第25話 4本のアクアリ
夏休みの部活練習。
私は水分を買いに自販機に向かっていた。
「筒井さーん!!」
私を呼ぶ声に振り返ると、両手いっぱいにペットボトルを持つ山越くんがいた。
「筒井さん、これ、もらってくれない?」
よく見るとそれは全部アクアリで、4本だった。
「なんでこんなにあるの?」
「僕今日部活のために一本持ってきたんだけど、部長がみんなをねぎらうために買ってきてくれたんだよね」
「うん」
「で、森浦にあげようと思って持っていったらさらに一本追加された」
「なんで?」
「間違って買ったんだって」
「じゃあもう一本は?」
「今さっきそこで拾った」
「それは戻してきたら?」
誰かが忘れたのかもしれないでしょ。
「筒井さんこれあげるよ。2本」
「え、いいの?」
「1本は小原さんに。前お世話になったし」
「そっか、分かった。受け取っておくよ」
「僕はこのアクアリの持ち主を探してくるね。じゃっ」
山越くんはそう言うと走り去っていき、もう姿が見えなくなっていた。
体育館に戻ってくると、萌華にアクアリを渡した。
「ありがとー、私の分も買ってきてくれたの?」
「いや、さっき山越くんがくれた」
「私の分まで?へー」
「前お世話になったお礼だって」
「そんな覚えないけどな……」
山越くんは結構義理堅いから、ちょっとしたことでもお礼をしてくれたのかもしれない。私はそう思った。
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