第21話 ペン回し
テスト期間になり、朝から自席で勉強をしていた私。
だけど山越くんはなにか棒のようなものを回し、涙を流していた。
「……助けて」
「山越くん、どうしたの?」
「筒井さん……このままじゃ僕、留年してしまう」
「テストも始まってないのに気が早いよ」
その間も山越くんの涙と棒を回す手は止まらない。
「ペン回しをすると偏差値が下がるっていう話は知ってる?」
「聞いたことある。というか、ペン回しをやめると偏差値が上がるって話じゃなかったっけ」
「そう。でも僕、昨日からペン回しがやめられないんだ」
「どうして?」
「これを買ってしまったから」
山越くんが持っているのは妙な形状の棒。それがなにか関係があるらしい。
「これでペン回しが上手くできるんだ。安かったから買ったんだけど、使ったらハマっちゃって……これさえあれば、色んな技ができる」
山越くんは涙を流しながら笑う。ちょっと怖い。
「それ1回置いたら……?」
「僕の意思では無理だ。筒井さん、これ奪ってくれない?」
「……うん」
山越くんの手から棒を取り上げ、私も回してみた。
「楽しい」
くるっと回す。それが気持ちよくて、また回す。だんだんやめられなくなってくる。
「筒井さんがペン回しの呪いに……僕のせいだ……」
ああ、これだめだ。勉強したくなくなってきた。
そして心配する山越くんをよそに、私はペン回しを続けてしまった。
当然、今日の科目である地理と英語はあまり分からなかった。
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