第14話 忘れ物

「じゃあね、山越くん」

「うん、筒井さんまた明日」


私は山越くんに挨拶をすると、私は教室を出て、部活に向かった。




「じゃあ、プリント出して」


部活のために書いたプリント。それをファイルから取り出そうとしたのだが。


「……ない」


ないのだ。え、まって、どこでなくした?


「美麻?」

「どうしよう、ない」

「え!」

「どうしたっけ……」


記憶をたどる。昼休みに書いてたはずだ。そして……




「筒井さん何してるの?」


そうだ、山越くんに声をかけられて……。


「部活の振り返りシート?みたいなのを書いてたんだ」

「ああ、僕も前に書かされたよ」


そうやって、話をして。


「じゃあ授業始まるぞ」


あ、適当に机の中に突っ込んだ。



「やっちゃった……!」

「家?」

「違う、教室!」

「取りに行ってきなよ」

「……わかった」


私は体育館を出ようとした。そのときだった。


「……あ、山越くん」


軽く息を切らした山越くんが、1枚の紙を手にして立っていた。


「これ、忘れ物なんじゃない?」

「これ……!」


山越くんが持っていたプリントは、私が探していたものだった。


「ありがとう!」

「さっき教室を掃除していたときに、出てきたんだ。必要なんじゃない?」

「うん、本当にありがとうね、山越くん!助かったよ」

「ううん、大丈夫」


私が山越くんにお礼を告げて体育館に戻ろうとした、そのとき。


「山越ぃ!!」

「あ、やば」

「やっと見つけたぞ!廊下はお前の戦場じゃねえ!!全力疾走すんな!」

「ごめんなさい!あと全力じゃないです5割くらいです!!」


振り返ると体育の先生に怒られている山越くん。私はふと手に握られたプリントを見た。


……まさか、走って届けに来てくれたのかな。




次の日、睦月たちが言った。


「昨日山越くんが秋月に引っ張られていくの見たんだけど、美麻何か知らない?」

「うーん……」


心当たりはある。でも確証はない。


「知らない……」


私はそう答えたが、席に座る山越くんを見た。

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