第3話不穏な影

翌朝、私は早く目が覚めた。カイル殿下とリュカのおかげで、少しずつこの世界での生活に慣れてきたが、まだ完全に安心はできない。


「おはようございます、エリザ様。今日はカイル殿下との特訓がございます」


リュカが部屋にやってきて、今日の予定を教えてくれた。


「特訓……って、何をするの?」


「魔法です。エリザ様には、特別な力が眠っていると言われています。それを覚醒させるための訓練です」


「魔法……か。そんなこと、私にできるのかな……」


「できます。私は信じています」


リュカの確信に満ちた声に、私は少しだけ自信を持つことができた。



★★☆☆★★


訓練場に到着すると、カイル殿下が待っていた。


「おはよう、エリザ。今日から少しずつ魔法の基礎を教えよう」


「はい、よろしくお願いします」


彼は私に優しく笑いかけ、訓練が始まった。まずは魔力の感じ方を学び、次にその力を使う感覚をつかむための練習をした。


「うーん……なかなかうまくいかないな……」


「焦らなくても大丈夫だよ、エリザ。魔法は感覚が大切だから、少しずつ慣れていけばいい」


カイル殿下は根気よく指導してくれる。彼の落ち着いた教え方に、私は次第に力を感じることができるようになった。


「よし、いい感じだ。あとはその力を形にしてみよう」


「うん……やってみる!」


集中して手をかざすと、ふわりと風が舞い上がった。これが、私の力?


「やった……!本当にできた!」


「素晴らしい、エリザ。これで一歩前進だね」


私はカイル殿下の称賛に笑みを返す。こんな風に少しずつでも進んでいけるなら、この世界でやっていける気がしてきた。



★★☆☆★★


しかし、その夜。宮殿の周りに不穏な影が忍び寄っていた。


「何かが動き始めている……」


遠くからリュカが低い声でつぶやいたのを、私は聞き逃さなかった。これから、私たちを取り巻く運命が大きく動き出す予感がした。



★★☆☆★★

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