みだが、今はまず目の前のチャンスを確実にものにしなければならない。


「リゼッタ、この金を使って、有能なメンバーを集めてきてくれ。契約金というやつだ。受け取れ。それと、これはお前の分だ。俺と契約しよう。この契約は金であり、呪いだ。わかるか。金は命より重いんだ」


 リゼッタは俺の言葉をじっと聞いていたが、やがて微笑んでうなずいた。


「わかったわ。その話、乗るわよ。それで救える命があるなら」

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