第27話 夏祭り(1)

 近所の神社でやっている夏祭りに、仲良し4人組でやってきた。


「何食べる?」

「かき氷みんなで買って写真撮らない?」

「いいね」


 私達は神社にたくさん出ている屋台をひと通り見て回り、それから何かを買うことにした。


「トッポギある!トッポギ!」

「フルーツ飴おいしそうじゃない?」

「金魚すくいないかな……」


 人混みをかき分け歩いていくと、前からおかめの面を被った、甚平姿の人が歩いてきた。

 え、売ってるの?おかめのお面。どこで売ってるんだろう。


 すれ違う時、そのおかめ面の人に見られた、気がした。


「……山越くん?」


 なんとなく、歩き方とか。そんな風に見える。


 しかし、そのおかめ面はそのまま去っていった。……気のせいだったのかな。

 夏休みも山越くんにたまに会ってるから、そんな気がしただけ。うん、きっとそうだ。


 私はそのまま、睦月たちについて行った。




 だけど。


「あれ……?睦月、巡流、萌華?」


 呼んでも返事はない。というか、こんなところで呼んでもこの熱気に押し戻されてしまう。

 どうやら私は、みんなとはぐれてしまったらしい。




 みんなに連絡するために私は屋台の並びから外れ、木の陰でスマホを取り出した。


「キミ、1人?」


 声をかけられ顔を上げると、大学生くらいの男の人たちが4人、私を囲んでいた。


「……あ、はい」

「じゃあ俺達と一緒に行動しない?」

「友達と今から合流するんで」

「その友達も一緒にどう?」


 これ、いわゆるナンパ的なやつ?まさか自分がされるなんて思ってもいなかった。

 嫌だって言いたいけど、言えない。怖い。逃げられない。どうしたらいい?


「えーと……」


 私が反応に困っていると、ザッ、ザッ、と足音がして、誰かが現れた。


「おい、何ぶつかってんだよ……」

「うわああ!?」

「般若だ!!」


 男たちが退いて、そこに現れたのは。

 般若面をした、さっきのおかめ面の人と同じ服を着た人だった。


 男たちが去っていく。それを見送ると、私は頭を下げた。


「ありがとうございます」

「大丈夫?筒井さん」


 その声は、山越くんのものだった。

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