第13話
そしてそれは四ヶ月が経つ頃には達成されていた。蓮は美月の一番の男友達になっていた。
パートを同じくする戦友として、そして趣味が合う上に何でも相談できて恋愛に関しては応援までしてくれる友人として、美月の中での蓮の株は上がっていた。
ただ親友になってみればそれはもう地獄のように辛いものだった。いっそのこと親友になんてならなければよかったと思うほどに辛かった。
それは美月の惚気話と恋愛相談が最初に飛んでくるようになっていたからだった。
「ねえ蓮、デートどこに誘うのがいいかな」そんなものはまだ軽い方だった。その相談になら無難な回答ができた。
ただ、「ねえ蓮さ、男の子ってどんなパジャマがかわいいと思う?」と聞かれた日にはお泊まり確定か、と一日中沈むことになった。
彼女が他の男とそんなこと、と思うといても立ってもいられなかった。でも美月はそんなことを蓮が思っているなどと思ってもいなかった。
女子が大半を占めていた交響楽団の中で、蓮は女友達に近い位置づけにされており、それでも”ギリギリ男子”としてみていた美月は蓮に何度もそんな質問をしてきていた。
「蓮、今日も彼氏の話聞いてほしい。ちょっとでいいんだけど時間ある?」
「時間あるよ、今日はどうしたの?」
「こんなこと本人じゃなくて人に聞くのもどうかと思うんだけど、誕生日のプレゼントって彼女から何もらったら嬉しいかな、手作りのものだと重い?」
「いや、好きな子からだったらむしろ嬉しい位なんじゃないかな、やっぱりそういうのって気持ちが嬉しいもんだし。あとはそうだな、彼氏さんの趣味にもよるけど財布とか定番だと思う」
「あー、それならいつでも持ち歩いてくれそうだもんね、それ嬉しいかも。財布出す度に私のこと思い出してくれる……これはちょっと重いか、でもそういうことだもんね」
メッセージの度に美月がどれだけ彼氏を大切に想っているか聞かされて心が折れそうになった。
もうこんなことになるならいっそひと思いに殺してくれ、と思いながらも蓮は毎回丁寧に返事をした。その度にありがとう、参考にさせてもらうね、やっぱり蓮がいると助かるなあと言われて複雑な気持ちになった。
ありがとう、か。それはこれ以上ないほど残酷な言葉だった。自分のことを男としてみていないと言外に告げられている。そう思うとむなしかった。
どうかできるだけ早く別れてくれ、いやでも美月が幸せならそれ以上のことはないはずで、と一度目の失恋の時と同じような気持ちが蓮を襲った。
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