第43話
それから帰ってくる度に美月は先輩に褒められた話を嬉しそうにしてくるようになった。
「……でね、先輩が私が他の社員さんと揉めそうになってた時に先輩が入ってきてくれて助けてくれたの、あんなに怖かったのが嘘みたいでかっこよかったの」
「そっか、やっぱり美月期待されてて後輩として大事にされてたから最初のうちは厳しくされてたんだよ」
「そうかなあ、そう思っていいのかなあ、そうだったら嬉しくなっちゃうなあ」
「絶対そう。だって手助けなんかどうでもいい後輩にはしないでしょ、美月が大事だからしてくれたんだよきっと」
「うわあ怖かった先輩が頼れる味方になってくれたと思うとすごい心強い、敵だと思ってたから怖かったけど味方だと思うと最強の味方だ、レベルアップした気分」
「レベルアップしてるって、絶対。怒られる後輩から助けられる後輩になってるんだもん、そりゃレベルアップだよ」
「嬉しいしそう思うとご飯もより美味しい、蓮のご飯大好き」
「それはよかった、僕もそう言われると美味しくなった気がするもん」
「おいしいよ、すっごく美味しい。帰ってくる場所があるって幸せって感じ。食べ終わったらまた仕事するね、もうちょっとやったらまた褒めてもらえる気がする」
「あんまり無理はしないんだよ、いいね? あとご飯もかき込まない、胃に悪いよ。仕事したいのは分かったしまた飲み物出してあげるから落ち着きな」
「やった、蓮のホットミルク甘くて優しくて大好きなの。更に頑張れちゃうぞ、おー!」
「美月前よりもっと仕事楽しくなったみたいで何よりだよ、ずっと頑張ってきた分楽しいときが来たみたいな感じだね」
「そうそう、そんな感じなの、今が一番仕事充実してるし帰れる家もあるし最高って感じ」
「帰れる家を作ってきた甲斐があるわ、仕事も軌道に乗ったと思うと僕まで嬉しくなるね」
「仕事頑張りたいって思えるのすごく幸せ、先輩を認めさせるゲームみたいで日々自分が進化してるのを感じて嬉しいし成長も実際できてる気がする、怖かった鬼先輩だけど今は追いかけたいしいつかは超したいの」
その気持ちに少し見覚えはあった。でも見ないふりをした。きっと仕事上の憧れだろうと思うことにした。美月は帰ってくる場所があることを幸せに思ってくれている、それならきっと大丈夫、なはずだ。そう思って夜中まで仕事をする美月を見つめていた。
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