第27話

一番の友人の座を誰にも渡さないまま時間が過ぎた。


「ねえ最近美月服装替わったよね、趣味カジュアル系に変更したの?」とある日女子部員が聞いていた。


そしてその理由はもう既に蓮は聞いていた。


「彼氏の趣味がこういう系なんだよね、……そうそう、引退した青井先輩。スカートばっかりだと心配になっちゃうんだって」


「愛されてるなあ美月。美人だもんね、待ち合わせとかスカートでしてたらナンパされそうだし」


「それも心配だって言ってた、だからいつも私より先に待ち合わせの場所に来ててくれるの」


「一年しか年違わないけどなんか先輩大人だなあ、いいな私もそんだけ愛されてみたい、羨ましい」


「えーそっちだって彼氏いるじゃん、前二人で歩いてるとこ見たけどすっごい幸せオーラダダ漏れだったよ? 幸せな癖してまだ求めるのか、欲張りだなあ」


「えっちょっとなんで知ってるの?! 誰にも言ってないし見られてないと思ったのにばれてた?」


「ほーら彼氏いるんじゃん」


「あー美月に鎌かけられて華麗に引っかかった、シラ切ればよかったー失敗した」


「ほーらもうばれたんだから洗いざらい吐きなよ、どんな彼氏なんですかー?」


と美月が手をマイクの形にして向ける。


「最近付き合いだしたばっかりで……大事にしてくれる人で……記念日とかもお祝いしてくれて……ああもう終わり、解散解散」


「はい照れましたーいいもの見たので全員練習戻りましょうはい切り替えでーす練習でーす」


そんな日々が続いて蓮はこの恋を諦めようとし始めていた。だって美月は今こんなに大切にされているんだ、だってこんなに幸せそうなんだ、ならそれでいいしそれがいいんだ。ずっとしてきた片思いは実らなかったけどその分自分も成長できたし親友にだってなれた、いい恋だったんだ。ここで終わりにすればもう傷ついたりしなくて済むし楽しく社会人になってからも話せる友人になる。


そう思いながら蓮は四年生になった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る