一度目の失恋

第6話

今はあくまで部活内の信頼できるメンバー程度のものだろうが、このままいい友達になっていつかは隣に立てる彼氏になりたい。


今すぐ告白するような勇気はない、でももっと仲がよくなったら練習の相談に付き合ってもらうという体で外に誘い出して、それもできたら次は彼女の好きそうなスイーツの店を調べて男一人だと行きにくいからとまた外に誘い出せばいい。


そうして何度も食事やお茶に誘えば他の男達よりも仲良くなれるはずだし告白してOKしてもらえる確率だって上がる。そうやってゆっくりゆっくりまずは友達になって、次は一番の男友達になって、そしていつかは彼氏に昇格できればそれでいい。


焦ったって自分に今告白するような勇気はないのだし、玉砕してしまえばその後部活で会うときにだって気まずくなってしまうかもしれない。


彼女のことだから部活の中ならいつも通りに接してくれるかもしれないが、今みたいに頼ってもらうことはできなくなるかもしれない。友達としての距離も遠ざかってしまうかもしれない。蓮は臆病だった。




そしてそんな淡い期待を抱いていた蓮に一度目の失恋が訪れた。




「三ヶ月ぶりに会えてうれしかった! 大学遠くて次会うのはまた何ヶ月も後になるかもしれないけど、その時を楽しみに大学生活頑張れそう。お互いに頑張ろうね」


そろいのブレスレットをして手を握った写真が表示された。片方の手は細くてなめらかな手だったが、もう片方はごつごつとした男の手だった。

そういえばいつもあの子ブレスレットしてたな、あれは彼氏にもらった物だったのか。


友達になって親友になっていつかは彼氏にと思っていた。でも美月には蓮と出会ったとき既に彼氏がいた。

大学が離れていると言うことは高校からの仲ということだろう。


その時まだ蓮と美月は彼氏がいる、いないなんて話ができるような関係ではなかった。


同じパートの女子はとっくにこの事実を知っていたのだろうか。


自分が教えてもらえるような関係になっていなかったのが悪いことは変わらない、それでも最初から、出会ったときから知っていたらこんな期待なんてしなかったのに。


美月にとっては難癖でしかないようなことを思った。そうしていないとやっていられなかった。その時もうそのくらい美月のことが好きだった。蓮は一度目の失恋をした。

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