4-5 【特撮回】三人揃って、キュアソルジャー!!!
「Ladies and gentlemen! Welcome to cure☆sol world!」
ノリノリなルリさんの声が聞こえる。気づけば客席の照明は暗転し、ステージをスポットライトが照らしていた。
「みんな、いくよ!」
イメージで見た、ミイラ男の衣装を身に纏ったアヤメさんの声が響く。両脇には、狼男の衣装のルリさんと、フランケンシュタインの怪物の衣装のソラさんが立っている。
「「応っ!!」」
ルリさんとソラさんがそれに応える。そしてキュアソルお決まりの、それぞれの名乗りが始まった。
「超超とっても正義のアイドル、愛と夢を守るミラクル勇者……アヤメミーラ!」
「超特急で制御不能、敷かれたレールもルール無用、正体不明のショータイム! ルリジンロー!」
「ヤバくも辛くも騒乱の、武士は食わねど高楊枝、アイドル食わねど高マイク……ソランケン!」
「あなたのハートをノックアウト!」
「天下御免の怪物アイドル!」
「三人揃って……」
「「「
三人の背後で爆発が起こる。異世界でアイドルをしていた時からこの挨拶をしているようだが、さながらヒーローショーのようだ。
「ってソラ?! 何でここに?!」
アヤメさんがステージ上で、隣を見てびっくりしている。
「えーっと……」
八雲ソラ。僕も会ったことはなかったが、アヤメさんと同じように異世界から召喚された、本来の勇者パーティーの一人だったはず。さっき結界から流れ込んできた情報によれば、彼女もアイドルのようだ。
「たまたま通りかかったというか、ルリパイセンに刀で呼び出されたというか……」
「え、ルリってこの世界でもう、ソラに会ってたの?」
「まぁ、ついさっき、ね……それより、今はあのヒノトリを!」
ルリさんが天井を指差す。すると天井に吊るされた巨大な鳥籠が、スポットライトで照らされる。中にはすでに、ヒノトリが捕獲されているようだった。
「もう後は、トドメを刺すだけのようですね。私たちのすべきことは、彼女たちを応援すること、みたいです」
レンさんが、子どもたちを見る。
「アヤ姉ちゃんがんばれー!」
「負けるなルリ姉ー!」
「ソラちゃんかっけー!」
客席の子どもたちが、サイリウムを精一杯振りながら思い思いに声援をあげる。確かに、その様子は見ているだけで元気をもらえるようだった。
「ん……?」
その応援を、勇者の力に変えるはずの結界。しかしできたてほやほやの結界は、その熱気に耐えられなかった。
「まずい……!」
レンさんも気づいたようだった。次の瞬間、ヒノトリを閉じ込めていた鳥籠がひび割れ、底が抜けた。
「嘘……?!」
巨大な底板が、客席目がけて落下する。
「みんな逃げて!」
アヤメさんが子どもたちに叫ぶ。しかしここは閉じられた結界の中。逃げ場もなければ、逃げようもない。
「サイカさん、鳥籠の破片をお願いします」
「……わかりました」
隣でレンさんが、腰の短剣を叩き魔法を唱える。
「ハンマージャンプ!」
「hammer jump!」
短剣から電子音声が鳴り、巨大なハンマーの形をした魔力が、レンさんごと地面を叩いた。
「ハンマーキック!」
反動で宙に飛び上がったレンさんの身体が、再びハンマーの形をした魔力で包まれる。
「hammer kick!」
鳥籠の底板は、レンさんの回し蹴りで誰もいない客席の隅へと蹴り飛ばされた。
「サイカワマスク・サインイン」
レンさんが元いた場所に着地したのを確認してから、僕は仮面の電源を入れた。
「サイカ・ワ系サンダー、サイカワサンダー!」
仮面の口から天井に向けて放射状に放たれた雷撃が、鳥籠の破片を消し炭にしながら、中にいたヒノトリをステージのほうへと追い立てていく。
「勇者様、今です!」
「がんばれキュアソルジャー!」
「やっちゃえー!!!」
再び会場が声援で満たされる。ステージ上でアヤメさんが、剣を構え直す。
「ありがとう……。そうよね。まだ、ライブはまだ終わってない!」
両隣でルリさんとソラさんも、剣を構える。結界から流れ込んできた情報によれば、ソラさんが持っているのは刀という武器らしい。そしてルリさんが持っているのは、アヤメさんの勇者の聖剣、コトノハセイバーにそっくりだった。ルリさんが魔王軍の勇者だから、対になるようなデザインなのだろうか。
「「マイティ!」」
僧侶である二人が、それぞれ身体強化の魔法を唱える。……武器はなぜか、二人とも剣だが。
「フェイク・デバッグ・縛断バインド!」
アヤメさんも、二人の後に続いて魔法を唱える。会場の四方八方から伸びて来た包帯が、空中でヒノトリを捕らえる。
「ルリ、ソラ、お願い!」
「オッケー、いくよソラ!」
「合わせますよ、ルリパイセン!」
会場の誰もが固唾を飲んで見守る中で、二人が同時に地面を蹴る。だが、ヒノトリは包帯でぐるぐる巻きにされており完全に拘束されている。もう大丈夫だろう。
「……」
一瞬の気の緩み。そこに僕は、つけ込まれたようだった。
「その仮面、やっぱり邪魔だね」
「っ?!」
会場の照明が落ちた。何の音も、聞こえてこない。
「誰だ……」
照明はすぐに復旧した。しかし、あれだけいた観客は誰一人見当たらず、客席にいるのは僕一人だけになっていた。
「見た目は同じだけど、さっきとは違う場所……。まさか、別の結界……?」
「大正解」
もちろんステージ上には、ヒノトリもアヤメさんたちもいない。ただ一人、胡座をかいた子どもが、僕を見下ろしていた。
「久しぶり、女神だよ。この世界の幸福を司る神様。君を、異世界転生させてあげた女神様」
「何……?」
「よしよし。ちゃんと忘れてるみたいだから、ちょっとだけ、お話ししよっか」
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