第16話 ノート
「山越くん、これノート」
山越くんに古文のノートを渡し、それを受け取る山越くん。
「ありがとう。筒井さん字きれいだね」
「そう?普通だと思うけどな」
「きれいだよ」
山越くんは私が書いたノートの字をなぞり、言った。
「この跳ね方とかさ……筆圧のかけ方がいいよね。筒井さんの性格を感じる」
自分ではよくわからないところを褒められても、いまいちピンとこない。
「山越くんの字もきれいだと思うけどね?一つ一つ丁寧に書いてる」
「僕早く書くと読めないくらい汚いからね……」
「そうなんだ」
「数学とか結構適当。だからさ筒井さん」
山越くんは私に数学のノートを差し出して言った。
「ここより前は、絶対見ないでね?」
指さされたページを見て、私は頷いた。
「分かった。見ないでおくね」
「ではここー……筒井」
「はい、36通りです」
山越くんもメモを取っているものの、私が大方山越くんの分もノートを取っている。
あ、教科書めくらないと。私は本に指をかけた、そのとき。
バサッ、という音がして山越くんのノートが落ちた。
「あ、ごめん山越くん!」
「ううん、だいじょう、ぶ……」
そのときに見えたのが、山越くんのものらしき字。
つなぎ字、筆圧が薄い、そこに何て書いてあるのか、私には確認することができなかった。
「……筒井さん今の見た?」
「みっ、みてないよ」
「こんなに筒井さんの言葉に説得力を感じなかったのは初めてだ」
ノートを左手で拾った山越くんは、ごめん、と小さな声で呟いた。
「僕、不器用だからさ」
山越くんからノートを受け取り、私達は席に座った。
「山越、筒井。大丈夫か」
「はい」
「お気になさらず」
山越くんは涼しい顔で今、授業を聞いているけど。
「やっべ……」
ノートを落とした時そう言ったのが、聞こえていた。
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