第2話新しい生活の始まり

「これから、エリザ様の新しい生活が始まります。何か困ったことがあれば、私にすぐお知らせください」


リュカは私を王宮の中に案内しながら、丁寧に説明してくれた。広大な廊下を歩き、装飾された天井や柱を見上げると、まるでおとぎ話の中にいるような気分になる。


「本当に……私は異世界にいるんだ……」


目の前に広がる景色は、私が知っているものとは全く違う。重厚な石造りの城壁や、きらびやかな装飾品。全てが豪華で、圧倒されるばかりだ。


「エリザ様、これがあなたのお部屋です。カイル殿下が特別に用意されたものですので、何不自由なく過ごせるかと思います」


ドアが開かれると、広々とした部屋が目の前に広がった。大きな窓から光が差し込み、外の庭が見渡せる。絨毯の上に置かれた高級感溢れる家具たちが、異世界の特別な雰囲気を醸し出していた。


「す、すごい……これ、私の部屋なの?」


「はい。お気に召していただけると幸いです」


「いや、もう……十分すぎるくらいだよ!こんなに広い部屋、夢にも見たことないよ」


私が驚いていると、リュカは微笑みながら続けた。


「ここでの生活に慣れるのに時間がかかるかもしれませんが、すぐに馴染むでしょう。私もできる限りお手伝いしますので、ご安心ください」


「ありがとう、リュカ。あなたには本当に助けられてばかりだね」


「それが私の役目ですから」



---


部屋に落ち着いてからしばらく経ち、夕方になると、リュカが再びやってきた。


「エリザ様、カイル殿下がお食事に招待されています。ご一緒にいかがですか?」


「えっ、王子様が?でも、私なんかが……」


「いいえ、カイル殿下はあなたに会いたがっています。気を張らず、どうぞリラックスしてお越しください」


緊張しながらも、私はリュカに導かれるまま、食事会へと向かった。



★★☆☆★★


「エリザ様、来てくださって光栄です」


豪華な食卓の中央に座っていたカイル殿下は、優雅に微笑みながら私を迎え入れてくれた。彼の姿はまるで絵画から飛び出してきたかのように美しく、見とれてしまうほどだった。


「こちらこそ、招待していただいてありがとうございます……カイル殿下」


「どうぞ、カイルで構いません。私たちはこれから同じ目的のために力を合わせる仲間ですから」


「仲間……ですか?」


私は戸惑いながらも、彼の真剣な瞳に引き込まれた。


「そうです、エリザ様。あなたはこの世界にとって特別な存在です。私たちは、あなたの力を借りなければならない。そして、私自身もあなたに多くのことを学びたいと思っています」


「私なんかが……カイル殿下に教えることなんてあるの?」


「もちろんあります。異世界から来たあなたには、この世界では知られていない知識や視点があります。それを共有していただけるだけでも、大きな助けになります」


カイル殿下の言葉には真摯さがあり、私の不安な気持ちが少し和らいだ。



★★☆☆★★


食事を終えた後、私は王宮の庭を一緒に散歩することになった。夜風が心地よく、月明かりが二人を包み込む。


「エリザ、あなたには選択の自由があります。この世界に残るかどうかは、最終的にはあなた自身が決めることです」


「でも……私はどうすればいいのかわからない。突然、婚約を破棄されて、気づいたら異世界にいて……全部が急すぎて、頭が追いついてないの」


「無理もありません。しかし、あなたがこの世界に来たことには必ず意味があるはずです。焦らず、ゆっくりと考えてください」


カイル殿下の優しい声に、私は少しずつ心を開いていった。異世界での生活は未知数だが、この場所で新しいスタートを切ることができるのかもしれない――そんな希望が心に灯った瞬間だった。



★★☆☆★★

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