第35話
それからも二人の生活は穏やかに、時に慌ただしく続いていった。
お互いに料理も一人暮らしでそこそこにできる位の能力は持っていたし、お互いにお互いの料理の味が大好きだった。
たまのの喧嘩があるとすれば二人とも相手の料理が食べたいと言ってだだをこね出す程度のもので、喧嘩という喧嘩もないまま生活していた。
二人とも蓮の言う「君の幸せが僕にとっての幸せだ」という言葉が大好きでよく使うようになっていた。
それを聞きたいが為に「今私最高に幸せ、蓮は幸せ?」というようなことも美月にはよくあったし、蓮が飽きもせずに「美月が幸せならそれが僕の幸せだよ」という度に美月はこれ以上ないくらいに幸せそうなとろけた顔をして家の中で小躍りしていた。
その様子を見て、その美月がかわいくて仕方なくて蓮も更に幸せを感じていた。
蓮の方は何もないときにそれを聞き出すような事はしなかったが、仕事で疲れているときだけは美月に今本当に幸せか聞くようになっていた。
そしてそれを聞かれた日には美月は決まって「今蓮がいてくれるからこれ以上なく幸せだよ、世界で一番幸せなんだよ、全部蓮のおかげなんだよ」といって蓮を甘やかすようになっていた。
滅多に美月に弱みを見せたがらない蓮の弱みを見たかった美月はここぞとばかりに蓮を甘やかして、それで頼ってくれる蓮にまた美月も幸せを感じていた。
もちろん浮気も束縛もしなかった。二人ともお互いのことだけを見て、お互いの趣味や好みを何よりも尊重して過ごしていた。
美月にとってこれまでで一番の幸せな恋愛になるようにと蓮はそれだけは必ず守るようにしていた。
仕事以外の時間は休日も平日の夜も二人でゆったりして過ごしていた。
元々好きなアーティストのライブでもなければインドア派だった二人は、休みの日は主に二人で映画を見たり好きな音楽を聴いたりして過ごしていた。
二人ともゲームや読書で別々のことをしているときもあったが、同じ空間にいられればそれだけで二人とも満足していた。
お互いの趣味が違っていてもそれに口を出すこともなければ自分の趣味を無理矢理押しつけるようなこともなく、二人ともただ自分の趣味を存分に楽しむことができた。
たまに片方が眠り出すとそれに釣られて二人で昼寝をするようなこともあったが、二人とも仕事に遅れるという緊張感がないと一度眠るとたたき起こされでもしない限り起きないタイプだったので午前中から眠りについて昼を抜いて夕方に起きて焦って夕食を取るような事も多かった。
そういう日は蓮は一日を無駄にしてしまったと言って嘆いていたが、美月は一日眠れて幸せだったと言ってくれたので蓮もなんとかこういう過ごし方もありなんだ、と思えるようになっていった。二人はお互いに補い合いながら、そしてたまにお互いにやらかしながらも二人だけの日々を楽しんで過ごしていた。
二人の生活はこれ以上ないくらいに順風満帆に過ぎていった。
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