第10話 山越くんと休日(2)

「マッキン行こうか」


私は山越くんについていき、ファストフード店マッキンに入った。


「筒井さんもしかしてお昼食べた?」

「ううん、食べてない」

「僕先に注文するね」


私も決まってるので、山越くんの後ろに並んだ。


「サラダチキンバーガーのセットください」

「飲み物はどうなさいますか?」

「ウーロン茶で」

「かしこまりました。では番号札を持ってお待ち下さい」


山越くんなかなかマイナーなところ行くなぁ……。サラダチキンバーガー食べる人初めて見た。


「ご注文お決まりですか?」

「チーズバーガーセットでオレンジジュースください」


私が番号札を持つと、山越くんが手を挙げて私を呼んでいた。


四人掛けの席で山越くんの向かい側に座った。

山越くんは横にとうふちゃんを置く。


「とうふちゃんが筒井さんの最推しなんだよね」

「うん、かわいいから。山越くんは?みそふぁみに推しできた?」

「推し……?うーん、僕は……」


山越くんは少し考えてから、言った。


「僕が一番好きなのはだいこんちゃんかな」

「へえ!」


コアなところいくね山越くん。初期メンバーじゃないうえにグッズもまだまだ少ないよ。


「ツッコミが面白いから好き好き」

「だいこんちゃんってガチャだと第三弾だからな……残ってるかな」

「いや、僕はガチャじゃなくて確実に手に入れたいんだ」

「まさか山越くん……」


山越くんがスマホを操作して出したのは一つの広告。

駅前にもある、何でも揃うあの店にみそふぁみグッズの特設売り場が設けられたのだ。


「うん、今から行こうと思ってたんだけど来る?」

「……行く!」


今日の目的はそれもあったのだ。山越くんと一緒に行くことになったのは想定外だけど、まあいいでしょう。




サラダチキンバーガーを食べている山越くんが、言った。


「これ、今月末でなくなっちゃうんだよね。おいしいのに……」


そう言いながらバーガーにかぶりつく山越くん。こういうところは男子だな、と思う。


「筒井さんはいつもチーズバーガー頼んでるの?」

「そうだよ。一番おいしいからね」

「僕、実は食べたことないんだ」

「そうなの?」

「毎回期間限定を頼むから」


山越くんらしい理由だった。同じものを頼むイメージはたしかにない。


「今度食べてみようかな」


そう言って笑った山越くんは、バーガーの最後の一口を食べた。

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