第17話

楽団での練習はお互いに高め合い順調に進んでいった。


でも美月の恋愛はそうではなかった。案の定美月に告白してきた男は軽い男だった。


「ねえ、最近彼氏が前よりも会ってくれなくなったの」「やっぱりこれっておかしいのかなあ、前はもっとデートしてたのに今は全然なの。バイトが忙しいっていつも言ってるんだけどどうなんだろう」「もしかして、浮気、とかしてるのかな」「男の子としてはどう思う?」


こんな時ばかり都合よく男としてみられるのは不本意だった。それでも蓮には美月を見捨てることはできなかった。


「それは心配になるよね確かに。しかも自分が浮気疑ってます、なんて言いにくいもんね」


「そう、そうなの。それで本当に浮気じゃなくてバイト頑張ってるだけだったら私最悪なこと言ってることになるし、そしたら嫌な思いさせちゃうなって思うとどうしても聞けなくて。それでも心配な気持ちばっかり積もっていくの」


「好きだったら心配になるのも分かるよ、僕も前恋愛しててそんな気持ちになったことあるし。相談してくれてるのがまずありがとうって感じ」


「え、相談聞いてもらってる方がありがとうだよ。分かってくれるのもありがたいな。聞きにくいことまで共感してくれると自分だけが悪いんじゃないって思えてそれだけでちょっと心が軽くなる気がする」


「それならよかったよ、話せることなら何でも話して」


じゃあ、といった美月は親身に話を聞いてくれる蓮に言葉を重ねた。


「実はね、彼氏が最近夜しか会ってくれないの」


その言葉に目眩がした。僕がこんなに彼女を大事にしてその幸せを願って諦めようとしているというのに、彼氏は美月のことを都合よく利用しようとしているのか。


そんな彼氏とはすぐに別れた方がいい、絶対に碌でもない男だ、とは口が裂けても言えなかった。


心配している美月に”男としての見解”を告げたいのはやまやまだったが、それを言ってしまうことでせっかく信頼してくれている美月との関係が少しでも揺らいでしまったらと思うと言えなかった。それほどに蓮は臆病が過ぎた。

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