第11話 山越くんと休日(3)
山越くんとともに話していた店に向かうと、すぐにみそふぁみの特設売り場があった。
「うわあ……!」
センターにとうふちゃん。最高すぎる。このコーナー作った人、分かってる。ぜひ握手を交わしたい。
「だいこんちゃんもいた」
全キャラ揃っている。スペースも広いし、申し分ない。山越くんは500円のだいこんちゃんのアクリルキーホルダーを手に取ると、かごに入れた。
前から思ってたんだけど、山越くんお金大丈夫かな。
「筒井さんは買うの?とうふちゃん」
「うん、コラボグッズだし。ぬいぐるみも買うつもり!」
「筒井さんお金大丈夫?」
山越くんには言われたくない。この間と今日見ただけでみそふぁみにいくら使ったの?
「僕もとうふちゃんのキーホルダー買うか……自分のだけ買ったらアオに怒られる……」
「妹さん、アオちゃんって言うの?」
「うん。山越
「私は弟がいる。双子で小6なんだ」
「大変だね」
「まあね」
あのうるさい2人を思い出して、私は少しイラッときてしまった。
私たちはそれから店内を回り、おもちゃ売り場にやってきた。
「あ、ラブキュア」
「妹が好きだったやつだ」
「そうなんだ」
「でも僕、思ったんだよね……」
山越くんがラブキュアの妖精の人形を持ち、言った。
「コイツって極悪非道なんじゃない?」
「急にどうしたの山越くん」
「筒井さんは正しかったんだ」
なんの話だろう。
「だって自分たちの勝手な理屈で、未来ある女の子たちを戦わせてるんだよ」
「……そうだね」
ラブキュアは結構、異星人である妖精が素質ある女の子たちに助けを求めるところから始まることが多い。
改めて考えたら、ひどい話だ。
「女の子たちは怖いよね、怪物たちと戦うの。僕は前、筒井さんに魔法少女になりたいか聞いた」
「そういえばそうだったね」
「僕は最低だよ。筒井さんにそんな話を持ちかけるなんて」
「気にしないほうがいいと思うけど……」
本当にそんなことで気にしないで欲しい。ありえない架空の話なんだから。
「ごめん、筒井さん。もう大丈夫だからね」
「何が?」
「もう筒井さんを戦わせたりなんかしないから」
「……うん、分かった?」
山越くんはそう言うとラブキュアの妖精のぬいぐるみを置いて、先に進んだ。
その後は飲み物やお菓子を買って、私達は店を出た。時間は3時になっていた。
「今日はありがとう、筒井さん」
山越くんは駅前でそう言うと、笑った。
「いやいや、こっちこそ、買い物に付き合ってくれてありがとう」
「筒井さんのおかげで色々買えたし、妹も喜ぶよ」
「うん、喜んでくれるといいね」
「それじゃまた学校でね、筒井さん」
「バイバイ、山越くん」
駅の改札へ入っていく山越くんを見送り、私は家に帰ろうと来た道を引き返した。
よく考えたら私、山越くんとの休日を普通に満喫してたなあ……。
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