第4話 みそふぁみと山越くん
「筒井さん、それ外れかけてるよ」
休み時間、山越くんが言った。私のカバンからは、たしかにつけているキーホルダーが外れかけていた。
チェーンが錆びてだめになっていたのだ。
「ありがとう、山越くん」
「前から気になってたんだけど、それ何のキャラなの?」
「みそふぁみっていうキャラクターの一員だよ。この子はとうふちゃん、私の最推し!」
「うん、かわいいね」
山越くんはそう言うと、私の方に席を近づけて言った。
「そのキーホルダーはどこで手に入るの?」
おお、興味深々かな山越くん。これはもしかして、布教のチャンスでは?
「駅前のゲームセンターの前にあるガチャで、みそふぁみシリーズの子は手に入るよ。とうふちゃんはシリーズ第一弾の子だから無理だけど、四弾の子もかわいいから!」
「へえ、分かった。ありがとう」
「山越くんもみそふぁみに興味があるの?」
「うーん、どっちかというと妹かな。妹がこのキャラ前に見てかわいいって言ってたんだ」
妹思いな山越くん。そうか、妹さんがみそふぁみに興味を……気が合いそうだなあ。
「とりあえず駅前のゲームセンターに行ってみるよ」
山越くんは財布を取り出して中身を確認している。まあ、1回300円だし大丈夫でしょ。
部活終わり、私は萌華と一緒に帰っていた。
「ゲーセン寄る?それともマッキンでハンバーガーでも食べる?」
「マッキンかな」
ゲーセンは山越くんと出くわす可能性がある。分かってて行くのは避けたい。
「あ、でも私まだみそふぁみのガチャ回してない」
「え!?」
「私オクラ王子推しなんだよね」
そうだ、萌華の推しオクラ王子が四弾で満を持して出てきたんだった。これは止めるわけにはいかない。
山越くんがいないことを祈るのみだ。
……いるし。座り込んでがっつりガチャ回してるし。
「あれ山越くんじゃない?」
「知ってる」
「声かけないの?」
「いや山越くんも困るでしょ……」
まさか回してるとは。しかもまた300円入れたね山越くん。当てたいキャラでもいるのかな?
「山越くん、みそふぁみのガチャ回してない?好きなんだ。知ってた?」
「ううん、私が今日教えた」
「へー。声かけてくる」
なんでそうなるの萌華。気まずさとかないの!?
「山越くん!」
「小原さん」
「私そのキャラ好きなんだ!」
「ごめん、すぐ
山越くんが立ち上がってガチャガチャの前から離れる。
そのとき、山越くんと目が合った。
「筒井さん、見て。これだけ回したんだけど、全員当てられなくて……」
山越くんのカバンから出てきたのは六個のカプセル。1回300円のガチャを6回も回したのか山越くんは。
今日知ったキャラに1800円も使ったのか。妹さんが本当に好きかどうかも分からないのに。
「オクラ王子出なかったんだけど!アイドルなめこだったんだけど!」
「オクラ王子って……これ?」
山越くんのカプセルの一つにオクラ王子が入っていた。
「僕アイドルなめこだけ出なかったんだ。交換する?オクラ王子被ったし」
「え、羨ましい……いいの?」
「うん」
そうして、山越くんは全種キャラを、萌華は推しをゲットして帰ったのだった。
山越くんは次の日学校に来ると言った。
「みそふぁみのアニメはどこで見られるの?」
「え?今は配信限定だけど……」
「はいしん」
そんな初めて聞いた単語みたいに。
「ネトクリとかТberとか……」
「ああ……」
「9月には劇場版も見られるよ?」
「げきじょうばん」
驚いてるな山越くん。みそふぁみはたしかに知名度はまだまだかもしれないけど、今まさにキテる作品なんだよ。
「妹が思った以上にハマって……色々調べてるんだけど頭がパンクしそうだ」
「子供向けに見えて奥が深いからね、みそふぁみは」
「今はSNSに上がってるショートマンガで満足してるけど、絵本も欲しいって言い出してさ」
私は絵本は読んだことがない。妹さんがいくつなのかは知らないけど、そこから入るのもありかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます