一度目の失恋
第58話
今はあくまで部活内の一年生の中で一番信頼できる存在程度のものだろうが、このままプライベートでも信頼される存在になっていつかは隣に立てる彼氏になりたい。
きっとそうなる日も遠くはない、だって彼女はもう既に僕のことを信頼しているんだから。
今すぐ告白するような勇気はない、でも部活の話でどんどんと褒めていけば彼女は僕のことをもっと頼ってくる。
そうしたら今度は彼女の趣味を調べてそこから趣味も同じだということをさりげなく伝えればいい。
そうすれば僕は趣味の面でも一緒にいられる友人に昇格だ。その後は彼女の好きな食べ物でも聞き出して男一人では行きにくいからと外に誘い出せばいい。
彼女は段階を踏めば僕のことを必ず好きになるし必ず僕の隣に並ぶことを幸せに思う。
時間なんて大学生には四年間あるんだからいくらかけたっていい、そんなに急いたところでいいことはないだろうしむしろよくよく待って好機を狙えば彼女は僕だけを信頼するようになる。そうすれば卒業した後にも僕のことを頼るようになる。
もしも事を焦って今まだ美月の方に心の準備ができていなくてフラれでもしてしまったら彼女とも距離は遠くなってしまう、それならゆっくり、彼女の周りに誰もいなくなる時を待てばいい。そうすれば彼女は僕にすがりついてくる。蓮は臆病だった。それを自分の考えでごまかしていた。
そしてそんな歪んだ愛を持っていた蓮に一度目の失恋が訪れた。
「三ヶ月ぶりに会えてうれしかった! 大学遠くて次会うのはまた何ヶ月も後になるかもしれないけど、その時を楽しみに大学生活頑張れそう。お互いに頑張ろうね」
そろいのブレスレットをして手を握った写真が表示された。片方の手はどう見ても男の手だった。
そういえばいつもあの子ブレスレットしてたな、今思えばあのブレスレットは美月の来ている服とは大分趣味の違うものだし彼女のアクセサリーといえば殆どがゴールドのものだったのにブレスレットはシルバーだった。姉から訊いたことによれば大抵の女子はアクセサリーを付けるときは色をそろえてくるものだろうが彼女はゴールドのピアスを付けていたときも変わらずシルバーのブレスレットを付けていた。
くそ、あの時に気付いておくべきだったか。
自分が信頼されていて彼女こそが自分の隣にふさわしいと思っていた。だが美月には蓮と出会ったとき既に彼氏がいた。
大学が離れていると言うことは高校からの仲ということだろう。
さすがに同じパートの仲間と言うだけでは男に彼氏がいるなんて話はしないだろう。
なら同じパートの女子はとっくにこの事実を知っていたのだろうか。
自分が教えてもらえるような関係になっていなかったのが悪いことは変わらない、それでも最初から、出会ったときから知っていたらこんな期待なんてしなかったのに。
美月にとっては難癖でしかないようなことを思った。そして思い直した。
でもこれでいい、彼女はその彼氏と付き合い始めたときまだ僕と出逢っていなかったんだから。
それなら仕方ない、僕の事をまだよく知らないんだから彼氏にしようなんてまだ思えなくて当然だ。
蓮は一度目の失恋をした。
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