第24話 アオとサト

 置いていかれた私は呆然と立ち尽くすことしかできなかった。


「筒井さん?」

「山越くん……」

「私も山越だよ!」

「……作都くん」

「はい、美麻さん」


 その笑顔。非常にやりづらい。


「僕たちは昼ごはんまだなんだけど、一緒に食べない?」

「う、うん」


 私達は有生ちゃんの希望で洋食屋に入ることになった。


「私オムライスで」

「僕はハンバーグ」

「私は……」

「遠慮せずにエビフライ定食頼んでいいよ」

「やった!!」


 と言いつつも、山越くんは私に財布を見せて笑った。

 中身があんまり入ってない。有生ちゃんにエビフライ定食を食べさせたら山越くんは今日、もう買い物できないだろう。


「私が有生ちゃんの分出そうか?」

「え、美麻さん。悪いよ……」

「ううん、大丈夫。余裕あるんだ。余ったお金で有生ちゃんに何か買ってあげて」

「……お願いします」


 山越くんはそう言うと、店員さんを呼んだ。




 美味しそうにエビフライを頬張る有生ちゃん。


「でね、とうふちゃんってすっごい仲間想いでかわいいよね!!」

「うん、私は8話が特に好きなんだけど有生ちゃんは?」

「私は……」


 ヤバい。めっちゃ話合う。同じとうふちゃん推しはいなかったから、こんな風に語り合った経験はなかった。


「さと聞いてる?」

「聞いてたよ。でも僕はだいこんちゃん推しだからね」


 頑なだな山越くん。有生ちゃんと一緒に猛プッシュして推し変させてやろうか。


「さとはだいこんちゃんのグッズ集めてるもん。おこづかいが多いから」

「兄の特権ってあるよね……。それにとうふちゃんのグッズも買ってるでしょ?」


 山越くんはたしかに妹想いだと思う。みそふぁみグッズにかなりお金を使っているはずだ。


 オムライスを食べ終わった私を見て、山越くんは水を注いでくれる。

 それを飲むと私は、会計に向かった。

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