第14話
蓮の二度目の失恋はそれから半年ほど経って終わった。
「ねえ蓮、最近彼氏と会う度に喧嘩になっちゃうんだよね、これ倦怠期ってやつかな、前の彼とはそういうのはなかったからすごく心配。私が真面目すぎるのか彼がちょっと緩すぎるのか私も分からないんだけど、それでも毎回喧嘩になっちゃってちょっとしんどいの」
相談されていた蓮はどうかそのまま別れてくれないかという心の奥底の醜い気持ちをひた隠しにして相談役に徹した。
「倦怠期なら結構多くのカップルにはあるって言うし、今は悪いところが見えてきちゃう時期なんだと思う。そのうちまた彼氏のいいところが見えてくるんじゃないかな」
と長続きさせてしまいそうな返答に舌打ちしながらそれでも相談には親身に乗り続けた。
僕は君のことが好きなんだ、会う度喧嘩するような彼氏よりも僕が大切にする、といって奪う勇気を蓮は持ち合わせていなかった。
ただでさえ臆病で美月との距離を少しずつ少しずつ詰めるような戦法でなんとか彼氏の座にたどり着きたいと思っていたのだから、奪うなんて選択肢は最初からなかったようなものだった。
毎日のように届く不安げなメッセージに返信して相談に乗り、あくまでも一番の男友達の場所に居続ける。一番最初に相談してもらえる男であり続ける。それに必死だった。
”そのうち”が来る前に美月は彼氏との別れを決意した。
それを直接聞いたとき内心ガッツポーズをしたいようなところだったが、自分でも驚くような残念でかわいそうだという表情をして
「残念だったね、喧嘩し続けるのも辛かったよね。ずっと悩んでたんだもんね。でも今回上手くいかなかったからって次も上手くいかないとは限らないよ、きっともっと大切にしてくれて喧嘩もしないまま過ごせるような人がいるよ」と言った。
美月は悲しそうな顔をしながら「そうだといいんだけどな、ちょっと自信なくなってきたかもしれない」と言った。
「そんなのもったいないよ、だって美月は僕みたいなやつにでさえ尊敬するって言ってくれたし誰のこともしっかり見て気づいたことがあれば褒めてくれるような優しい人なんだから。絶対まだいい人がいるはずだよ」
「蓮は蓮でちゃんと素敵な人だもん。……でもそうだね、ここで自信なくしたら一生自信ないままになっちゃうんだもんね、それは確かに嫌だしがんばるね、ありがとう」
その答えに自分のことを次こそは見てくれないか、と思った。
そしてそんな淡い期待はまたしても砕かれた。
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