第4話 主演女優
今夜も、よしくんの他にお客さんはいません。
でも、カウンターの中には、ごきげんないっこがいます。
いっこのお店は流行っていないから、お客さん来ないのだろうか?
でも、お客さんは、よしくんだけでいい、二人きりになれるし…
そんなことを考えていると、いっこが言いました。
「よしくん、お腹減ってない? ペペロンチーノ作ろうか? 食べるでしょ?」
よしくんは、パスタも好きでした。
「うん、 食べる。 腹ペコなんだ」
いっこは、にこにこしながら厨房へ入って行きました。
しばらくして、よしくんの前に出されたペペロンチーノの美味しかったのには驚きました。
「いっこって、 料理上手なんだね。 すごく美味しいよ」
いっこは、よしくんをじっと見つめて、
「ありがとう、 よしくん」
と、言いました。
「いっことは、 デートしたこと無かったし、 二人で食事することもなかったね」
よしくんは、47年前の映画の撮影のことを思い出しました。そして、
「ほら、 喫茶店でいっこがピザを食べるシーンあったね? あれだけだよ、 いっこにご馳走したのは…」
「飲み物は、 何も無くて水だけだったわ」
と、いっこ。
「ごめん、 映画フィルム代、 現像代で金欠だったからね」
よしくんが、申し訳無さそうに言うと、
「じゃぁ、 あれがいっこの出演料なのね」
いっこが、寂しそうに言いました。
「主演女優の出演料が、 小さなピザ一枚だった…」
さらに、いっこは、
「でも、 楽しかったよ、 監督さんのよしくんは、 一生懸命だったけどね」
二人は、笑いました。
よしくんは、学生時代のいっこが、このカラオケスナックのママと同一人物であることを嬉しく思いました。
そして、よしくんは、懐かしさと、今、こうして再会していることに感謝したいと思ったのでした。
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