第9話
「ねえ、蓮君ってどうやって練習してそんなに綺麗な音が鳴らせるようになったの?」
ある日のパート練習が終わった後そう話しかけてきたのは美月だった。自分でもその心当たりは殆どない。でも強いて言うとすれば、
「実は自主練習ない日にもこっそり来て練習してるんだよね。先輩に早く追いつきたくて」
ーーそして貴方の隣に自信を持っていられる自分になりたくて。
「え、そうなの? やっぱり早く上達していく人は努力してるんだなあ、私も見習わないといけないな。
簡単にコツ聞いて実践しようとしてたの間違ってたな、今思うとそんな浅はかな考えしてたの恥ずかしい。
だって誰よりも練習してたんだもんね、そしたら誰よりも早く上達していくのは当たり前だよね。
……そういえば先週は中間テストだったはずだけどその間も一人で練習してたの?」
「してた、どうしても来年までに先輩みたいな演奏できるようになりたくてそう思うと熱入っちゃって。
でもテストは無事に合格もらえたよ、ありがたいことに教授からもメールでよくできてたって褒めてもらえたし」
「え、そんなに忙しくしてたのにテストまでいい点取れてしかも教授からも認めてもらえたんだ、すごいねほんとに。
入部して割と初めの方から上手だったとは思うけど最近更に綺麗な音になってるし、その上で勉強も全然怠ってないんだもんね。
尊敬する、私ももっと上手くなりたい。今週から私も一緒に練習してもいい?」
「僕なんかでよかったら練習しよう、二人でやるとまたきっとお互いに課題とかも見えてくるだろうし僕も美月さんがいたらもっと成長できる気がするからありがたいし」
「そんな優しいこと言ってくれるの嬉しい、何時くらいに来たら一緒に練習できる?」
「えっとね、基本四限終わった後は練習来てるかな。休日は合奏の日だからその日とパート練習の水曜日は除くとしても大体はいると思う。
空いてる時間に来てくれたら十分だよ、きっと授業の組み方も違うだろうしお互いにいたら一緒に練習するくらいにしておこう」
「ありがとう助かる、私も蓮君みたいに上手になれるように頑張るね、今日はありがとう! 私もやる気出てきた」
一つ自分に自信がついた。尊敬してもらえる自分になった。
そう思うと夜中まで勉強して学校に来て授業が終わってから走って練習に来て一人きりで練習していた甲斐があったと思った。
それに彼女との新たな接点までできてしまった。やっぱり努力こそが結果を生むしそれだけが自分に自信を付けさせてくれるんだ。
その日は嬉しくてより遅くまで勉強してから眠った。
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