第22話 3の呪い
テストが全部終わって、今日はテスト返しの日だ。
山越くんは浮かない顔をしているが、あまり自信がないのだろうか。
「ハッ!!」
山越くんは返ってきた現代文のテストを見て、声を上げた。
「51点……!」
嬉しそうに微笑む山越くん。平均は50点だから、ギリギリ上か。
「……あれ?」
「山越くん?」
「ここ、合ってるよね?」
山越くんが指さしたのは漢字の問題。たしかに、合ってるのに間違っていることになっている。
「先生に言ってきたら?」
「……けど」
山越くんは謎に渋る。点数が上がるのに、どうしたんだろう。
「うん。やっぱり僕、行ってくるね」
先生のところに向かった山越くん。そこで見えたのは、山越くんのこれまでのテストの点数だった。
数学、63点。化学も63点。古文は43点だった。
……なんで全部、一の位が3なんだろう。
待って、さっきの間違いを訂正したら、山越くんの現代文の点数は……!
「筒井さん、直してもらったよ」
「ごめん山越くん!」
「……筒井さん?」
「山越くんがこんなに3に呪われてるなんて私、知らなくて!」
「うん。僕は3に呪われてる。でもいいんだ、これが僕の運命だから……」
諦めた。前はあんなに悩んでたのに、諦めた!
「気を使ってくれてありがとう筒井さん。今度こそ3の呪いに打ち勝ってみせる。次は英語だからね!」
山越くんはニコニコしながら席についた。
「はあ……」
山越くんは英語のテストを見て、絶望の表情を見せた。
「33点だってさ……」
まさかの十の位まで3とは。山越くん逆にすごい。
「普通に3以前にこの点はキツイ」
純粋に落ち込む山越くん。まだ地理と家庭科、保健体育があるけど大丈夫だろうか。
「筒井さんは何点だったの?」
「……答えていいのかな?」
「差し支えなければ」
「72点……」
「12点分けてほしいよ」
再びため息をつく山越くん。
「僕の3の呪いが筒井さんに伝染っていないみたいでよかった。他は3入ってた?」
「古文は53点だった……」
「今すぐお祓い行こう、筒井さん」
「なんで!?」
それを言うならお祓いしてもらわなきゃいけないのは山越くんじゃない?
「僕のはもう無理なんだ。でも筒井さん、君はまだなんとかなる」
「え、ええ……」
「お祓いに行くお金がないなら僕がなんとかするから!」
そう言って決意を固めたように席に座った山越くん。
結局どのテストも3から逃れることはできなかったらしい。
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