第19話
結局のところ美月の彼氏は浮気していた。蓮からしてみればやっぱりか、程度のものだったが美月はひどく傷ついていた。
夜に真っ先に電話をかけてくるのが他の女友達ではなく自分なんだと思うとそれはそれで嬉しかったが、その気持ちはしまっておくことにした。
「……でね、やっぱり浮気してたんだって。しかも私が浮気相手だったみたいなの。元々他の人と付き合ってたんだって。
『本命の子に一筋になりたいから別れてくれ』っていわれたの。私ばっかり好きだったのかなあ、私のことなんて本当は最初から遊びでどうでもよかったのかなあ、告白してくれた時に好きだっていってくれたのも本当は嘘だったのかなあ。
……私は大事にしてたつもりだったのにそれって一方通行の気持ちだったのかなあ」
涙声で話す彼女のことを本当なら隣で慰めて、できることなら抱きしめたかった。でもそんなことは想像の中でしかできなかった。
実現させる勇気などどこにもなかったし、そもそも帰り道は途中で別れていたので美月の家の正確な場所すら知らなかった。
「そんな彼氏なら、……ごめん美月が好きだった彼氏にそんな彼氏とか言って。でも浮気して美月のことを遊び相手にするような男なら別れて正解だったよ。
たとえ美月のことが本命だったとしても遊びで他に彼女を作るようなやつだったってことだから。それでそれを言わないまま付き合い続けるような人だったって事だから。
僕は美月のことが大切だからもっと幸せな恋愛してほしいんだ、
だからって彼氏のこと悪く言っていいって訳ではないだろうけど、それでももっと大事にしてくれる人が絶対にいるはずだから。だからもう今回は運が悪かったと思って吹っ切った方がいいんじゃないかな」
それは蓮の本気の言葉だった。
「うん……いつもいつもありがとう、ごめんねこんな話聞かせるのも申し訳ないんだけど」
「そんなことない、相談して少しでも楽になるならそれでいい。助けになれるならそれでいいんだ」
「ありがとう、蓮はやっぱりいつも助けてくれるね、頼りっぱなしだ私。蓮はそういうのないの?」
「残念ながら話せるようなことはないかな」
ーー残念ながら、恋をしている相手は貴方だからそれを話せる立場じゃないんだ。
もう三度も失恋したんだ、次こそは自分が隣に立てるようになりたい。そのためになんだってこれまで今までにないくらい頑張ってきたんだ。
それでも弱みにつけ込むことはしたくない。蓮は臆病さに加えて生真面目さも持っていた。
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