第5話 そして再び
今日、しばらく休んでいた鳩山くんが来た。つまり、誰も休まなければ席替えだ。
そして全員揃った朝のホームルーム、担任が言った。
「今日は席替えを行う。各自これを引くように」
教卓の上に置かれた箱。クラスメートたちが続々と中身を取る中、一番後ろの席である私と山越くんは出遅れてしまった。
「筒井さん、先に引いていいよ」
「ありがとう」
私が箱の中に手を入れると、残りの紙は2枚しかなかった。
そのうちの一つを引いて、私は箱から手を出した。
「残り物には福がある……」
そう言いながら山越くんは箱に手を伸ばした。
その間に私は紙に書かれた番号を見た。
「12番……?」
今の山越くんの席だ。つまり、私は一つしか席を移動しない。ラッキーだ。
「あ」
山越くんが驚いたような声を上げる。1番前になっちゃったのかな。
「筒井さんの席だ」
「え」
「つまり……また隣?」
「そうだね」
私と山越くんは荷物を持って、席を替わった。
今日から一学期が終わるまで約1ヶ月。つまり、夏休みに入るまで山越くんと隣の席ということになる。
「またよろしくね、筒井さん」
そういえば前の席替えのときは挨拶をしていなかった。その時は話したこともなかったし、なんとなくスルーしていた。
でも今は違う。山越くんは今やよく話すクラスメートだ。
「うん、よろしく山越くん」
私はまた、この不思議な山越くんを観察し続けるのかもしれない。
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