第29話
先輩は大学の近くに就職したようで遠距離恋愛になることなく二人の関係は続いていた。
ただ少し離れる時間が多くなったためか先輩からの愛はどんどんと大きくなっているようだった。
「蓮、久しぶりに彼氏のことで話聞いてほしいんだけどいい?」と連絡が来たのは四年生の前半だった。いつものようにいいよと答える。
「あのね、先輩の気持ちがどんどん大きくなってきてるみたいで、それはすごく嬉しいんだけど、自分の好みのもの一切着せてもらえなくなったの」
「あー部活の時もカジュアルな服増えてたけどそれが更に増えたって事?」
「そう、あと結構目立つ太めの指輪ももらって大学に行くときもこれ付けててほしいって言われたんだけど実はあんまり好みじゃなくて」
「美月結構華奢なものとか女の子らしいもの好きだもんね」
「そう、そうなの。段々服装チェックも厳しくなってきてスカートは長いのも駄目って言われちゃって着られなくて、本当に髪が長いこと以外男の人みたいな服しか着られなくなっちゃって」
「んーそこはちょっと迷いどころだよね、先輩との関係とか先輩の気持ちも優先したいところだけど自分の好きなものを制限されるとなるとちょっと息苦しいよね」
「あ、その息苦しいって言う表現ぴったり。なんか私じゃなくなっていくような気がするって言うか、元々の私のことが好きだったなら女の子らしい格好の方が私らしい感じはするんだけど」
「でも内面を好きになったなら服装は結構自分の好みになってほしいって言う人もいると思うよ、きっと先輩も内面見て好きになったんだろうし」
「あーそうか、でも私がちょっとしんどいんだよね、自分の趣味まで管理されてると思うとなんかそれは私が思ってたようなお付き合いじゃないって言うか……なんて言ったらいんだろう、伝わってる?」
「伝わる伝わる。自分の完全プライベートなところまで踏み込まれたらいくら大切にされてても僕もいい気しないと思う」
「なんか蓮はいつも私が言葉にできないことを言語化してくれるなあ。なんか何に自分がモヤモヤしてたのか分かった気がする、先輩に一度きちんとお話ししてみるね」
「そうだね、応援してるし上手く二人の間で折り合いがつくといいね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます