第28話

四年生になり、二人は後輩に惜しまれながら部活を引退した。


「先輩のことずっと尊敬して、追いかけてきて、ようやく自分の演奏に自信が持てるようになりました。先輩、安心して引退してください。これからは私達が先輩方が繋げてきてくれた伝統を守ってよりよくしていきます。これまでありがとうございました」


それは後輩からの何よりの言葉だった。


「後輩に超されて引退したいよね、そしたら育ててきた甲斐もあるし安心だし」と言っていた二人は笑顔でその言葉を受け取った。


後輩が泣いて自分たちの引退を見守ってくれていたのも嬉しかった。


ただ憧れて入った部活だった。すぐに挫折しそうになった。最初は美月一人に見てもらいたくて頑張り始めたことだった。それでも気づけば多くの部員が自分の事を慕ってくれ、自分の事を目標にしてくれた。ここで三年間を過ごせてよかったと心から思えた。


その日の帰り道、美月と一緒に花束を抱えていつもの道を歩いた。


「本当に私達いい後輩持ったよね、安心して就活頑張れる」


「本当にいい後輩達だったよね、辞めていく人も殆どいなかったし自分たちのこともこんなに慕ってくれたし。実際に超されてると思うときがあるくらいに上手くなってたし」


「私もあった、音色とかは結構後輩がいいときもあったもんね。私達もいい先輩だったって、思っていいのかな」


「どうだろうね、僕にもその自信はないや。……でもあれだけ悲しんでくれたし任せろって最高の言葉で送り出してくれたんだから、きっと僕たちもいい先輩でいられたんじゃないかな、多分だけど」


「そうだね、多分」


二人は少し泣きながら、そして穏やかな顔をしながらお互いに三年間ありがとう、これからもよろしくと言って別れた。

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