5度目の失恋

第51話

それから1週間をかけて少しづつ少しずつ先輩の話を聞き出していった。


既婚者ではない、彼女もいない、親から結婚しないのかと何度も聞かれる。


それが最初の一日に聞けたことだった。

それからもなんだかんだと仕事の合間に先輩のプライベートの話は進んだようで、一度話した彼女は何も聞かずとも話してくるようになった。



彼女が欲しくないわけじゃない、いつかはと思って仕事に打ち込んでいるうちに周りから同期の女はみんな居なくなった。

女は皆優しくて頼れる男について行く、俺はそんなタイプじゃない。

自分はこんな性分だからどうせ一生独り身だろう、もうとっくに諦めたことだからそんなことはお前が気にするこった無い。


彼女から聞き出せたのはそれくらいだった。でもそれで十分だった。


僕がもう君と生きていくことを諦めたんだ、恋愛はどちらかが諦めた時点で終わるんだ。僕は諦めた、だからこの恋は、この愛は終わるんだ。


きっと彼女はいつか追いつける。

二人で幸せになれる時が来る。


それが今の不幸せを乗り越えた後であったとしても、きっとより大きい幸せが彼女に訪れる。


僕は帰れる場所を作ってきた。でもその帰れる場所はきっとその人にでも作ることが出来る。


彼女はきっと幸せになれる。


あの目を見ていれば分かる、彼女の割り切ったような明るさを、素直さを見ていれば分かる。

あの素直さに突進されて絆されないやつはきっとそうそういない、だって僕がずっとずっと追いかけてきて四度も失恋した彼女だから。


だから。五度目の失恋だって僕は受け入れる。この手を、離そう。

もう彼女を解放してやらなければいけない。


僕といてくれてありがとう、僕は一生分の幸せを使い切った。僕はまた違う道でいつかまた誰かを見つける。少なくとも今はそんなことは出来そうにないが、それでもいつか見つけるから。


ーーだから、世界で一番幸せな君になってくれ。

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