待ちかねた日
第32話
しばらく美月は答えを出さなかった。そして蓮もそれでいいと思っていた。ただ彼女が全てを諦めて殻に閉じこもってしまわなければそれでいい。
その未来が幸せならそれでいい、だから返事が来なかったとしてもそれでいい。それでもきっと生真面目な彼女はいつか返事をしてくるだろう。
その答えが自分の望むものでなかったとしても、それでも受け入れる覚悟はできていた。
元々告げる気すらもなくしていた恋なんだから、それを彼女に伝えられただけで僕にとっては十分すぎるくらいだ。他の男と付き合っているのを指をくわえて待っていただけの自分じゃなくなった。彼女のおかげで、自分の人生が変わった。
自信も誇れるものも何もなかった自分が人より秀でる部分を持つことができた。そしてそれを認めてくれる人ができた。
自信なんてどこにもなくただだらだらとすごそうとしていた四年間がこんなにも充実したものになった。
彼女との出逢いが自分をここまで成長させてくれた。こんなにいい恋愛はきっと彼女以外の誰ともできなかっただろう。
恋をしたのが美月だったからここまで頑張って追いかけてこられた。自分の顔に寄ってくる女子と付き合っていたらきっとそれはそれでそれなりに幸せだったかもしれない、こんなに辛い気持ちをしなくて済んだかもしれない。でもきっとこんなに変わることはできなかった。きっと怠惰で人に頼り切りの自分のままだった。
ありがとう、美月。貴方がいてくれたおかげで、僕と出会ってくれたおかげで、僕はこんなに幸せな恋愛ができた。こんなに変わることができた。
幸せだった。だから君も、幸せになってほしい。それは僕とじゃなくてもいいんだ。
そう思っていた頃、美月からの返答が来た。
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