四度目の失恋
第20話
そんな生真面目で臆病な連に四度目の失恋が訪れた。美月は恋愛であいた穴を恋愛で埋める人だった。
「ねえ蓮、聞いて聞いて、私やっと大事にしてくれそうな彼氏ができたの。今度はきっと、いや絶対浮気されたりしない、大事にしてもらえると思うの」
もういっそのことまた軽そうな男に引っかかってすぐに別れてしまえばいい、そんな淡い気持ちもそのメッセージで砕かれた。
美月が次の恋人に選んだ相手は蓮にとって衝撃的だった。
「でね、その付き合おうっていってくれたの三年生の青井先輩だったの! いつも演奏してる姿見て憧れてたからちょっと嬉しくてすぐによろしくお願いしますって言っちゃった」
その相手は同じ交響楽団の一年上のトランペッターだった。
僕のことは男としてみていないのに、そいつのことは男としてみているのか。
そう思うとただただ悔しかった。
そしてその相手が顔も性格もよくよく知っている相手だったことも蓮を傷つけた。
美月の恋人になった先輩は、いつでもリーダーシップを最大限に発揮して部員の士気を上げているような人だった。
確かにトランペットは楽団の中でも花形だし、その先輩は元々中高と部活でトランペットを経験していて自分が入部した頃にはもう既に先輩を抜いてソリストに選ばれている実力もある人だった。
そりゃ見惚れもするだろうし憧れもするだろう、と蓮は半ば諦め気味に思った。
性格は真面目で実直、一つしか年が変わらないとは言え先輩としてよく後輩のことを見ていてくれる余裕もある。自分たちのパートに来てまで教えてくれることもあった。
こんなの勝ち目なんてどこにもないじゃないか。悔しい、こんなにずっと見ていたのに自分の後ろにいるようなやつにいつもかっさらわれる。
ーーでも、それでも、あの先輩なら浮気なんて絶対にしないだろう。美月のことを見ないなんてことにはならないだろう。
きっと先輩は前の都合よく美月を引っかけて都合が悪くなったら簡単に捨てるような男ではない。
じゃあ仕方ない、美月が幸せになれるならそれが一番なんだから。それさえあれば、好きな人が愛されて幸せでいることだけあれば、それが僕の幸せでもあるはずなんだから。その未来で隣にいるのが僕じゃなくても彼女が幸せでいることが一番なはずなんだから。これが僕なりの愛し方なんだから仕方ない。
そう思うのももう四度目だった。
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