第7話 いっこの過去
よしくんは、いつも通りにお店のドアを開けます。
カラン、 カラーン。
「いらっしゃいませ。 よしくん」
いっこが、いつも通りの笑顔で、よしくんを迎えました。
「今日は、帆立バター作ったよ」
いっこの作る料理は、家庭的でよしくんは、しあわせを感じました。
そして、いっこの事が、どんどん好きになっていきます。
でも、好きになればなる程、いっこの事が知りたくなります。
よしくんは、この前聞いて途中になっていたいっこへの質問をします。
「いっこは、このお店いつから始めたの?」
にこにこしていた、いっこの顔が少し曇りました。
「いっこ、40年くらい前に、男の人と出会ってね。 そのとき、その人とこのお店を持ったの」
よしくんは、それを聞いてショックを受けました。
いっこは、独身と聞いていたので。
「いっこ、結婚してたの?」
いっこは、すぐに否定しました。
「ううんっ、違うの、籍は入れなかったの…」
よしくんは、聞きます。
「どのくらい一緒に暮らしたの?」
いっこは、悲しそうに言いました。
「去年まで…」
よしくんは、黙っていっこを見つめます。
いっこは、ゆっくりと話し始めました。
「その人は、去年亡くなったの。 その人は、よしくんも知っている、新開地のショットバーのマスターと友達だったの」
よしくんは、寂しそうに言います。
「いっこが好きになった人だから、きっと良い人だったんだろうね…」
いっこは、よしくんに言います。
「いっこは、よしくんが一番だよ。 よしくんだけ…」
よしくんが、言います。
「今夜は、もう、帰るね」
いっこは、言います。
「よしくん、怒ったの?」
よしくんは、静かに答えます。
「ちょっと、びっくりしただけだよ」
いっこは、黙ってよしくんを見つめます。
「…」
よしくんは、寂しそうに店を出ました。
その夜は、重い足取りで緑が丘駅まで歩きました。
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