第40話
美月の誕生日、蓮は美月を連れてフレンチレストランに入った。
「待ってこんなに高そうなところに来ると思ってなかった、きれいめな服装って言ってたけど本当にこれで大丈夫……? これ入店拒否とかされないかな、蓮はスーツだからいいだろうけど私のこのワンピースは大丈夫なのかな」
「大丈夫だよそれ結構いい生地のだし僕が見てOK出したんだから入れるって。今日くらい人生で一番幸せでいてほしいの」
「その気持ちだけで幸せすぎるくらいなんだけどどうしよう……」
そう言いながらも入店はあっさりクリアして二人で席に着いた。席にある大量のカトラリーを見てまた美月が怖がりだした。
「まってこれって使うの内側からだっけ外側からだっけ、ねえ緊張しすぎて手が震えるよ」
「大丈夫、僕が先に手出すからそれ見て食器使ったらいい、さすがにホールの真ん中で箸使うのも嫌でしょ? 欲しかったら全然頼むけど美月さすがにそこまでしたら逆に落ち込みそうだし」
「私のことよく分かってらっしゃる……こんなお店来たの初めてだよ」
「美月の初めてをもらえるなら役得だね、大丈夫落ち着いて、今日は楽しんでもらうために来たんだから」
そう言っているうちに運ばれてきた食事を見て目を輝かせる美月を見て蓮は微笑んだ。
「これ人生で一番美味しいかも、すごい口の中でなくなっていく、これ一生食べてられる」
「ならよかった、美月に喜んでもらえるか実はちょっと心配してたから。……ほんとだ、これ美味しいね」
デザートになる頃にはもう美月は入ってきたときの緊張を忘れてその味にうっとりしていた。
「こんな誕生日プレゼントもらっちゃったら私何も返せるものないよ、最高のご飯だった」
「連れてきてよかったと思えるからお返しなんて美月と一日一緒にいられればそれだけでいい。……それより誕生日プレゼントまだあるんだけど。……もう要らない?」
「え、こんなに豪華なもの頂いてまだもらったら本格的に何も私から返せないよ、……でももらっていいならもらいたい……かも……」
「じゃあはい」
そう言って片付けられた机の上に置かれたのは小さな箱だった。
「開けていい?」
もちろん、と答えると美月はその箱を手に取ってゆっくり開けた。その箱の中にあったのは美月の好きそうな華奢で細かい装飾がされたネックレスだった。
「どうしよう、人生で一番幸せかもしれない、受け取っていいの?」
「美月がもらってくれないなら売るしかないからねそれ。人生で一番幸せな一日であって欲しいんだ、それに世界で一番幸せな人でいて欲しい。プレゼントなんてこっちの勝手な願望だから受け取ってくれると嬉しい」
「毎日付けててもいいの?」
「いいよ、それは僕も嬉しい。それにそのネックレス錆びないから物理的にも大丈夫。それとこれも」
そう言って取り出したのは同じブランドの指輪だった。こちらもネックレスと同じピンクゴールドに繊細な装飾がされている。美月の好きな華奢で女性らしいデザインだった。それを左手の薬指にゆっくりはめる。
「やっと僕のところに来てくれたんだ、誰といる時よりも幸せでいて欲しいと思ってる。誕生日おめでとう、生まれてきてくれてありがとう。これからももっと幸せになって欲しい」
美月は泣きながらありがとうと言い始めた。それだけでここまでした甲斐があったようなもので、もうお返しももらったような物だった。
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