第7話 森浦と山越
次の日の朝。
「みそふぁみの新情報が出たんだって。映画のキャストは……」
「え、そいつ芸人じゃね?」
「でもこの間ラブキュアに出てたよ」
「なんでそんなこと知ってんの?」
私が友達と話していると、森浦くんが教室に来た。
「サト!」
「あ、森浦くんだ」
森浦くんが教室に入ってくるだけでざわつき始める人たち。山越くんがため息をついて、彼の方を見た。
何か話しているようだけど、山越くんはずっと首を横に振っている。
「頼むよサト!現代文、貸してくれ!」
私が席の方に戻ると、山越くんの声が聞こえた。
「英語の教科書先に返して」
「だから忘れたんだって」
「僕はまた筒井さんに迷惑をかけなきゃいけないの?」
「筒井さんに借りてたんだ。ありがとう、筒井さん」
森浦くんにお礼を言われるけれど、感謝するべきは山越くんに対してではないだろうか。
「よし、決めた。森浦には絶対化学の教科書は貸さない」
化学以外ならいいんだ。私ならもう貸さないけどな……。
「隣の人に見せてもらったらいいのに」
「いや……ほら、俺が特定の人と席をくっつけると
「モテる男も大変だねえ」
「羨ましい?」
「ぜんっぜん」
山越くんはカバンから現代文の教科書を取り出し、森浦くんに渡した。
「現代文は5時間目だからそれまでに返してくれたらいい」
「分かった!」
「英語は明日返してね」
「分かった!」
「もし返してくれなかったら森浦の家まで乗り込みます」
「分かった!ありがとう!」
うんうん頷く森浦くん。現代文の教科書を持った彼は、早足で去っていった。
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