第48話

「蓮、今日も仕事やりきったし先輩が他の同期より上手くやれてるって言ってくれたの、夜中までやった甲斐ありすぎて泣きそう」



「蓮、先輩が今日はちょっとだけ、ほんのちょっとだけだよ、でもほんのちょっとだけ笑ってくれたの、あんな穏やかな顔できるんだあの人って思った!」



「今日も仕事頑張れたし残業してたら机の上にコーヒー置いてあったの、無理するなよってメッセージ書いてあったんだけどあれ多分だけど先輩の字だった、きっと先輩が置いてくれたんだ、鬼の目にも涙だ、なんか違うかも、でも鬼も人の子だったんだ」



「今日の仕事疲れたー、先輩にくっついて営業先周りしてたんだけど途中でちょっと立ちくらんでふらついた時先輩が無理すんなって言って一件だけ車に置いていってくれたの、

体調管理できてないの私の方なのに助けて貰っちゃった」



「今日同期とのコンペの締切だったんだけど結果どうだろう、ちょっとでもいい結果でたら先輩が後輩連れて焼肉行ってくれるんだって、肉に釣られる」



「蓮、今日もお仕事頑張れたよ、コンペ無事に通って焼肉決定したから明日ちょっと遅くなるね、焼肉ゲットしたぞ!」



「焼肉すごい美味しかった、疲れが吹っ飛んだしもうちょっと頑張れる気がする、仕事頑張りたい」




日に日に先輩の話は多くなっていった。


愛していればそれは一目瞭然だった。

ああ、もう、もう分かった。もう分かったよ。


君が追いかけたいのは、君がみていたいのはもう僕じゃないんだね。

仕方ない、だってそれが今の美月の幸せなんだから。僕だってそうやって成長になったし叶わなくても幸せになれたと思ったんだから。


だから、もう分かったから。


愛しているからこそ分かってしまった。

そして愛しているからこそこの手を離そうとした。


貴女が幸せになれるなら、それが僕の幸せなんだ。それ以上のことなんてもうないんだ。

だけど、それでも。出来ることなら"もう一度僕を愛して欲しい"


貴女に一度振り向かれて愛されて貪欲になった僕はそう願ってしまった。


前までならきっと諦められた、でも今はそれがこれ以上なく辛い。


僕が辛いことなんて、美月が辛いことに比べたらなんてことないんだ。僕はもう一生分の幸せをきっと使い果たした。それで良かったんだ、幸せだったんだから。

成長できたんだから。


いつかきっと、また出逢える人と、今度は自信を持って並べるようになるんだから。


本当は離れたくなんてない。本当ならずっと傍にいさせて欲しい。でも、それが君の本心じゃないのなら。


それを気付かせるのは僕の役目だ。

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